11月1日、大岡山キャンパス本館の講義室にて、工系学生国際交流基金派遣の募集説明会および工系留学報告会が開催されました。
工学院、物質理工学院、環境・社会理工学院の3学院は、国際性を持った工学を専門とする高度技術者を養成するため、合同で所属学生を海外の大学等に派遣しています。海外で様々な国の研究者や学生と共に研究を行うことで自身の専門性を深め、より広範な先端科学技術・知識を学びながら、異文化に触れることで、学生自身の修学意欲のさらなる向上と国際意識の涵養を図ることをねらいとして学生国際交流プログラムを独自に実施しています。このプログラムは、(1)海外大学との交流協定締結などを通じた学生相互派遣のための環境整備、(2)各種基金等を利用した所属学生の海外派遣支援制度を運営しています。
前半に行われた募集説明会では、工系国際交流委員会主査の竹村次朗准教授(環境・社会理工学院 土木・環境工学系)がプログラムの概要ならびに当日募集開始となった来年度の夏期派遣について説明を行いました。
また、後半には工系留学報告会が行われました。これは、全学・部局間、そして前述の3学院と交流協定のある海外の大学へ今夏に短期留学した学生が、履修対象となっている講義「国際研究研修」の一環として実施されたものです。(要件が合う場合、他の派遣留学プログラム参加者も履修可能です。)
派遣先大学と発表者(計9名)は以下の通りです。(順不同、敬称略)
派遣先大学 |
発表者(所属・学年は発表当時) |
---|---|
アーヘン工科大学(ドイツ) |
山崎星奈(物質理工学院 材料系 修士課程1年) |
オックスフォード大学(イギリス) |
劉依蒙(物質理工学院 応用化学系 修士課程1年) |
ケンブリッジ大学(イギリス) |
鄧湘穎(大学院理工学研究科 電子物理工学専攻 博士後期課程3年) |
松田錬磨(工学院 システム制御系 修士課程2年) |
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清野史康(物質理工学院 材料系 修士課程1年) |
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メルボルン大学(オーストラリア) |
秦裕樹(物質理工学院 応用化学系 博士後期課程2年) |
南洋理工大学(シンガポール) |
小林亮介(物質理工学院 材料系 修士課程1年) |
ドイツ航空宇宙センター(ドイツ) |
江川世輝(物質理工学院 材料系 修士課程2年) |
デンマーク工科大学(デンマーク) |
湯田賢宗(環境・社会理工学院 建築学系 修士課程2年) |
報告会では、留学経験者が留学生活について英語で発表を行いました。以下は、当日の発表および報告書からの抜粋です。
留学経験者のコメント
アーヘン工科大学に留学した物質理工学院 材料系の山崎星奈さん(修士課程1年)
「今回の留学の目的は、海外での研究がどのようなものかを経験することでしたが、実際にドイツで研究生活を送ると、想像していたよりも孤独でつらいものでした。また、自分の英語力のなさを痛感し、無力感を感じることもありました。しかし、このような経験は日本では決してできないことであり、苦しかったことも含めて、海外での研究生活を体験できたことは非常に良かったと思います。それだけでなく、ヨーロッパ諸国への旅行や、ドイツでの日々の生活はとても楽しかったですし、お金に換えられない価値のあるものでした。言葉の違う国で、一人で生活をするのは本当に大変ですが、それを乗り越えたという達成感、充実感は他では得ることのできないものであり、今後も困難を乗り越える大きな力になると思います。」
オックスフォード大学へ留学した 物質理工学院 応用化学系の劉依蒙さん(修士課程1年)
「今回の留学から得られたものは主に2つあります。1つは研究というものへの理解が深まったことです。通常このようなサマープログラムでは、博士課程の学生の手伝いをかねて、指示されたものだけをするのが一般的であると聞いていました。しかし所属研究室は人数が少ないためかもしれませんが、プログラムの最初で研究概要と進み方の案だけを説明され、具体的な進み方は自分で考えなければなりませんでした。2ヵ月という短い期間で、どのぐらい実験を行って、最終的にどういう目的にたどりつけるかを自分で計画するために、博士課程学生に囲まれた環境で、落ち着いて研究テーマに対して責任を持って積極的に文献を探し、実験を考えました。