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本学発の「温度無依存水晶振動子」がIEEEマイルストーンに認定

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古賀逸策(1899~1982)
古賀逸策(1899~1982)

本学で生まれた水晶振動子は、小型化されつつ今やあらゆる電子機器に組み込まれ、ディジタル社会を支えています。古賀逸策名誉教授(当時、助教授)らの努力が実り、温度に左右されない水晶振動子が実現したのは今から85年程前の1932~33年にかけてでした。この度、この「温度無依存水晶振動子」が、社会や産業に多大な貢献をした歴史的な業績として、IEEEマイルストーン(Milestone)に認定され、記念銘板(プラーク)が贈呈されました。IEEE(アイ・トリプル・イー: The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)は、米国に本部を持つ電気電子分野の世界最大の専門家組織で、IEEEマイルストーンは、IEEEが電気・電子技術やその関連分野における歴史的偉業に対して認定する賞です。認定されるためには、25年以上に渡って世の中で高く評価を受けてきたという実績が必要です。本学にとっては、フェライトに続き2つ目のマイルストーンとなります。これを記念して、3月6日に記念式典と記念講演会、4月21日に除幕式が行われました。

古賀グループの業績概要

認定された業績

水晶振動子の開発につながる圧電効果の発見は、キュリー兄弟(弟は放射線の研究でキュリー夫妻としても有名)らによってなされましたが、当時使用されていた水晶板では、電圧をかけた時の振動数は、温度に大きく依存したために、長い間、応用の障壁となっていました。この壁を取り除き、今日広く使用されている水晶デバイスの開発を可能にしたのが古賀グループで、ある特定の角度で水晶の結晶から水晶板を切り出すと温度に依存しない振動子が得られることを、理論的アプローチによって予測し、実験で確認しました(1932~1933)。キュリー兄弟の研究から半世紀近くを経て、ようやく恒温槽を必要としない水晶振動子が誕生し、広範な製品への応用が可能となりました。

社会や産業への貢献

水晶と水晶デバイス搭載製品(出典:QIAJ,「水晶デバイスの解説と応用」)
水晶と水晶デバイス搭載製品(出典:QIAJ,「水晶デバイスの解説と応用」)

水晶振動子は、今日では時計をはじめ、スマートフォンやパソコンなどの情報通信機器、薄型テレビやブルーレイディスクなどのオーディオ機器、カーエレクトロニクスなどの電子機器、移動体通信・光通信網などのインフラシステムなどに組み込まれ、私たちの生活になくてはならない電子部品としてディジタル情報社会を支えています。

IEEE マイルストーン記念式典

3月6日、大岡山キャンパス百年記念館3階のフェライト記念会議室において、IEEEマイルストーン記念式典が行われ、本学、IEEE、古賀名誉教授の流れをくむ方々、及び水晶デバイス工業界の方々があわせて74名出席されました。

贈呈式では、IEEEのカレン・バートルソン会長より、IEEEマイルストーン記念銘板が三島良直学長に贈呈されました。

  • Bartleson会長からPlaqueを受け取る三島学長

    Bartleson会長からPlaqueを受け取る三島学長

  • 記念銘板

    記念銘板

引き続き、同館4階ラウンジにて開催された記念祝賀会では、IEEE Japan Council(日本支部) Chairの津田俊隆氏、文部科学省研究振興局長の関靖直氏をはじめ、日本水晶デバイス工業会会長・日本電波工業株式会社代表取締役会長兼社長の竹内敏晃氏、KDDI株式会社代表取締役社長の田中孝司氏(代読:理事・技術開発本部長の宇佐見正士氏)よりそれぞれ祝辞が述べられた後、蔵前工業会副理事長・NHK元会長の橋本元一氏の乾杯のご発声により、祝賀会が開催され、参加者は和やかに歓談しました。

記念講演会「水晶振動子のIEEEマイルストーンと情報通信の発展」

講演会の様子
講演会の様子

記念講演会は、大岡山西講義棟1(レクチャーシアター)で行われました。最初に、IEEE Japan Council History Committee Chairの白川功氏によって「IEEE Milestoneの概要」が説明された後、本学名誉教授の伊賀健一前学長が「古賀逸策の水晶振動子とマイルストーン」と題し、水晶振動子開発の歴史と、古賀グループが如何にしてゼロ温度係数の水晶振動子に辿り着いたかを解説しました。休憩の後、本学栄誉教授の末松安晴元学長が「水晶から光通信まで―東工大における通信の研究」と題し、古賀名誉教授の思い出やその流れをくむ本学の研究業績、さらには末松グループの大容量長距離光ファイバ通信用の半導体レーザの研究や大岡山‐長津田キャンパス間情報伝達(光通信)システム設置のいきさつなどを紹介しました。次に、日本電気株式会社代表取締役会長の遠藤信博氏が「AI・IoT・ビッグデータ、豊かな人間社会に向けて」と題して、情報通信の最先端技術について、豊富な事例を交えて、今後、AIによって“仕事”や“社会”のあり様は大きく変化するという趣旨の講演を行いました。最後に、内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員の久間和生氏が「我が国の科学技術イノベーション戦略」と題して、古賀グループの仕事をイノベーションの観点から、ディジタル革命の原点・立役者であると分析したうえで、現在久間氏が国家プロジェクトとして取り組んでいる「超スマート社会」(Society 5.0)の実現に向けた我が国の技術開発の取り組みについて紹介しました。講演終了後には質疑応答も活発に行われ、出席者202名のもと盛況の内に終了となりました。

記念銘板の設置場所と除幕式

贈呈された記念銘板は、大岡山キャンパス百年記念館2階の206号室(電気・光通信展示室)及びすずかけ台キャンパスに各1つずつ展示されています。すずかけ台では通学路の脇に台座付きで設置されています。水晶振動子の研究をしていた頃の古賀逸策研究室(電気工学科)は大岡山の本館の時計台(5~6階)にありました。後に古賀名誉教授は電気科学研究所(旧精密工学研究所の前身の一つ)を兼任し、そこのスタッフだった福与人八・大浦宣徳博士らと共に水晶振動子の研究を発展させました。昨年度の改組で、精密工学研究所は未来産業技術研究所に生まれ変わりましたが、「産業の塩」といわれるほど重要な水晶振動子の開発舞台だったことを記念して、研究所の現在の所在地にも銘板が設置されることになり、4月21日に除幕式が行われました。

  • 除幕式を終えた後の記念写真

    除幕式を終えた後の記念写真

  • 古賀逸策研究室があった本館の時計塔

    古賀逸策研究室があった本館の時計塔

取材申し込み先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : pr@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975


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