「皆さんの『ヘンリー五世指数』はどのくらいでしょう」。コーディネーターであるリベラルアーツ研究教育院の谷岡健彦教授の問いかけで、ワークショップ参加メンバーの自己紹介がスタートしました。
2018年2月8日~3月8日に大岡山キャンパス西9号館で開催された全5回のワークショップは、昨年の『マクベス』に続く「声に出してシェイクスピア」シリーズの第2弾、史劇編としては第1作にあたります。このシリーズは、レクチャーで学び、自ら声に出して読み、さらに演じるという一連の流れで作品の魅力に迫っていくものです。
今回は、東工大生、教職員、近隣住民を含め39名の参加者が、演劇経験の有無、年齢、性別を問わず、歴史劇『ヘンリー五世』を存分に楽しみました。第1回から第4回にかけては、リベラルアーツ研究教育院の小泉勇人准教授によるシェイクスピアの映画化をめぐってのレクチャーと、俳優の下総源太朗氏のナビゲートによるワークショップの2部編成で行われ、最終回となる第5回は本ワークショップの集大成として発表会を開催しました。
各回のレクチャーでは、『ヘンリー五世』の位置づけ、映画化「オリヴィエ版」と「ブラナー版」の二つの比較などについて考察しました。また、声の強弱やリズム感の指導を受けながら英語での朗読も行われ、参加者から喜ばれました。
また、4チームに分かれてのワークショップでは、原作から抜粋されたテキストを、映画の予告編のようなインパクトのある作品を目指し、10分ほどに再構成していきました。主軸としたのは、ヘンリー五世が仲間を鼓舞するシーンで有名な「クリスピアン・スピーチ」です。下総氏のアドバイスによって平板だった芝居が活き活きとしたものに変化し、参加者は芝居の演出の面白さを実感したようです。
そして、最終回の、聴衆を招いての発表会では、チームごとのユニークな演出による作品が上演されました。いずれも、わずか4回のワークショップで作られたものとは思えない完成度で、講師からも聴衆からも高い評価を得ました。
発表会が終わった後には、参加者から「あまり馴染みのない作品でしたが、想像以上に個性的な登場人物が多数登場し、参加メンバーのキャラクターをうまく活かせました」「やはり、声に出して演ずるための作品ですね」「開催時間以外にも連絡を取り、脚本に手を入れるのは大変でしたが、楽しかったです」といった感想を聞くことができました。
下総氏は2018年5月17日(木)からの新国立劇場での『ヘンリー五世』の出演が決定しています。また、5月28日(月)には東工大でこの上演作品をめぐるシンポジウムを開催する予定です。
「声に出してシェイクスピア」シリーズは、第3弾の検討が始まりました。リベラルアーツ研究教育院が提供する、東工大の伝統あるシェイクスピア学が新たな展開を迎えます。今後のワークショップにも、ぜひご期待下さい。