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東工大グローバル水素エネルギー研究ユニット 第3回公開シンポジウム 開催報告

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東工大グローバル水素エネルギー研究ユニット(以下、GHEU)は、将来の水素利用体系に関する総合的かつ技術的な検討を推進するため、産官学のさまざまな活動を展開しています。

10月16日には、東工大蔵前会館くらまえホールにて今年で3回目となる公開シンポジウムを開催しました。企業の関係者を中心に多くの方が来訪され、大きな会場が一杯になりました。

昨年よりも多い278人が来場し、午後1時30分のスタートから夜の意見交換会まで、将来の「水素社会」の実現に向けて、国内外の水素利用技術の現状と将来展望を共有しました。

シンポジウムは、東京工業大学の三島良直学長のあいさつから始まりました。

三島学長は、水素エネルギーの活用が社会から嘱望されている今、その実現に向けた多角的な研究をGHEUが取り組んでいる先導性を強調しました。

また、コンソーシアムを立ち上げ、国内の多くの企業や研究機関が集まっていることなども評価し、このユニットが順調に成長しているという認識を示しました。

次に、ユニットリーダーである科学技術創成研究院の岡崎健特命教授が登壇し、GHEUの活動と今後の戦略について説明しました。

エンジニアリングの部門で急成長している南洋理工大学(シンガポール)と密な交流をしていることを報告し、このユニットの次のステップとして国際連携に力を入れていく方針を示しました。

また、1月に開かれた第193回国会での施政方針演説の中で安倍晋三首相が具体的な水素利用について言及したことに触れながら、水素社会の実現には水素の量的な寄与が必要であり、水素発電と水素サプライチェーンが重要であると説き、「CO2フリー水素」についての議論も大切であると訴えました。 今後の展開としては、GHEUの活性化やプロジェクトの推進、次プロジェクトの策定、国内外の研究機関や産業界との連携、社会発信や社会貢献、さらなる国際展開など、今後も活動を活発にしていきたいと抱負を語りました。

会場の様子

会場の様子

開会のあいさつをする三島学長
開会のあいさつをする三島学長

GHEUの活動と今後の戦略について説明する岡崎特命教授
GHEUの活動と今後の戦略について説明する岡崎特命教授

今回のシンポジウムでは、広い視点で水素の活用や技術、水素社会を考えていくために3つの招待講演を実施しました。

招待講演1「今後の日本のエネルギー安全保障戦略と水素の役割」

元国際エネルギー機関(IEA)事務局長/笹川平和財団会長 田中伸男氏

今後の石油の価格や天然ガスの位置づけなどを解説しながら、これからの世界のエネルギー地政学における水素の役割について講演しました。

講演する田中氏

講演する田中氏

講演する田中氏

招待講演2「Activities of Hydrogen and Fuel Cell Technology in Singapore and Asia」

Prof. Siew Hwa CHAN, Nanyang Technological University (NTU), Singapore
Co―Director, Energy Research Institute @ NTU
Vice Director, Sino―Singapore International Joint Research Institute

シンガポールの南洋理工大学で水素・燃料電池関連技術のリーダー役を務める一人、チャン・シュウ・ホワ教授が、アジアでの技術動向について、豊富な事例とともに解説しました。

講演する田中氏

講演する田中氏

講演するチャン教授

招待講演3「水素社会の実現に向けた戦略と課題」

経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部
新エネルギーシステム課 課長 山影雅良氏

国の立場から、水素エネルギー利用の検討が必要になる理由や、本格的な水素大量利用に向けての課題、水素利用の飛躍的拡大を図るための方策などについて話しました。

講演する山影氏

講演する山影氏

講演する山影氏

次に、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 水素利用等先導研究開発事業 「トータルシステム導入シナリオ調査研究」中間成果報告があり、産業技術総合研究所の高木英行氏と工藤祐揮氏、エネルギー総合工学研究所の加藤悦史氏、東工大 物質理工学院 応用化学系の伊原学教授と東工大 環境・社会理工学院 技術経営専門職学位課程/イノベーション科学系の梶川裕矢教授が「水素の本格導入に向けたシステム分析」(担当:産総研・エネ総工研)をはじめ、「学理に根ざした技術評価・予測および新技術普及に向けた分析」(担当:東工大)、「技術開発シナリオの作成」(担当:産総研・エネ総工研・東工大)について、現状の成果をそれぞれ発表しました。

「トータルシステム導入シナリオ調査研究」の中間成果報告を行う伊原教授(左)と高木氏(右)

「トータルシステム導入シナリオ調査研究」の中間成果報告を行う伊原教授(左)と高木氏(右)

「トータルシステム導入シナリオ調査研究」の中間成果報告を行う伊原教授(左)と高木氏(右)

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

閉会のあいさつをする益教授
閉会のあいさつをする益教授

最後に、「CO2フリー水素の普及に向けて」と題してパネルディスカッションを開きました。GHEUのユニットリーダーである岡崎特命教授が進行役を務め、この研究ユニットに関わっている企業の方に多く登壇してもらい、水素の大量活用で大きなポイントとなる「CO2フリー水素」について議論しました。

パネリスト

  • 日産自動車株式会社 長谷川卓也氏
    今後、燃料電池をコピー用紙のようにロールトゥロールで製造できるようになれば、原価を大きく下げられるという考えを示しました。

  • 日本大学/水素エネルギー協会会長 西宮伸幸氏
    CO2フリー水素の普及には、燃料電池自動車の優位性を高める必要があるという見解を示しました。

  • 株式会社東芝 山根史之氏
    まず、水素が人々の暮らしの中でどう役立つかを提示し、それが実現した後にCO2フリー水素の普及が可能になるという考えを話しました。

  • 岩谷産業株式会社 宮崎淳氏
    水素エネルギーの需要を増やす努力がCO2フリー水素の普及につながるとし、そのためにはインフラを作っていくことが重要だと訴えました。

  • トヨタ自動車株式会社 濱崎志紀氏
    2050年までに生産工場などの排出CO2ゼロを目指す「トヨタ環境チャレンジ2050」について、現在の状況や努力を説明しました。

  • 産業技術総合研究所 古谷博秀氏
    再生可能エネルギーが完全なCO2フリーでないことを指摘し、全体でCO2排出量を下げて最後にフリー化するという考え方が重要であると説きました。

  • 東京工業大学 梶川裕矢教授
    2012年以降、水素に関して大きな構造変化が起きていて、ブレークスルーの技術開発ができれば、世界的なエネルギー偏在性や産業構造が大きく変わると指摘しました。

閉会のあいさつに立った東工大の益 一哉科学技術創成研究院長は、これからの大学は基礎研究だけでなく、社会実装にも取り組むことが重要で、そこから今までになかった新たな可能性が開かれると語り、このユニットのコンソーシアムに参加している多くの企業と一緒に研究をして、新しい技術開発の循環を生み出してほしいとの期待を寄せました。

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院
グローバル水素エネルギー研究ユニット

Email : ghec@ssr.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3335/3019


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