また、実験方法を1から細かく説明してくれる人がいないため、既往の論文を精読し、装置の操作方法を色々な人に尋ねるような努力をしました。操作ミスで失敗したことも数回あり、総体的な実験数が少なかったのですが、自分のペースに合った自主的な研究を体験できて貴重な経験になりました。2つ目は自分に今まで以上に自信を持てるようになったことです。オックスフォード大学のような、世界から学生が集まる大学では、一人ひとりの英語のレベルやアクセントが違っており、自分の発音や文法で恥をかくことはありませんでした。現地の人も外国人と話すことに慣れているため、単語だけ言っても理解してくれる場合が多く、外国人としての立場を意識せずに暮らすことができました。また、所属研究室には中国出身の先輩が1人おり、内向的ではありましたが、実験に励んで研究室生活を楽しんでいる姿をよく見かけました。留学生ということを言い訳にして人と会話することを回避していた自分を反省し、もっと自信をもって心を開いて生活を送ろうと思いました。」
ケンブリッジ大学へ留学した 大学院理工学研究科 電子物理工学専攻の鄧湘穎さん(博士後期課程3年)
「私が所属した研究室のメンバーたちはみんなとても親切で親しみやすく、快く手伝ってくれました。研究以外でも、みんなで学食で昼食を取ったり、食後にコーヒーを飲みに行ったりしました。日常の話題や将来の計画について話したり、実験の進み具合について意見交換をしたりしてコミュニケーションを図る機会になりました。ハウスメイトたちとはMay Bumpsという伝統的なボートレース観戦やボルダリングを体験したり、研究室のメンバーが招待してくれた晩餐会に参加したりしました。ケンブリッジ大学ならではの素晴らしい経験ができ、支援していただきました皆さんに感謝しております。これからは、ケンブリッジ大学との長期的な協働関係を構築し、東工大の科学研究に貢献したいと思っております。」
ケンブリッジ大学に留学した 工学院 システム制御系の松田錬磨さん(修士課程2年)
「この留学では、新しいことに積極的にチャレンジする精神力を養えたと思います。留学に行く前は自分の英語がイギリスの人に伝わるか、無事に海外で一人暮らしをすることができるのか等、不安なことだらけでしたが、周りの人達に支えられながら一つ一つの不安を解消していくことができました。今後も今回身につけた積極性を武器に新たなことに果敢にチャレンジしていきたいと思います。また、現地の学生や先生に親切にしていただき、日本に来ている留学生や外国人の人達を出来る限り手助けしたいという気持ちが強くなりました。また、本留学を通して英語力の向上のみならず様々な文化の違いを実際に体感できました。文化とは、気候・風土・食べ物・言語等様々な要素によって形作られていくものだと思います。その一つ一つを実際に自分の五感で感じられたことは非常に貴重な体験でした。」
ケンブリッジ大学へ留学した 物質理工学院 材料系の清野史康さん(修士課程1年)
「私は帰国子女でもなければ、学部の時に国際関係の科目を積極的に履修していたわけではありませんでした。今回の留学もただ「大学生のうちに海外で学んでみたい」という好奇心のみであり、留学に行くと決めた時も「そういうの興味あったの?」と周りに驚かれました。
学生国際交流プログラムに申し込んだ人たちは、私よりも積極的に英語に触れ、国際的な経験も豊富でした。自分は、おそらく申し込んだ人の中で最も軽い気持ちで参加していたのではないかと思います。最初はそのような人たちを見て、自分は本当に外国に行って大丈夫なのかと渡英当日まで不安を抱いていました。けれど3か月の留学を終えた今、日本では絶対できない経験ばかりで、心の底から行ってよかったと思っています(本当に)。英語はもちろん、世界的なレベルの大学で研究できた経験は本当に勉強になりました。また、日常生活の些細なところでも文化の違いというのも体感できました。最近では技術の発達により、日本にいながら海外の様々な文化に触れることができますが、やはり日本という生まれ育った環境から離れて、実物を見ると感じるものが全く違います。また、その中で一番身についたのは自信ではないかと思います。単身海外にわたって暮らすことは大変ですが、自分の力を存分に発揮する場であるので、やり切った後は達成感がありました。英語が苦手でも、日本語が全く通じない環境なのでいやでも英語を使うようになるのでなんとかなります。「得意になってから行こう」と言っていたらいつまでも行けないので是非行って自分を鍛えてください。そしてもし留学に行くならその国、周辺国の歴史を一通り勉強しておくとより充実した経験ができます。普段はあまり触れないかもしれませんが現地に行けばきっと面白いです。留学は絶対に価値のある経験ができます。お金はかかりますがそれだけの価値はあります。ぜひ留学を通して貴重な体験をしてください!」
