東京工業大学InfoSyEnergy(インフォシナジー)研究/教育コンソーシアムとエネルギー・情報卓越教育院(2つの組織の総称:ISE)は、12月13日から17日(現地日付)まで、米国ハワイ州オアフ島にて第2回エネルギー・情報国際フォーラムを開催しました。
ISEでは、「エネルギー×情報」に関する最新の研究発表を行い、カーボンニュートラル実現に向け海外のトップ大学とのグローバル連携を加速し、エネルギー学理と情報科学の融合分野の開拓を推進するとともに、グローバルに活躍する「マルチスコープ・エネルギー卓越人材」を養成することを目的として、毎年、本フォーラムを開催しています。
2021年度の第1回フォーラムはハイブリッド形式にて国内開催され、海外からはオンライン参加のみでした。2022年度はハワイでの開催が実現し、米国、ヨーロッパ各国、アジア各国から多数のトップ大学教員、博士課程学生が対面にて参加しました。連携する海外大学の教員11人と本学教員26人、ISEの博士/修士学生38人を含む本学学生46人、海外大学の博士学生16人、および会員企業を含む合計101人が現地参加、オンラインを合わせると135人が参加しました。
本フォーラムでは、インフォマティックスを活用したエネルギー材料/デバイス/システムに関する研究成果など、カーボンニュートラルに向けた各種エネルギー技術の最新研究成果が報告され、活発な議論が行われました。また、水素エネルギー技術開発を推進するためのグローバル研究プロジェクトの立ち上げについても、話し合う場が設けられました。さらに、参加したISEの所属学生は、最新の研究発表に加えて、海外大学の学生と同室で過ごしながら、最新技術による新規事業創出をテーマとしたグループワーク・発表、海外/企業メンター面談など、さまざまなプログラムを経験することで、グローバルに活躍する「マルチスコープ・エネルギー卓越人材」としての資質を涵養する機会を持つことができました。
オープニング
「アラモアナ ホテル バイマントラ」でのフォーラム開会に先立ち、東工大の益学長からのビデオあいさつがありました。オンラインではないフェイス・トゥ・フェイスの機会を楽しみ、成果のある活発な議論により、参加者たちがエネルギーとインフォマティックスの研究に貢献できる新たな手法や相互作用を得られる場であるよう期待していますと述べ、5日間にわたるイベントの幕が上がりました。
次に、InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアムの代表で、エネルギー・情報卓越教育院の教育院長を務める伊原学教授(物質理工学院 応用化学系)からオープニングスピーチがあり、本コンソーシアムやISEの理念の説明のほか、「東工大等が発表したCO2 80%削減後の世界の水素輸出入量の試算によると、国や地域によって状況が全く異なることが予想されている」「カーボンニュートラル(CN)実現のためには本コンソーシアムのようにビジネスとアカデミアのグローバル連携がますます重要になっている」といったコメントがあり、このフォーラムをグローバルネットワークの構築の絶好の機会と捉えて大いに議論を楽しんでほしいと参加者に向けた言葉が送られました。
招待講演/基調講演
InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアムに参画する講師による講演が行われました。海外の機関からコンソーシアムに参加する研究者のエネルギー・情報分野に関する最先端の研究も紹介され、講演後には学生たちからさまざまな質問と同時に活発な意見が交わされました。
招待講演
-
アンソニー・クー(Anthony Kuh)教授/ハワイ大学マノア校 電機工学部
「リアルタイム分散・パーソナライズド・ラーニングとエネルギーへの応用」(Real-Time Distributed and Personalized Learning with Applications to Energy) -
シユウ・ロン(Xu Rong)教授/南洋理工大学 化学・生物医学工学部、NTUエネルギー研究所 再生可能エネルギー・低炭素発電(ソーラー)分野担当ディレクター
「クリーンエネルギー変換のための触媒設計」(Catalyst Design for Clean Energy Transition)
基調講演
-
イグァン・ジュ(Yiguang Ju)教授/プリンストン大学 機械・航空宇宙工学部
「プラズマを利用した燃焼と製造」(Plasma Aided Combustion and Manufacturing) -
チャン・シュウ・ファ(Chan Siew Hwa)教授/南洋理工大学 機械・航空宇宙工学部、NTUエネルギー研究所 共同ディレクター
「ターコイズ水素 - エネルギー転換期における再生可能エネルギー不足国への可能な解決策」(Turquoise Hydrogen – A possible solution for Renewable Energy Scarce Countries in Energy Transition Period) -
稲木信介教授/東京工業大学 物質理工学院 応用化学系
「電化合成:グリーン・サステイナブルな有機合成とその先へ」(Electrifying Synthesis: Toward Green Sustainable Organic Synthesis and Beyond) -
クサヴィエ・デファゴ(Xavier Défago)教授/東京工業大学 情報理工学院 情報工学系
「分散・非集中型インフラストラクチャの基盤としての分散型合意の理解」(Understanding Distributed Agreement as the Fabric of Distributed and Decentralized Infrastructures)
学生プレゼンテーションセッション
参加学生は、「エネルギーための物質とデバイス(Materials and Devices for energy)」「エネルギーのための反応(Reactions for energy)」「エネルギーのためのシステムとデータサイエンス(Systems and Data Science for energy)」の3分野のうち、1分野に関し研究発表を行いました。12回におよぶセッションでは、学生の熱のこもった発表に対し活発な質疑や意見が交わされました。
学生ワークショップ
会期前より、学生たちは異なる研究分野、国籍からなる3~4人のグループに分かれ、「持続可能なデジタルエネルギー社会における新しい「サービス」の提案(Propose a new "service" in the era of sustainable digitized energy society)」という課題に対して活発に議論を交わし、共同研究に取り組んできました。それぞれのグループは、ワークショップのために設けられた時間外でも、ホテルのロビーやカフェなど、さまざまな場所で対面やオンラインで共同作業を繰り返し、最終日に研究発表を行いました。
