11月22日、東工大を支える各構成員のうち総勢207名(学生60名、教員53名、職員66名、執行部・卒業生28名)が大岡山キャンパス生協第一食堂2階コミュニケーション・ラウンジに集まり、「学生・教員・職員・卒業生全員集合! 東工大の未来を語り合う大ワークショップ~2030年に向けた東京工業大学のステートメント『ちがう未来を、見つめていく。』をもとに~」が開催されました。本学でも最大規模となった本ワークショップでは、多様な学内関係者が1つの卓を囲み、東工大の一員として「対等」な立場で参加することを合言葉に、東工大の現在とこれからについて熱く語り合い、大いに盛り上がりました。
多様な立場の構成員がフラットに語り合う
東工大は、大ワークショップの副題ともなっているステートメントを30名規模による計4回のワークショップをもとに、2017年春にまとめました。「ちがう未来を、見つめていく。」というフレーズから始まる“Spirit(スピリット)”、「尖らせる」「共鳴する」「実装する」からなる“Action(アクション)”の2つで構成され、本学の目指す姿を示しています。これをもとに今度はより多くの東工大構成員が、本学の将来について「自分ごと」として関わりを持つこと、また学生・教員・職員・卒業生が一堂に会して現状と未来についてフラットな立場で語り合うことで、新たな出会い・アイデア・エネルギーを生み出すことを目的にしてこの大規模ワークショップを実施しました。
東工大の強みと課題、理想の東工大像とは
冒頭に、大ワークショップの発起人である岡田清理事・副学長(企画・人事・広報担当)から開会の挨拶があり、国立大学が置かれている現状の中で本学が持っている価値について語り合うことの重要性、その対話の場に2030年の社会を担う若者が加わることの価値など、今回のワークショップにかける想いが語られました。
リベラルアーツ研究教育院の中野民夫教授によるファシリテートのもと、最初に参加者はホームグループで自己紹介を行い、自身が普段どのような立場で、何に興味を持っているかなどをメンバーと共有しました。そして「2030年に向けた東京工業大学のステートメント」を輪読した後、自身が気になるフレーズについて語り合いました。ワークショップ参加の心得を歌詞にした「輪になって座ろう(えんたくんの歌)」を全員で歌って場が和むと、東工大のより良い未来のために以下の3つのテーマについて考えや想いを語り合いました。
- ラウンド1: それぞれの東工大との関わりの中で、“東工大ってやっぱりいいね(凄いね)!”と思えるのは、いつどんな時?あるいは“ちょっとなあ・・・”と思うのは?
- ラウンド2: 理想の東工大ってどんなところ?ユニークな世界やトップクラスって何だろう?どんな「ちがう未来」を見つめているの?
- ラウンド3: そんな最高に「イケてる東工大」になるための課題は?対策は?そして自分にできること、自分が見つめたい「ちがう未来」は?
対話促進ツール「えんたくん※」を囲み少人数のグループで輪となり、テーマ毎に席替えをしました。学生の大学生活・自身の将来にかける想い、教員の教育・研究活動に対する想い、職員の大学運営に携わることへの想い、執行部の描く将来像、卒業生として今後の東工大に期待することなど、大学に対する多様な見方がそれぞれの立場の垣根を越え、混じり合いながら対話が重ねられました。
- ※
- えんたくんとは、円型の段ボールでできた1枚の板であり、それを参加者の膝に乗せながら自由にアイデアを書き込む対話促進ツールです。
3つのテーマを終えると最初のグループ(ホームグループ)に戻り、対話を積み重ねて感じたこと、発見したことを書き出し、グループ内で自由に考えを深め合いました。そして本日のまとめとして、理想の東工大像を実現するにはどのような「ちがう未来」が必要になるのか話し合い、より良い東工大に向けて、次の一歩として自身のやりたいこと・できることを「私のちがう未来の種」というアイデアシートに個々でまとめました。
さらにこの「未来の種」を成長させるため、“自身のアイデアを紹介したい”、または“発表し共感できる仲間を募りたい”という参加者のための発表タイムを設けました。ここでは20名から申し出があり、産業界のどんな難問にもスパッと応える「東工大科学技術Hospital(ホスピタル)」の設立や、教職員・学生を交えたサークルの設立などさまざまな提案が行われ、気になった提案については自身の連絡先を書いた付箋を貼って“共鳴”の意志を示しました。最後に三島良直学長から本日の終了の挨拶があった後、参加者の中で最も若い第7類の近藤恭平さん(学士課程1年)の掛け声で締めくくりました。ワークショップ終了後、仲間を募りたい参加者を中心に分科会が行われ、各々の思いを話し合い仲間同士の連絡先等を交換して次のアクションにつなげました。
大ワークショップ成功の裏には、学生・教職員から選ばれた実行委員会の活躍がありました。参加者200名を目標に準備段階から各構成員が関わり、身近なところからワークショップの輪を広げていってほしいという中野教授の思いのもと、学士課程から博士後期課程までの学生有志、リベラルアーツ研究教育院の伊藤亜紗准教授、学務部や国際部などの職員計19名による委員会が組織されました。実行委員会は9月に発足後、定期的に行われ、200名全員がワークショップの進行に取り残されず参加できるためにはどのようにしたら良いかを考え、立場の異なる参加者が意見を出し合い、対話を深めるためのテーマ選び、各委員の役割など綿密に打ち合わせを行いました。また、大ワークショップの開催を学内全体に広げるため、特製のステッカーの作成や図書館掲示などで周知しました。
ワークショップに来るのが初めてで最初は様子を伺っていた参加者もいましたが、同じ職場にいながらも普段話す機会の少ない構成員との出会いを楽しみ、利害なく和やかに話しているうちに打ち解けてきて、終わってみれば大盛況という大ワークショップになりました。
参加者からは「大勢の人とフラットな立場でにぎやかに語り合え楽しかった」、「同じ東工大の一員でありながら、このような機会でないと会うことのない方々と話ができたことが貴重だった」などの感想が寄せられました。また、「私のちがう未来の種」には「来年のワークショップ実行委員を募る」という提案もあり、今後さらに東工大のなかに対話の文化が根付いていくことが期待される1日となりました。
学長からのメッセージ
2030年に創立150周年を迎えようとする本学は、「世界トップ10に入るリサーチユニバーシティ」を目標に掲げています。その目標を実現するために、昨年春から進めている大学改革と同時に学生・教職員・執行部が大学の目指すビジョンを語り合い、共有することが大事だと考えています。そこで2016年秋から2017年新春にかけて、計4回、延べ123名の学生・教職員・執行部が、シニア・中堅・若手に分かれて「東工大の未来」について話し合ってもらいました。そして、この動きは今年9月の全学ワークショップ「2030年に向けての研究企画について」の実施、今回の「東工大の未来を語り合う大ワークショップ」の開催につながりました。学生・教職員・役員に加えて卒業生の総勢207名が一堂に会し、「これからの東工大を良くしていくにはどうしたらよいか」を熱っぽく語り合ってくれたことを本当に嬉しく思います。こんなに年齢・立場が違っていても共鳴し合える場がつくれる東工大を本当に頼もしく感じています。このようなワークショップが日常風景となるまで広めていき、本学の文化になっていくことを願っています。
リベラルアーツ研究教育院 ―理工系の知識を社会へつなぐ―
2016年4月に発足したリベラルアーツ研究教育院について紹介します。
ちがう未来を、見つめていく。
役員・教職員・学生の参加によるワークショップを通じて、2030年に向けた東京工業大学のステートメント(Tokyo Tech 2030)を策定しました。