ロボットコンテスト※1の創始者であり、ロボット工学の世界的パイオニアである森政弘名誉教授がCNNのロボット特集番組に出演します。
CNNの取材は森名誉教授が居を構えている宮崎市内で実施されました。90歳という高齢にもかかわらず、パソコン、動画、ホワイトボードを駆使して、これまでのロボット研究や今後のロボットのあり方について熱く語りました。
「ロボットをだんだんと人間に似せてくると親しさがわいてきます。ところが、似れば似るほど、ある段階で不気味で気持ち悪くなり、見るのも嫌になります。それを『不気味の谷』と名付けました。なぜ、そのような感情が起きるのかはわかりません。ASIMO※2のようなロボットは顔を人間に似せないことにより、不気味の谷を回避しています。」
「ロボット研究を始めた約30年前に研究室のメンバーを集めて将来のロボットのあり方について検討を行いました。ドローンや郵便配達ロボットなど、今のロボットの原型は全てアイデアとして出てきました。現在のロボット研究はその延長線上にあります。日本のロボット工学は世界をリードしていますが、その一番大きな理由はロボットを人間の敵とみなさず、仲間として見るという思想です。仏教学者という立場から見ても、将来のロボット工学研究については“倫理観”が極めて重要です。そのためには、進歩や物欲ばかり追求し、外的環境に振り回されてはいけません。一旦、歩みを止めて、内なる心を静かにし、自らの心を自らが制御し、心を自然の状態にすることが不可欠なのです。」
CNN特集番組 “The Future of Japan”
森教授プロファイル
1969年に東京工業大学工学部制御工学科教授に着任。1987年に退官。技術的、哲学的観点からロボット工学に多大な業績を残している。1970年に「不気味の谷」現象を発見し、大きな反響を呼んだ。1975年に開催された沖縄海洋博において、ロボットが群れをなして自律的に動く「みつめむれつくり」を出展した。1971年から研究室で二足歩行ロボットの研究も開始し、膝が伸縮するタイプの二足歩行ロボットとその制御理論を開発。小手先の技術だけでなく、歩行に関する創造的な観点と哲学が必要であると考えた。その成果は弟子である竹中透氏(本田技研 主席研究員)が本田技術研究所においてASIMOとして実現している。
- ※1
- ロボットコンテスト: 「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)」。全国高等専門学校連合会、NHK、NHKエンタープライズの主催するロボットコンテスト(ロボコン)のひとつ。1988年から始まり、毎年NHKで放映されている。2017年はその30周年にあたる。
- ※2
- ASIMO(アシモ): 本田技研工業が開発し、ホンダエンジニアリング株式会社が製造している世界初の本格的な二足歩行ロボット。人間の生活空間で活動することを想定して研究されている人型ロボットで、「Advanced Step in Innovative Mobility(新しい時代へ進化した革新的モビリティ)」という言葉の頭文字をとって名付けられた。
- 個性豊かな東工大のロボットたち ―水中や高所探索、手術支援、人工筋肉など―|研究
- ロボット技術研究会がNHK学生ロボコン2017で初優勝|東工大ニュース
- NHKロボコン2017 NHK|NHKオンライン
- 「不気味の谷」 by 森 政弘|GetRobo