アワードセレモニー
最終日には、個々の学生プレゼンテーションおよびグループプレゼンテーションの発表内容について評価委員会で審査が行われ、学生プレゼンテーション賞(Student Presentation Award)として、個人の最優秀賞(Gold Medal)1人、優秀賞(Silver Medal)7人、ベスト・コラボレーション・アワード(Best Collaboration Award)として優秀グループ3組が伊原教育院長により表彰されました。
学生プレゼンテーション賞
最優秀賞
- リシ・グルナニ(Rishi Gurnani)さん/ジョージア工科大学
優秀賞
- キム・デヨン(Kim Dae Yeong)さん/東京工業大学 工学院 機械系 博士後期課程3年
- 巽由奈さん/東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 博士後期課程1年
- 小林詢大さん/東京工業大学 工学院 機械系 博士後期課程1年
- シン・ダイウィイ(Shen Dawei)さん/東京工業大学 工学院 機械系 博士後期課程2年
- 中山威弥さん/東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 博士後期課程1年
- 石山拓途さん/東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 博士後期課程1年
- チャン・ホンタオ(Zhong Hongtao)さん/プリンストン大学
ベスト・コラボレーション・アワード
グループ04
- 野間央さん/東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 博士後期課程2年
- クリストファー・M・バーガー(Christopher M. Burger)さん/プリンストン大学
- ナスション・アブィ・マリク・ギファリ(Nasution Aby Malik Ghiffari)さん/東京工業大学 工学院 電気電子系 博士後期課程1年
グループ14
- キム・デヨン(Kim Dae Yeong)さん/東京工業大学 工学院 機械系 博士後期課程3年
- マウリシオ・ゴメス・デ・ケイロス(Mauricio Gomes de Queiroz)さん/リヨン大学、フランス国立科学研究センター(CNRS)
- 神木遼也さん/東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 修士課程2年
グループ21
- オウ・ウジョン(Wang Yuchun)さん/東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 博士後期課程1年
- シ・ムキ(Shi Mengqi)さん/東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 博士後期課程2年
- ショウ・エイ(Chung Ying)さん/東京工業大学 物質理工学院 材料系 博士後期課程2年
- 土井真里奈さん/東京工業大学 物質理工学院 応用化学系 博士後期課程1年
Best Collaboration Awardの受賞者たち
メンターズ インタビュー
企業メンター・国際メンターは、アカデミックな視点だけでなく、グローバルかつビジネス実践的多角的な視野を養成するための本教育院の制度です。海外大学やInfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム会員企業のプログラム担当者がメンターとなり、学生と面談をし、研究やキャリアについての助言だけでなく、素養・能力についての達成度評価を行い、学生の強みを伸ばし、弱みを克服するための助言も行います。今回の国際フォーラムでも会期中に面談の時間を設け、10人のメンターと38人の所属学生が対面で実施しました。
オンサイト テクニカルツアー
日本と同じく島々からなるハワイのエネルギー事情を学ぶため、カワイロア発電所を視察しました。同発電所はアラモアナから北端に向かって約1時間の所にある、約110エーカーに50万枚以上のソーラーパネルを配した施設です。ハワイ最大の太陽光発電プロジェクトで、オアフ島の14,300以上の世帯に電力を供給しています。隣接するカワイロア・ウインドファームは30基の風力タービンで構成され、最大出力は69メガワットになります。視察前に、ハワイアンエレクトリックカンパニー 需要家エネルギー運用の川浪陽ディレクターが、会場でハワイの電力事情と気候変動に対する行動計画や二酸化炭素削減に向けた道筋について講演しました。その後の施設見学で、学生たちは巨大な風車を見上げながら説明員の解説を聞きました。
国際フォーラムを終えて
環境・社会理工学院 大友順一郎教授
(InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム副代表/国際フォーラム実行委員長)
今年度の国際フォーラムは、念願であった海外での対面開催を実現することができました。国内外の100名を超えるエネルギーとデータサイエンスに関わる著名な研究者、学生、企業関係者の参加に支えられ、密度の高い意見交換ができました。招待講演、学生発表、グループ発表、海外メンターとの交流、さらに地元の再生可能エネルギーに基づくテクニカルツアーの体験を通じて、海外参加者との信頼関係はより強固なものになり、対面開催のメリットを改めて感じました。評価委員会での国内外の教員が研究と教育について真摯な議論が交わされたことが印象的であり、学生の声としても、コロナで隔離されていた約3年間を超えて、海外で国際フォーラムに参加できたことを素直に喜んでもらったことが励みになりました。次回は本学の機動性の高さを活かしつつ、産学連携も強化しながら、よりグローバルな活動として進めて行きます。
- エネルギー・情報卓越教育院
- InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム
- 再エネ/廃プラ水素を混合 100 kw水素燃料電池-デジタルツインの運用を開始|東工大ニュース
- 第3回「InfoSyEnergy国際交流ワークショップ」開催|東工大ニュース
- 脱炭素を目指す都市型社会のあり方を考えるInfoSyEnergy第3回公開シンポジウム開催|東工大ニュース
- 「第1回エネルギー・情報国際フォーラム」を開催|東工大ニュース
- エネルギー・情報卓越教育院がキックオフ記念式典と国際交流ワークショップを開催|東工大ニュース
- 東工大の「マルチスコープ・エネルギー卓越人材」が文科省卓越大学院プログラムに採択|東工大ニュース