5月26日、大岡山キャンパス東工大蔵前会館にて、第28回大岡山蔵前ゼミが開催されました。
大岡山蔵前ゼミは、東工大の全学同窓会である蔵前工業会の東京支部が主催する、卒業生と現役学生の交流の場です。日本社会や経済をリードしている先輩を講師に迎え、これから社会に出る大学生・大学院生に、講演会と懇親会をとおして、様々な情報提供、意見交換を行っています。
今回は「社会技術システムの安全について考える―福島第一原子力発電所の事故体験と組織レジリエンス―」と題し、原燃輸送株式会社の吉澤厚文代表取締役社長(元 東京電力福島第一原子力発電所ユニット所長、1981年工学部機械物理学科卒業、1983年大学院理工学研究科原子核工学専攻修士課程修了)を講師に迎え、学生61名、社会人147名(教職員10名、一般22名を含む)、計208名という大変多くの方々の参加を得ました。
吉澤氏は、東日本大震災のとき、福島第一原発のユニット所長として所員の安全を確保しながらプラント事故に対応するという、非常に困難な立場に置かれました。「事故現場で五感全てを通して感じたことを、映像だけ見ている人たちには伝えることはできない」「事故に直面したときは、吐き気を覚える恐怖を感じた」など、まさしくその様子をテレビ画面で見ていただろう参加者にとって衝撃的な話が続きました。そのような現場で、命がけで作業にあたった人々、またそれを指揮した人々の実体験に基づいた話に、多くの参加者が感銘を受けました。
また、吉澤氏は事故の経験を冷静な目で分析し、安全についての新しい考え方に言及されました。従来、安全とは事故を起こさないことであり、ミスを犯す可能性がある「人」もリスクの1つであると認識されてきたが、事故をゼロにすることはできていない。それならば、事故が起きたときに臨機応変に対処し、社会技術システムの継続を達成するレジリエンス(回復力)がより重要であり、そのような対処は、「人」によってのみ可能である、と述べました。
講演会後の懇親会にも多くの参加があり、吉澤氏への質問だけでなく、同窓生同士あるいは同窓生と在学生との交流で大いに盛り上がりました。