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南洋理工大学と第2回合同ワークショップを開催

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2016年11月17日と18日の2日間、東工大大岡山キャンパスで「第2回NTU-東工大合同ワークショップ」が開催されました。同年2月29日と3月1日にシンガポールの南洋理工大学(NTU:Nanyang Technological University)で開催された第1回ワークショップでは、環境工学、分子化学、界面科学の3分野の研究内容について理解を深め、連携可能なプロジェクトについて検討を行いましたが、今回のワークショップでは大幅に規模を拡大しました。両大学のロボティクス、水素エネルギー、分離化学、分子化学、水資源、医工学の6分野の研究者が集い、研究者間のネットワークを拡げるとともに、具体的な研究連携について意見を交わしました。

集合写真

ラム・キンヨン副学長を団長として、21名のNTUの研究者が今回のワークショップに出席しました。本学からは29名の研究者が参加し、さらに日本のロボット産業界からも研究者が参加しました。

オープニングセッション

ワークショップは、本学三島良直学長の開会の挨拶で始まりました。三島学長は、東工大とNTUの連携の実績を紹介し、成功裏に終了した第1回合同ワークショップに続き、2016年9月の両大学の研究交流の促進を目的とした覚書の締結について話しました。そして、今回の第2回合同ワークショップの開催による今後の国際共同研究の加速への期待を述べました。

続いて、NTUのラム副学長が、研究成果を向上させ、技術革新を進めるためのNTUの取り組みを紹介しました。NTUでは、医学部や環境科学などの新設の研究分野を増やすとともに、優秀な研究者や学生を世界中から集めていると述べ、さらに、産学官連携を通じた研究・技術革新推進戦略に基づいて、海外の研究機関及び企業との連携を強化している状況について実例とともに紹介しました。

  • 三島学長

    三島学長

  • ラム副学長

    ラム副学長

後半には、両大学のエネルギー分野の研究者による講演が行われ、まず、本学菅野了次教授(物質理工学院)が、「Developments of Energy Storage and Conversion Devices(エネルギー貯蔵・変換デバイスの開発)」をテーマとして、エネルギーの貯蔵および変換において重要な役割を果たす電気化学材料やデバイス構造、特に全固体型蓄電池に関する開発状況について発表を行いました。

続いて、NTUのチャン・シュウ・ホワ教授が、自身が副所長を務めるNTUのエネルギー研究所の設立の経緯や目的などの概要とともに同研究所が行っているエネルギー効率および再生エネルギーの研究を紹介しました。また、同研究所と国内外企業が連携して行っている「エコキャンパス」プロジェクトと経済開発庁(EDB)などのシンガポール省庁のサポートを受けて同研究所主導で取り組んでいる「再生エネルギーの研究プロジェクト(REIDS)」について説明しました。

  • 菅野教授

    菅野教授

  • チャン教授

    チャン教授

プレナリーセッション

休憩をはさんで行われたプレナリーセッションでは、分子化学分野の研究者による発表が行われました。最初に、本学岩澤伸治教授(理学院)が、「Utilization of CO2 as a Renewable Carbon Resource(二酸化炭素の再資源化)」をテーマとした講演を行い、二酸化炭素を炭素資源として利用する金属触媒反応の開発研究について、その研究背景から最先端の研究成果まで紹介しました。

続いて、NTUの千葉俊介教授が、「 Reductive Molecular Transformation by Sodium Hydride(水素化ナトリウムによる還元的分子変換)」と題し、これまで塩基としてのみ用いられていた水素化ナトリウムをヒドリド還元剤として用いる実用的な分子変換手法の開発について発表しました。

  • 千葉教授

    千葉教授

  • 岩澤教授

    岩澤教授

分科会

同日午後は、4つの会場に分かれ、ロボティクス、水素エネルギー、分離化学、分子化学、水資源、医工学の6つの分科会が開催されました。各会場には、両大学のみならず他大学の学生や研究者、企業関係者等が多数参加し、両大学の研究者による各分野の最新の研究成果の発表を熱心に聞いていました。また、各発表の後には、質疑応答や意見交換が活発に行われました。

分科会

分科会プログラム

今後の連携について

分科会と並行して両大学の経営陣による話し合いが行われ、大学間の交流をさらに深めるため、2017年9月に、第3回合同ワークショップをNTUで開催することが決定されました。また、いくつかの研究分野で緊密な連携が進んでいることから、東工大とNTUの間で「研究協力協定」を締結する提案があり、各々で協定の内容の検討を進めることになりました。

