2017年11月28日~2018年2月6日の10週間、メルボルン大学(オーストラリア)を中心とした本学協定校との連携による国際化の推進を目的として、ウィンタープログラム(Tokyo Tech Winter Program 2017-2018)を開催しました。
前年度のウィンタープログラムへの参加学生は10名でしたが、第2回目となる今年度は、学士課程4年生から修士課程の学生まで、メルボルン大学、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア)、ミュンヘン工科大学(ドイツ)の3大学から14名が参加しました。
開講式後に行われたウェルカムランチには、参加学生の受け入れ教員、所属研究室から選出された学生チューター、ホームビジット受け入れ学生らが多数参加し、プログラムは初日からとても和気あいあいとした雰囲気で始まりました。
研究中心プログラム
約10週間にわたるプログラム期間、参加学生14名は受け入れ教員の指導の下、本学での研究活動に取り組みました。研究室での研究活動のかたわら、参加学生は必修科目「ジャパン スタディーズ(Japan Studies)」での講義や企業・研究所見学に参加しました。
受入研究室からのメッセージ
青柳研究室
受入担当教員: 工学院 電気電子系 青柳貴洋准教授
参加学生:メルボルン大学 メリガン・ハンナ・クレアさん
私の研究室では環境電磁工学や無線通信工学の研究を行っており、特に最近は、情報通信技術により医療やヘルスケアを支援するためのネットワークやアプリケーション技術の研究を行っています。
今回、ウインタープログラムで本研究室に来られたハンナさんは、様々な生体情報を無線センサにより取得、収集するための無線ボディエリアネットワーク分野の研究を希望されていました。ハンナさんは東工大で研究を進めることにとても意欲的で、研究テーマに関しても複数の提案をいただきましたが、3ヵ月という短い研究期間から、モバイルで呼吸音を測定するIoTセンサ端末の開発とその信号処理をテーマとしていただきました。回路と基板の設計から半田付けによる製作まで行い、試作端末を完成させました。
短い滞在期間の中で研究を進めることはもちろん、研究室でのゼミ、研究報告会にも全て参加していただいたほか、研究室旅行にも参加して日本人の学生さん達と交流していただいたことは研究室にとってもよい刺激になったと思います。
寺野研究室
受入担当教員: 情報理工学院 情報工学系 寺野 隆雄教授
参加学生:ミュンヘン工科大学 ニケル・マヌエル・アレクサンダーさん
GEARにようこそ。我々の研究は、最近、急速に注目を集めている進化計算と人工知能のトピックを含んでいます。実際、マニュ君(ニケルさんのニックネーム)の興味も人工知能、特に、深層学習(ディープラーニング)に関するものでした。
このテーマは研究室のメンバーを興奮させるものです。それゆえ、マニュ君と研究室のメンバーとの間でかわされる研究と日本での生活に関する会話と討論は、スムーズですばらしく、また充実したものでした。彼がこのようなコースに参加するのは大阪大学についで2度目であり、また、今回、渋谷でたまたま当時の日本の友人に会ったのは驚きであったと話していました。研究でも日常生活でも、こんな経験をするには世界は狭すぎるのです。次の機会には、また、例の納豆レストランにみんなで行けることを望んでいます。
日本企業・研究所訪問
2017年12月6日には必修科目ジャパン スタディーズの一環で、JXTGエネルギー株式会社の根岸製油所(横浜)を見学しました。担当者から企業概要や製油プロセス、石油製品について説明がなされている間、参加学生はメモを取りながら真剣に聞いていました。また、持続可能社会の実現に向けた石油企業による環境保全への取組みについて説明を受け、参加学生は企業が負うべき社会的責任について理解を深めました。活発な質疑がなされた後には、広大な敷地内をバスで移動し、ETBE製造装置、残油流動接触分解装置、水素製造装置、非常時の延焼予防用の水幕装置を間近で見学しながら説明を受けました。
12月12日には、物質理工学院の吉川史郎准教授、メルボルン大学から来学中のキャサリン・サットン特任講師の引率の下、昨年に引き続き産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)を訪問しました。水素キャリアによるエネルギー貯蔵・利用技術や、風力・地熱発電の効率化、超薄型軽量ソーラーパネルをめぐる研究開発現場の見学を通して、JXTG見学時とは異なる観点から日本の先端的なエネルギー研究や、そうした研究の背景にある日本が置かれたエネルギー事業について理解を深めました。この日、福島は今冬初の積雪に見舞われるというハプニングがありましたが、昼食のためサービスエリアに立ち寄った際には、これまで雪景色を目にしたことのない多くの参加学生が外ではしゃぐ姿が見られました。