メルボルン大学へ留学した 物質理工学院 応用化学系の秦裕樹さん(博士後期課程2年)
「研究、生活、英会話など、すべての面で日本ではできない貴重な経験をすることができました。とりわけ、研究に対する考え方や取り組み方が日本とは大きく異なりました。もっとアグレッシブに研究する必要があると痛感しました。今回の留学プログラムは非常に自由度が高く、また工系国際連携室の方から留学に関して手厚いサポートをしていただきました。この留学プログラムを後輩のみなさんにお勧めするとともに、この場を借りて関係者の方に御礼申し上げます。」
シンガポール南洋理工大学へ留学した 物質理工学院 材料系の小林亮介さん(修士課程1年)
「修士課程1年の夏、数ヵ月の短期留学で懸念される点はインターンに行けないことくらいしかないと思いますので、行く時期としては非常にお勧めです。また、留学先としてシンガポールという選択肢はとても良かったと思っています。アカデミアでは依然として欧米諸国が先導しているものの、ビジネスでは拠点をシンガポールに置いている企業も数多く、国も積極的に優秀な外国人労働者を誘致しています。将来グローバルビジネスに携わることを考えると、アジアの拠点であるシンガポールの文化・雰囲気を実際に体験できたことは今後のキャリアにおいて大きなメリットになると思います。また、シンガポール自体が移民の国であり外国人に対して寛容である上、その多くがアジア人のため、日本人の私でもなじみやすい環境であったことが一番大きかったかもしれません。シンガポールに限らず、アジアの各国は成長著しく非常に刺激的だと思いますので、留学先として欧米だけではなく、アジアに目を向けてみてもいいのではないでしょうか。」
ドイツ航空宇宙センターへ留学した 物質理工学院 材料系の江川世輝さん(修士課程2年)
「研究面では普段とは違ったテーマを与えられため、新しい分野を勉強する良い機会となりました。しかし、それ以上に日本から出て日本語の通じない人々と協力しながら研究を進めていくところに学ぶことが多く、留学した意義があるように思いました。私は中国やタイなどのアジアの国には数回行ったことがあるのですが、ヨーロッパはあまり経験がなく、とても新鮮でした。海外から日本を見るのはとても面白く、今回の留学は良い機会だったと思います。」
デンマーク工科大学(派遣交換留学)へ留学した 環境・社会理工学院 建築学系の湯田賢宗さん(修士課程2年)
「この留学で、再生可能エネルギーの専門知識を習得し、新たなことに挑戦する経験を得たりしました。様々な国の友人もでき、英語も飛躍的に上達したと思います。このように海外に長期間住むという経験はすごく有意義なので、海外留学することを強くお勧めします。日本で経験できないことがたくさんあります。また、日本の良いところや悪いところについても客観的に見ることができました。」
本イベントは、留学プログラムについての理解を深めるとともに、帰国して間もない留学経験者からの新鮮な現地情報や感想に触れることができる機会であったため、本プログラムへの応募を検討している学生も積極的に質問し、意見交換や情報交換が活発に行われた報告会となりました。
夏期派遣は一年の中でも特に人気があります。その理由としては、(1)夏季休暇を利用できるため、本学でのカリキュラムとの調整がしやすい、(2)留学やその準備が就職活動等と両立して進められる、(3)年に1回のみの募集および派遣の対象である“Summer Exchange Research Program(SERP)”が含まれ、ケンブリッジ大学、オックスフォード大学、カリフォルニア大学サンタバーバラ校などの欧米先進大学へ留学できること等が挙げられます。
また、本プログラムは、受入・派遣の双方向プログラムのため、その特徴を生かし、受入留学生との交流イベントも企画・運営されています。今回発表した学生も積極的にそのような機会を利用し、留学に臨みました。
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