東工大では現在、2016年4月スタートに向けて、教育システムの抜本的な改革を進めており、改革の目玉のひとつとして、「科学・技術の最前線」を始めとした実験付き講義の実施が予定されています。それを見据えて2015年3月、西5号館にある階段状のW531講義室を、東工大版レクチャーシアター※1とする工事が終了しました。このような会場で行われる講義のお手本に、英国王立研究所が毎年実施しているクリスマスレクチャーがあります。東工大の教職員13名が、2014年クリスマスレクチャーを視察しました。
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- 主に初年次の学生を対象に、理工系の卓越した授業・実験・講演を実施し、最先端の技術を体感させる場
クリスマスレクチャーの視察は、今回が2回目です。2013年末、クリスマスレクチャーを参考にした講義を東工大で実施する可能性を探るため、2つのグループが視察に派遣されました。今年度はこの結果をもとに、講義に取り入れられている工夫、講義内容・手法として参考になる点などを調査し、具体的な実施案に反映させるべく、再度視察することになりました。また、この夏に東工大で、2014年のクリスマスレクチャーを公演することが検討されており、そのための留意点を確認することも目的のひとつでした。
今回の視察メンバーは、実験付き講義を実施する各類の代表7名、レクチャーシアターの企画・運営に主導的に取り組む「国際フロンティア理工学教育プログラム」専門委員会の特命教授3名、さらに事務職員3名の計13名です。
2014年クリスマスレクチャーは、マンチェスター大学のダニエル・ジョージ教授が講師を務めました。東工大は、講義が行われる12月11日、13日、16日の3回にあわせ、3班に分かれて視察しました。今回の講義のテーマは電気・電波・通信で、「Sparks will fly: how to hack your home(ひらめきが飛ぶ:どのようにしてあなたの家に浸透したか)」と題し、電球、電話、モーターという、3つの身近な電気の応用について紹介する内容でした。
講義当日、英国王立研究所の貴重な所有品を見る、バックヤードツアーの機会がありました。それぞれの分野で先駆的な研究を行った、英国王立研究所と関係の深い研究者達※2の実験装置や器具、ノートなどの、当時のままの実物を目にし、視察メンバーは感動を覚えました。
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- 例:ハンフリー・デービー(ナトリウムとカリウムを発見)、ヘンリー・ブラッグ(ノーベル物理学賞)、マイケル・ファラデー(電磁気学および電気化学の分野で貢献)、ジェイムズ・デュワー(液体酸素が磁性を持つことを発見)
講義が行われた元祖レクチャーシアターは、赤を基調とした荘厳な雰囲気のある、すり鉢状の会場で、1階300席、2階150席、計450席の半円状の空間です。客席は約45度の急勾配の構造で、視察メンバーが座った最後列からは、講師をはるか下に見下ろす状態でしたが、講師の手元を大写しにできるスクリーンが設置されていて、どの客席からも講義に集中できる配慮が為されていました。
講義は各テーマにあわせ、世界初の発明として有名な、スワンによる白熱電球、ベルによる電話、ファラデーによるモーターを模した、いずれも手作り感たっぷりの装置を示し、実際に作動させて見せることからスタートしました。そして、これらに関連する技術の進歩を、次から次へと実験・デモを行いながら、話を進めていきました。チームワークの良さ、講師・前説者の話術の巧みさ、12~17歳の参加者を飽きさせず長時間引きつける運営など、参考にすべき点が多く、極めて有意義な視察となりました。
これから「東工大レクチャーシアター」で行われる企画に、今回の視察を大いに生かしていきます。
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ものつくり教育研究支援センター
国際フロンティア理工学教育プログラム担当 津田健
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