課外活動・体験企画
研究活動や必修科目の他にも、以下の体験企画を通して、参加学生は日本文化を味わい、日本人学生との交流を楽しみました。
サバイバルジャパニーズ
リベラルアーツ研究教育院の協力を得て、日本語レベル初級者の学生を対象とする日本語クラス「サバイバル ジャパニーズ」を提供しました。
ネットワーキングイベント
2018年春にオーストラリア超短期派遣および語学研修モナシュプログラムにてメルボルンを訪問予定の本学学生11名とウィンタープログラム参加学生10名が、ネットワーキングイベントに参加し、互いに交流を深めました。「日本とオーストラリア間の交流を活性化するためにできること」をテーマに、えんたくん※1によるグループワークを実施しました。始めのうちは、日本人学生にはぎこちない様子がみられましたが、イベントも中盤になるとキャサリン・サットン特任講師のファシリテーション※2にも助けられ、双方の学生から面白いアイディアが飛び交うようになりました。最後はグループ毎にまとめた議論内容を発表しました。イベント終了後には連絡先を交換し合い、3月の訪問時の再会を約束する学生達の様子が見られました。
- ※1
- 円型の段ボールでできた1枚の板であり、それを参加者の膝に乗せながら自由にアイデアを書き込む対話促進ツール。
- ※2
- 学習者主体の参加型の学び合いの場を創り、プロセスを大事にしながら円滑かつ効率的にワークショップを進行させていくこと。
ホームビジット
参加学生の日本文化体験、および本学学生との学生交流を目的としたホームビジットを企画しました。第3回目となるホームビジットは、本学学生9名とそのご家族、本学職員3名の協力により、11名の参加学生が日本の家庭での生活を体験しました。昨年度のウィンタープログラムから試行的に開始したホームビジットでは、これまでに合計50名の参加学生が家庭訪問を行いました。
参加した留学生からは、「日本家庭を体験する機会を得ることができ、とても楽しかった。是非継続してほしい」とのコメントが毎回寄せられています。
今回は、第1回ホームビジット受け入れ家庭として協力した本学学生からのメッセージを紹介します。
ホームビジットに協力した本学学生からのメッセージ
中村俊吾さん(生命理工学部 生命科学 学士課程4年(受け入れ当時3年)、2018~2019 ミュンヘン工科大学派遣留学予定)
ニューサウスウェールズ大学からの留学生 シュ・ワンさんとロビー・フェリクシアナス・ガナワンさんの2名を受け入れました。普段から国際交流に興味があったので、留学生と会話する機会が出来て良かったです。やはり海外から東工大にくる留学生は彼らの国でトップクラスの成績であったり、非常に高い研究へのモチベーションと国際感覚があります。ホームビジットは、少人数な会なので彼らと深くお話することが出来る点もいいところだと思いました。僕の父は英語を喋ることが出来るので、一緒に会話に入って楽しんでいました。またあまり英語が得意でない母も留学生と日本ドラマの話をしてアニー(ワンさんのニックネーム)と盛り上がっていました。家に人を招くことはほとんどないのですが、特別なイベントとして協力して楽しんでくれました。また両親が、息子が英語で話している姿を見て嬉しそうにしていたのを感じることができ、僕自身としても頑張って留学生を受け入れて良かったと思いました。
研究成果発表会
プログラム最終日には、参加学生14名がそれぞれ10分間の研究成果発表を行い、活発な質疑応答が交わされました。参加学生の所属研究室からは、チューター学生をはじめとする多くの研究室メンバーが応援に駆けつけてくれました。
本プログラムは、「スーパーグローバル大学創成支援事業(Top University Global Project)」による取組みとして開始しました。
「スーパーグローバル創成支援事業」は、2015年に文部科学省が開始したプログラムで、日本の高等教育の国際競争力の向上を目的に、海外の卓越した大学との連携や大学改革により徹底した国際化を進める、世界レベルの教育研究を行うトップ大学や国際化を牽引するグローバル大学に対し、制度改革と組み合わせて重点支援を行うことを目的としています。
お問い合わせ先
東京工業大学 学務部 留学生交流課
Tokyo Tech Winter Program
E-mail : winter.program@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3785 / 3786