東京工業大学工学院は、学生や若手研究者がエンジニアリング(E:Engineering)を活かした持続可能な社会(S:Sustainable Society)の実現に向けた事業構想を競うE×S Challenge(イー・バイ・エス・チャレンジ)を2021年度、開始しました。学生や若手研究者がチームを組み、課題解決策の実現可能なアイデアを競うコンテストです。上位チームには開発資金が贈られます。実行委員長は井上光太郎工学院副学院長です。
第1回E×S Challengeには、コロナ禍の下でもオンラインを駆使してつながり、持続可能な社会の構築を目指す意欲のある若手エンジニアが参加しています。東工大工学院にとどまらず、学内の他の学院、さらには他大学や研究所、企業からもメンバーに加わりチームを作りました。参加グループは国内外の起業家、投資家、戦略コンサルタント、弁護士などによるセミナーを受け、事業構想を練ってきました。
ピッチコンテストで4グループが受賞
9月4日、最初の関門であるPITCH(ピッチ)※コンテストが開かれました。20グループ計約100名がオンラインで参加し、各グループによる持続可能社会の構築に向けた熱のこもった3分間の英語プレゼンテーションが繰り広げられました。さらに審査員とグループリーダーの間では質疑応答やフィードバックが活発に行われ、真剣な議論が展開されました。
審査の結果、以下の4グループがピッチ賞(ピッチ創設者賞:PITCH Founders Award)とピッチ・マイクロン賞:PITCH Micron Award)に選ばれました。各グループのリーダーのコメントを紹介します。
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- 新しい事業のアイデアを提案するための短時間のプレゼンテーション
SaDGelプロジェクト
チームKondo lab(工学院機械系原子核工学コース)のリーダーの今泉瑛介です。一見綺麗で神秘的な宇宙にもスペースデブリと呼ばれる人間の手によって発生したゴミが増え続けています。私たちは宇宙を美しい状態に保つため、宇宙のゴミ問題にチャレンジします。
RINNE for soil Salinityプロジェクト
工学院機械系の修士学生3人のチームのリーダーの尾﨑亮介です。世界80億人の食料確保に向けて農地の塩害対策に取り組んでいきます。各地の限られた資源を「循環」させることで有効利用し、少しずつでも着実に緑を取り戻せるようなシステムを作ることが目標です。
STEM AS ONEプロジェクト
工学院経営工学系井上研究室の有志チームのリーダーの林可欣です。研究の中で企業における女性の活躍に着目する機会も多いことから、STEM分野(理系)×女性活躍に注目し、社会を変革する新しいビジネスを創造します!
Unsolvedプロジェクト
タイ人留学生5人のチームのリーダーのオルニダ・クライウティアナント(Ornida Kraiwuttianant)です。学生生活は、人生の中で最も重要な局面の一つです。誰もが無視されるべきではありません。私たちUnsolvedは、学校で軽視されている問題を明るみに出し、私たちの解決策で解決します。
ピッチコンテストの審査員
ピッチコンテストは、次の皆さんにより幅広い視点から審査が行われました。
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植松友彦工学院長
技術的新規性や実現性を評価 -
山本修さん(本学OB)
本チャレンジの提唱者でもあり、投資ファンド経営者として投資家視点で評価 -
マノジ・ジャイン(Manoj Jain)さん(インド人社会起業家、インドから参加)
国際的インパクトを評価 -
重田幸生さん(本学OB、戦略コンサルタント)
ビジネス視点で評価 -
伊吹英子さん(CSRコンサルタント)
重田さんと伊吹さんは本チャレンジをプロボノで全面的に支援する野村総合研究所の戦略コンサルタントです -
熊谷沙羅さん(中学3年生ながら世界最大の社会起業家ネットワークから認定を受けたBookSwapJapan(ブック・スワップ・ジャパン)の代表)
若い世代へのアピール視点で評価
審査では技術的な側面だけなく、社会・環境インパクト、国際的スケール感、ビジネス発展性、ワクワク感などから審査されました。
最終審査会は12月11日
今回ピッチコンテストに参加した20グループは、最大の飛躍を実現するため、今後7グループに再編されます。野村総合研究所の戦略コンサルタントのメンターを受けながら次のSTORM(ストーム)ステージ(創造的破壊ステージ)に進みます。そこでは普段勉強している科学技術的側面だけでなく、ビジネス側面でも磨きをかけ、12月11日開催の最終審査会を目指して事業構想を飛躍的に発展させていきます。
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- 工学院E×S Challengeは工学院への寄付金(東京工業大学基金 工学院教育基金)による運営事業です。