東京工業大学未来社会DESIGN機構(以下、DLab)は、人々が望む未来社会とは何かを、社会の一員として、学内外のさまざまな方と広く議論しながらデザインしていくための組織です。2020年1月20日、DLabは「未来社会像」と「東京工業大学未来年表」を発表しました。
2020年度は新型コロナウィルス禍によりオンライン中心の活動となりましたが、引き続き「ありたい未来」の実現に向けて活動をしています。
DLabニュース
2020年10月29日にDLabと科学技術創成研究院基礎研究機構の広域基礎研究塾(以下、広域塾)との共同で、ワークショップ「未来社会と自身の研究との繋がりを考える」をオンラインで開催しました。
東工大の若手研究者がそれぞれの専門分野の知識を生かし、DLab作成の「未来シナリオ」を使って社会課題を解決するためのサービスや仕組みを考え、そのために必要な研究や技術、社会制度等を検討しました。
ワークショップの詳細については、以下の記事をご覧ください。
DLab構成員に聞く「DLabってどんなところ?」
人々が望む未来社会像を多様な視点で議論していくため、DLabには学内外から様々な経歴を持つ構成員が集まっています。なぜDLabの活動に参加することになったのか、今後の活動にどのような期待を持っているのかインタビューしました。構成員の紹介とともに、それぞれが思い描くDLabの姿をご紹介します。(肩書はインタビュー当時のもの)
専門を生かしながら未来社会の具現化にも役立っていきたい
DLab Team Create(チーム クリエイト)所属
磯部敏宏 東京工業大学 物質理工学院 准教授
2001年名古屋工業大学 工学部 材料工学科卒業、2003年名古屋工業大学 大学院工学研究科 修士課程修了、2006年東京工業大学 大学院理工学研究科 博士後期課程修了。2006年国立研究開発法人産業技術総合研究所 産総研特別研究員、2008年東京工業大学 大学院理工学研究科 材料系グローバルCOE特任助教、2010年東京工業大学 大学院理工学研究科 材料工学専攻 助教、2016年東京工業大学 物質理工学院 助教、2019年より現職。
磯部准教授は、地球環境の改善や保全に関わるセラミックスの開発などを主要テーマに、水分離技術、CO2分離技術、負熱膨張材料の研究を進めています。DLabでは、未来社会像の具現化に向けた取り組みを行うTeam Createの構成メンバーとして活動しています。また、文部科学省などが後援する科学イベント「サイエンスアゴラ」では、高校生などを対象としたDLabワークショップの司会も担当しました。
私の専門は材料科学です。最初、DLabの活動について話を聞いたとき、自分の専門との関わりは薄いのかなとも考えたのですが、偶然参加したワークショップでさまざまな気づきを得て、考えが変わりました。
材料研究では「物質の有用な性質を少しでも高める」という厳密なゴールに向かって実験を進めます。一方DLabの活動では、参加者が意見を出し合いながら、自由な発想で未来社会のあり方を検討していく。そうした自由なアプローチで未来を考えていけるというのは私にとって新鮮な驚きでしたし、グループ討論では「材料の知識って、よりよい未来をつくる武器にもなるんだ」ということを実感できて、「これは面白いな」と心から楽しめました。
その後「サイエンスアゴラ」のワークショップを手伝った際の手応えも大きく、お誘いを受けてメンバーとして正式に参画することになりました。文系・理系の垣根を越えた学内の教職員、企業のパートナーや一般の方など多彩な方との議論では、異なる視点からの指摘にハッとさせられることも多く、自分自身の勉強にもなっています。
2020年1月までのDLabの活動は、リアルで人が集まるイベントが中心でした。コロナ禍のなか、DLabの活動を進めるのは難しいと思った時期もあります。しかし、実際はオンラインでDLabパートナーズのワークショップを実施したり、科学技術創成研究院の長谷川晶一先生が開発した、「Binaural Meet」(バイノーラル・ミート、複数の会話の輪が存在可能なビデオ会議サービス)を使ってウェブ上で懇親会を行うといった形で活動を続け、「意欲とツールがあれば、議論の場はつくっていけるんだな」と感じています。
東工大には、世界の研究の最前線で活躍する研究者が沢山います。未来社会のあり方を考えると同時に、それを具現化する技術・方法も考えていけるのが、DLabの大きな特徴です。そこで今後は、皆で検討した未来像を実現するための具体的な研究を行って、成果を出していきたいですね。
その際、最初にスポットが当たるのは、具体的な製品・サービス開発に直結した応用研究で、基礎研究である材料分野の出番はもう少し先になるかもしれません。ただ、どんなものを作るにしても土台になるのは材料ですから、幅広い場面で使えるという利点もあります。材料分野の知識を生かしながら、研究の面でも、また関連研究者を紹介するなど人材のハブとしての面でも、DLabの活動に役立っていければと考えています。
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