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朝永-ラッティンジャー流体の励起素過程の観測に成功

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概要

東京工業大学大学院理工学研究科の鎌田大博士研究員と藤澤利正教授、日本電信電話株式会社物性科学基礎研究所の村木康二上席特別研究員らの共同研究グループは、半導体ナノ構造中において、朝永-ラッティンジャー流体の励起素過程の観測に世界で初めて成功しました。一次元プラズモン回路である量子ホールエッジチャネルを複数用いて、人工的な朝永-ラッティンジャー流体を形成し、プラズモン波束の反射波の時間分解測定を行うことによって観測しました。

朝永-ラッティンジャー流体の励起素過程の観測は、複数の一次元プラズモン回路の間で信号が伝達されることを示しており、プラズモン集積回路への応用の道を開 く成果といえます。

この成果は英国時間2014 年2 月9 日PM6:00 に英国科学雑誌「Nature Nanotechnology(ネイチャーナノテクノロジー)」のオンライン速報版で公開されま した。

朝永-ラッティンジャー流体
通常の伝導体では素電荷e の電子の運動が重要であ るが、一次元伝導体では有効電荷e*をもつ電子集団の運動が支配的で あり、その電子集団を朝永-ラッティンジャー流体という。1950 年に朝永振一郎 博士によって、1963 年にホアキン・マズダク・ラッティンジャー博士によって、 理論が構築され、様々な一次元伝導体(カーボンナノチューブや量子細線など) でその存在が確認されている。しかし、電子またはプラズモンが朝永-ラッティ ンジャー流体に変化する素過程は今まで観測されておらず、その基本的性質を正 しく調べることはできなかった。

量子ホールエッジチャネル
強磁場中の二次元電子系の試料端に沿って形成される 一次元一方向伝導チャネル。電子が伝播する方向は磁場の向きによって一方向に 決まり、原理的に逆方向に伝播することがないため、優れた性能を示すことが 様々な実験によって明らかにされている。

プラズモン
電子の密度の濃い部分・薄い部分が波のように伝搬する電子の集団運 動。プラズモンの応用研究分野は、エレクトロニクスやフォトニクスに対応して 「プラズモニクス」と呼ばれる。

時間分解測定
量子ホールエッジチャネル上のプラズモン波束の電荷量が時間とと もに変化する様子を測定する手法。プラズモンは電子密度の粗密波であるから、 量子ホールエッジチャネルの電荷量に比例した信号(電流)の時間変化を測定す ることにより実現した。

素電荷・有効電荷
電子のもつ電荷を素電荷(e*= 1.602×10-19 クーロン)という。素電荷e*の電子を朝永-ラッティンジャー流体に入れようとしても、その素電荷より小さい電荷量の励起しか発生しない。この電荷を有効電荷とよび、素電荷e*より小さくなりうる。有効電荷が素電荷と異なることによって、朝永-ラッティンジ ャー流体特有の物理現象が発生する。

量子ホールエッジチャネル用いた人工的な朝永-ラッティンジャー流体の模式
量子ホールエッジチャネル用いた人工的な朝永-ラッティンジャー流体の模式

論文情報

雑誌名
Nature Nanotechnology (2014)
Digital Object Identifier (DOI):
論文タイトル
Fractionalized Wave Packets from an Artificial Tomonaga-Luttinger Liquid
執筆者
H. Kamata, N. Kumada, M. Hashisaka, K. Muraki, and T. Fujisawa

お問い合わせ先
大学院理工学研究科 物性物理学専攻
教授 藤澤利正
TEL 03-5734-2750
fujisawa@phys.titech.ac.jp


博士研究員 鎌田 大
TEL 03-5734-2809
kamata.h.aa@m.titech.ac.jp


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