(左から)大竹副学長、三島学長、水本副学長、ラム副学長

(左から)大竹副学長、三島学長、水本副学長、ラム副学長

2日目の午前中には、基調講演、分科会報告会、閉会式が行われました。

基調講演

基調講演は、ロボティクス分野の研究者3人により行われました。まず、本学岩附信行教授(工学院)が、「 Design and Control of Robots with Underactuated Mechanisms(劣駆動機構をもつロボットの設計と制御)」と題して、機構の自由度に比べてアクチュエータが少ない劣駆動機構に、弾性要素や重量による拘束を加えることによって運動制御を可能にするロボットの設計と制御に関する発表を行いました。

続いて、株式会社デンソーのテクニカル・エキスパートである小島史夫氏が、「Robotics Activities in Automation Systems at DENSO(デンソーのオートメーションシステムにおけるロボットの活用)」というテーマのもと、同社で取り組んでいるリーンオートメーション(Lean Automation)という、徹底的に無駄を省いた自動化製造システムのロボット開発について説明しました。

最後に、NTUのチェン・イ・ミン教授が、「Innovations in Infrastructure Service Robotics(インフラサービスロボットの革新)」と題した発表を行い、シンガポールで今後導入が予定されているインフラサービスロボットについて紹介しました。

(左から)岩附教授、小島氏、チェン教授

(左から)岩附教授、小島氏、チェン教授

分科会報告会

分科会報告会では、6つの分科会の各担当者が、セッション内容および今後両大学で連携が期待される分野について報告を行いました。

今回のワークショップでのロボティクス分野の研究者の発表は、「高齢社会を支えるロボット技術」と「新産業を生み出すためのロボット技術」をテーマとした2部構成の分科会と基調講演を合わせた3部構成で行われました。議長を務めた本学武田行生教授(工学院)は、東工大が得意とするハードウェア技術とNTUが得意とするソフトウェアの両面から情報提供と議論を行ったこと、また、両大学の研究者に加え、東工大発ベンチャー企業である株式会社ハイボットのミケレ・グアラニエリ氏やデンソーの小島氏が講演者として参加したことにより、大学と企業が連携可能なプロジェクトについて、具体的な議論を行うことができたことを報告しました。

水素エネルギーの分科会については、本学岡崎健特命教授(グローバル水素エネルギー研究ユニット)とNTUのチャン教授が、太陽電池や燃料電池の分野での連携プロジェクトの具体化に向けて、議論を行ったことを報告しました。

分離化学の分科会については、議長を務めた本学鷹尾康一朗准教授(科学技術創成研究院)が報告を行い、「原子力安全」及び「継続的人材育成」が連携の鍵となると述べ、大都市での放射線の監視システムの開発や放射性廃棄物の処理に関する研究での連携が期待されると話しました。

分子化学の分科会では、高分子化学、有機化学、光触媒、導電材料、プラズモン化学の5つの分野の両大学研究者がペアで講演を行いました。議長の本学岩澤教授が今後の共同研究を見据えた発表や質疑が活発に行われたことを報告した後、各分野での連携については、各ペアが発表を行いました。

水資源の分科会については、本学鼎信次郎教授(環境・社会理工学院)が、各発表と議論の後、水動態に関する大規模シミュレーション手法の開発と膜やカーボンナノチューブ等の水処理への応用に関する2つのトピックスが、共通のトピックスとして挙げられたことを報告しました。

本学西山伸宏教授(科学技術創成研究院)は、医工学分野の分科会について報告し、同分科会に参加した研究者の研究トピックスが多岐にわたるため、同分野での研究連携を検討するには、まず両大学間でのトピックスの綿密な打ち合わせが必要だと述べました。

分科会報告会

クロージング・セッション

クロージング・セッションでは、本学大竹尚登副学長とNTUのティム・ホワイト教授が同ワークショップ開催に携わった全ての参加者に感謝の意を表すとともに所感を述べました。ホワイト教授は、今回のワークショップに日本企業研究者が講演者として参加したことに触れ、2017年9月に開催が予定されている、第3回ワークショップにも現地企業の研究者の参加を促し、両大学の研究連携の特色として、大学のみならず、両国の企業も参加する連携プロジェクトを推進していきたいと話しました。

今後、両大学のさらなる交流の拡大を目指すことを誓い合って、ワークショップは終了しました。


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