4月5日の池上彰特命教授の授業「現代社会論B」は、ノーベル経済学賞受賞者のアルビン・E・ロス氏(米国スタンフォード大学教授)を招いてインタビュー形式で行われました。
はじめに池上教授が、世の中のマーケットでは商品の価格により需要と供給が成り立っていることが多いが、倫理上の問題などで価格や数値を決めることが難しい問題もあるということを説明しました。そして、このような問題を研究し、需要と供給の「組み合わせ」をマッチさせることで人々の役に立てるというロス教授の功績が紹介された後、拍手を受けながら、和やかな雰囲気の中でロス教授が登場し、講義が始まりました。
ロス教授は、自身をエンジニアとしてのエコノミストであるとし、研究分野であるマーケットデザインとは、「市場をよりスマートにし、より厚みをもたせ、より早くするためのデザインの発明」であるということを論じました。その研究の実例として、ニューヨークやボストンなどでの9年生(日本の中学3年生)の高校の選考の効率を考えた「受け入れ保留アルゴリズム」や、全国研修医マッチングプログラム、そしてドナー(臓器提供者)と患者のマッチングを改善した「腎臓交換プログラム」などを挙げて人々の生活向上の実現について説明しました。
質疑応答では、池上教授の「どうして経済学を学ぼうと思ったのですか」という質問に対して、ロス氏は、まずはエンジニアとしてオペレーションリサーチを学び始めたところ、どういう風に人が協力し合うのかということに関心を持ったため経済学に転移したのです、と返答。また、学生からは「手術室など実際のフィールドに足を運んで研究に臨んでいるのはどうしてか、またその思いとは」という質問があがり、ロス氏は「市場は書かれていないルールが多く非常に複雑なもので単に読書をするだけでは理解できない。文化に関わるルールが多いので、それに触れて考える必要がある。したがって日本の市場をデザインするのであれば、日本の文化を知る日本人が手掛ける必要がある」と返答され、学生は活力を得ました。
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