本学、地球生命研究所(ELSI)の廣瀬敬所長が第57回藤原賞を受賞し、授賞式が6月17日に行われました。
藤原賞は藤原科学財団によって1959年に創設されました。科学技術の発展に卓越した貢献をした者に与えられる賞で、数学・物理、化学、工学、生物学・農学、医学の分野から毎年2名が選ばれます。
廣瀬所長は、地球深部の高圧高温の状態を実験で再現することで、私たちが実際に見ることは出来ない地球深部のマントル下層およびコアの構成物質の構造、物性、組成を同定し、そのダイナミクスを明らかにしました。
地球は半径6,400km、中心からコア、マントル、地殻と大きく分けて3つの層に分かれています。マントルはさらに4層に分かれており、深さ2,600kmから2,900kmのマントル最深部のコアとの境界には、D''層と呼ばれる層があります。
マントルの他の層は1970年代にどのような物質で出来ているか分かっていましたが、D''層は2000年代に入ってもその姿が明らかになっていませんでした。
廣瀬所長らはD''層の正体の解明を目指し、ダイアモンドアンビルセル装置(写真)とレーザー装置を使い、地球の高圧高温状態を再現する実験を行いました。そして深さ2,600kmに匹敵する125万気圧、温度2,500Kの実現に成功し、D''層が「ポストペロブスカイト」からなることを2004年に世界で初めて発見しました。
この発見からD''層の「ポストペロブスカイト」は層状の結晶構造をとり、これが地球の地震波伝播・マントル対流、自転運動などに重要な影響を及ぼしていることが明らかになりました。
さらに廣瀬所長らは、2010年に地球中心部に匹敵する364万気圧と5,000Kを超える圧力と温度を達成し、内核の主成分である固体鉄の構造を決定することに成功しました。そこから、地球の中心は鉄の原子同士が高密度で結合する六方最密充填と呼ばれる構造であることを突き止めました。
また2014年には、地球コアに大量の水素が存在することを発見しました。これは、地球形成時には現在の海水の80倍の水が存在したことを示唆し、地球誕生のシナリオや水の起源の解明に向けて大きな一歩を踏み出しました。
以上のように、廣瀬所長が地球内部の高圧高温の環境を再現する実験技術を発展させ、地球内部の構造や組成を解明し、そこから地球の起源やダイナミクスの理解に大きく貢献したことが評価され、このたびの受賞となりました。
廣瀬所長のコメント
大変光栄に思います。研究室の仲間、日々サポートしていただいている方々に深く感謝します。これを励みに更に頑張りたいと思っています。
私が所長を務める地球生命研究所では、地球の起源や初期の姿の情報をもとに、生命の起源解明を目指しています。今回の受賞がきっかけとなり、世界中からよい研究者が集まり、地球と生命の起源の解明に向けて、研究がより加速されることを願っています。
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