博士文系教養科目は2016年4月から新規開講され、2016年度4月入学の博士後期課程学生については卒業までに2科目を履修することになりました。
本科目は、リベラルアーツ研究教育院の金子宏直准教授と原田大介准教授が担当する学生プロデュース科目と、同教育院の猪原健弘教授が担当する教養先端科目から構成されています。
前者は学術学会運営を学び、後者は学術学会の発表を学ぶ科目で、この2つの科目では、年間にわたる統一テーマについて共同で研究調査活動が実施できるように計画されており、第2クォーター、第3クォーターと第4クォーターの最終回には、ポスター発表会と講演会からなるミニシンポジウムを開催しました。
また、このミニシンポジウムの講演録およびポスター発表は、学生による編集委員会が編纂するジャーナル(Journal of Tokyo Tech Liberal Arts Mini-symposium)1号から3号として公刊しました(学内のみ配布)。
第1回
日時 |
2016年7月30日(土) |
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場所 |
大岡山キャンパス 西9号館(コラボレーションルーム、ディジタル多目的ホール) |
テーマ |
「東京防災を超えて ―科学と技術―」 (Beyond Prevention of Tokyo Disaster, Science and Technology) |
第2回
日時 |
2016年11月12日(土) |
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場所 |
大岡山キャンパス 西9号館(コラボレーションルーム、ディジタル多目的ホール) |
テーマ |
「東京防災を超えて ―情報と災害への対応―」 (Beyond Prevention of Tokyo Disaster, Information and Impact Management) |
第3回
日時 |
2016年1月21日(土) |
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場所 |
大岡山キャンパス 西9号館(コラボレーションルーム、ディジタル多目的ホール) |
テーマ |
「東京防災を超えて ―持続可能な社会と経済―」 (Beyond Prevention of Tokyo Disaster, Sustainable Society and Economy) |
この講演会は東工大の博士後期課程学生、教職員を対象としていますが、東工大発国際学術活動を創設する実践的先進的プロジェクトの一端としての取組みについて、各回の様子を通じてご紹介します。
第1回では23グループ(1グループ4名)によるポスターセッションが行われました。また、科目担当教員の金子准教授が博士文系教養科目の紹介をした後、学生の司会進行により、特別講演2件が行われました。
第一講演では、安藤真理事・副学長(研究担当)が「防災における無線通信の活用」(Wireless Communication Systems and Disaster Prevention)として、通信技術の特徴、防災減災分野での様々な活用例を取り上げたのち、最新の大容量高速通信技術について講演をしました。
第二講演では、理学院地球惑星科学系の中島淳一教授が「首都圏の地震テクトニクス」(Seismotectonics beneath Kanto)として、首都圏の地震発生のメカニズムと特徴について専門的知見を取り上げたのち、首都圏地震に関連した防災減災について話しました。
講演終了後、教養先端科目履修者のグループによるポスター発表のうち、参加者の投票で選ばれたポスターと招待講演者の協議により選ばれたポスター発表に対する表彰式が行われました。
第2回では、前回よりも多い29グループ(1グループ4名)によるポスターセッションが行われました。ポスターセッションでは、学生同士の名刺交換やコメント対応、教員からの質問に熱心に説明する姿も見られました。前回同様に担当教員からの科目紹介の後、学生の円滑な司会進行により、特別講演2件が行われました。
第一講演では、理学院化学系の寺田暁彦講師が、「火山の災害と恵み」(The Hazards and Benefits of Volcanoes)として草津白根山観測での経験を交えながら、火山災害の特質について話しました。
第二講演では、環境・社会理工学院融合理工学系の髙木泰士准教授が、「予期せぬ災害と合理的な避難 ―アジアの沿岸域災害研究を通じて考える」(Unprecedented Disasters and Rational Evacuation -Lessons Learnt from Coastal Disaster Research for Asian Countries)として、アジア地域での豊富な調査に基づき護岸堤防などの防災施設の現状と課題について講演を行いました。講演後には、フロアから積極的に質問が出るなど活発な質疑応答が行われました。
講演終了後、教養先端科目履修者のグループによるポスター発表のうち、参加者の投票で選ばれたポスターと招待講演者の協議により選ばれたポスター発表について表彰式を行いました。三島良直学長が、講評ともにポスターの特別表彰を行いました。
第3回では27グループ(1グループ4名)によるポスターセッションが行われました。科目担当教員が博士文系教養科目について紹介し、また、近い将来に海外の大学の研究者を講演者に呼ぶことを想定して、今回のミニシンポジウムではインターネットを通じた講演を行うなどの新しい試みを取り入れていることを説明した後、学生の司会進行により、特別講演3件が行われました。
第一講演は、熊本大学政策創造研究教育センターの安部美和特任助教(同大学地域創生推進室兼務)が、スカイプを利用して「熊本大学避難所で私たちができたこと~熊本地震からの教訓~」(What we could do at Evacuation Center in Our University: Lessons Learned from Kumamoto Earthquake 2016)として、2016年におきた熊本地震直後の熊本大学での避難所運営について詳しく講演しました。
第二講演では、静岡大学大学院総合科学技術研究科の遊橋裕泰准教授が、「原発事故からの避難と地域社会」(Effect of Evacuation from Nuclear Disaster to Local Society)として、東日本大震災と密接に関連する原発事故による避難の実態と地域社会の取り組みのありかたについて話しました。
第三講演では、関東労災病院の岡崎裕司副医院長(同病院地域連携室兼務)が、「災害時の医療機関の役割」(The role of medical institutions in the event of a disaster)と題して、災害時の救急医療における救命の重要点について講演を行いました。
講演後のQ&Aセッションでは、スカイプを利用し安倍特任助教と本学学生との間で英語による熱心な質疑応答が行われました。
最後に、総評を水本哲弥副学長(教育運営担当)が、ポスター表彰式を和田雄二物質理工学院長が行いました。
最終回のミニシンポジウム終了後、学生が準備して開催した懇親会には、講演者の先生や蔵前工業会の方など多くの方々が参加しました。
各回のミニシンポジウム会場退出時には、「全員あくしゅ」をして、履修学生と教員とのコミュニケーションの推進が図られました。
リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。