6月24日~7月7日に、緑が丘6号館1階ホールにて建築学科および建築学専攻の卒業設計・修士制作展が行われました。東工大建築学科、建築学専攻では、毎年卒業設計・修士制作展を開催しており、学生の作品を展覧会で公開できる貴重な機会となっています。
卒業設計および修士制作は、建築学科、建築学専攻学生によるこれまでの集大成です。東京工業大学で建築を学ぶ学生が真摯に向き合い、全力で取り組んだ作品を展覧会という形で公開します。今年は、学部生の優秀作品9点と修士の作品2点を展示し、在学生をはじめ、教員、学外一般の方、他大学の学生、高校生のべ800人余が来場しました。
展覧会初日の6月24日には、4名の出展者代表と、東工大OBを中心とした組織であるTTIT建築設計教育研究会会員による講評会が行われました。建築業界の第一線で活躍されている、本学出身の著名な建築家の方々の鋭い講評により、講評会は非常に有意義なものでした。
卒業設計優秀作品
【大岡山建築賞】 「道 屋根の連なりが築く常滑の町」 河合杏奈
愛知県常滑は900年以上続く窯業の町ですが、その産業は衰えつつあります。この現状に対し、町の様相を支える生活の構造を、生きた形で継続させていくための共同の窯屋を計画しました。窯屋の形態を取り入れた形式が切妻の棟として山を囲むように連なり、それらを貫く道が町と人々を繋ぎとめます。
【大岡山建築賞・銀賞】 「風景の継承」 岩田翔太
再開発が盛んに行われている南千住駅前には廃墟となったセメントサイロがあります。この場所を敷地とし、風景の重要な要素を円柱の上部と捉え、残しつつも、下部では丘を計画することで市民に開放します。見慣れた風景の中で人はサイロの中に留まり、そして、流れていきます。
【大岡山建築賞・銀賞】 「水懐の庭」 園佳美
千葉県香取市佐原は古くから利根川水系の恩恵を受ける水郷のまちとして栄えていましたが、市街地化や護岸整備等により、水辺との日常的な関わり関わりは薄れてしまいました。かつての船溜り跡地に一筋の水路を通し、それに沿った親水公民館を再設計しました。
【優秀作品】 「再資源市場 ― 墨田区編 ―」 下田益央
かつて物作りで栄えた墨田区に、地下に工場、地上に販売所としての機能をもつ市場を計画しました。外側は町の動線に、内側は吹き抜けに合わせ変形し、全体は大屋根によって統合されます。ゴミを介して様々な人が集まり、交錯する場となります。
【優秀作品】 「渋谷 ― 大地の覚醒 ―」 新居壮真
渋谷は川を伴う谷として自然的側面に恵まれている一方で、経済活動が盛んな地としての人工的側面も強いです。地球環境を意識せざるを得ない今日、都市における唯一の自然の名残である地形に応答した再開発を計画しました。
【優秀作品】 「時の彫像」 西慶三
青山公園にある軍用ヘリポートの一角を転用し、敷地の歴史を未来に継承するための古墳のような建築を目指しました。屋上での花畑の活力と、地下での納骨堂の荘厳さの間にある「生」と「死」が入り混じる空間は、人々に死生観を問い直す時間を与えます。
【優秀作品】 「塔の息吹」 前原航
無機質な高層建築からの脱却を目指した提案を、東京都芝浦地区に計画しました。柱は揺らぎながら人のスケールに寄り添い、外皮はスリットと捩れにより開放され、吹き抜けが出現します。人々を受け入れ、外部を巻き込むことで、その塔は息吹くのです。
【優秀作品】 「Noah's Ark」 巻島雄途
横浜駅は40万人/日の乗車人員を誇るターミナル駅でありながら、災害に対して脆弱です。災害時の避難場所としての「地上5m以上に65,000m2以上の床を有する空間」を公共空間の層というかたちで創出し、駅前空間の新しい形を考えました。
【優秀作品】 「風景の更新 ― 谷根千における路地空間の再編 ―」 宮本富有
谷根千地域では、建物の更新と共にそれぞれの家は壁を建て、閉じるようになり、かつて生活の場が広がっていた路地は失われつつあります。これまでの路地の使われ方をヒントに、谷根千に路地を生む建築を5つ提案しました。
以下、実行委員からのコメントです。
お越しくださったみなさま、天候に恵まれない日もありながら足を運んでいただき誠にありがとうございました。予想以上の来場者数を受けて、実行委員一同非常に嬉しく思っております。来年度以降も多くのご来場を心よりお待ちしております。
お問い合わせ先
河合杏奈 (理工学研究科 建築学専攻 村田研究室)
Tel : 03-5734-2568