4月19日、東京工業大学附属図書館2階の学習スペースにて、東工大の支援のもと、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)※1プログラムの海外交流事業の一環として数学のワークショップが開催されました。
本ワークショップは、高大接続教育※2の授業を能動的学習(アクティブ・ラーニング)方式で行うだけでなく、さらにそれを英語で行うという先進的な試みです。
4回目の開催となる本年度は、タイ国プリンセス・チュラポーン・サイエンス・カレッジ・チェンライ校から12名、および東京学芸大学附属高校から13名、合計25名の高校生が参加し、本学 理学院 数学系の山田光太郎教授によるワークショップ「レッツ カウント(Let's count)!」が行われました。
まず「数学」とはなにかを問うことから始まります。数学の研究とは、誰も知らない「定理」を見つけるということです。たくさんの定理や事実のなかで、日本とタイの高校生たちはどのようなものを知っているのかを振り返り、高校で学ぶ数学は1,000年以上も前に先人たちが積み上げてきたものであることを確認しました。
そして本題である「ものを数えること」に移ります。山田教授はりんごとデコポンを取り出してテーブルの上に置き、「テーブルの上にはいくつあるか」と問いました。すると「全部で12個」、「6個のりんごと6個のデコポン」、「2種類の果物」など、答えが分かれました。このように、問の答えは「何を同じものとみなすか」によって変わるのです。
続いて、座標平面上の円について考えました。座標平面の上に円は無限個存在しますが、そのうちのひとつを決定するにはどのような情報を与えればよいのでしょうか。同じテーブルの生徒同士で議論し、中心と半径を与えればよいという結論を導きました。中心は座標を表す2つのパラメータ、半径はひとつのパラメータを与えればよく、円をひとつに決定するために必要な情報は3つのパラメータであるということがわかりました。すなわち、座標平面上の円を数えるには、3次元の情報が必要であるということです。
さらに、その中で合同な円を同じものとみなすのに必要な情報は何次元か、相似な円を同じものとみなすと必要な情報は何次元か、みんなで考えました。再び高校生の議論は白熱し、それぞれ1次元、0次元という答えにたどり着きました。
ついで、話題は円から三角形に移行します。座標平面の上の三角形を決定するには何次元の情報が必要か、その中で合同な三角形を同じものとみなすと何次元か、相似な三角形を同じものとみなすと何次元か、みんなで議論しました。問題設定が複雑になったため、円のときよりも高校生たちは頭を悩ませていましたが、知恵を出し合って議論を進めてゆくうちに、それぞれ答えを導くことに成功しました。三角形を決定するには3つの頂点を決めればよく、各頂点はその座標を表す2つのパラメータで決定するため、全部で6次元の情報が必要です。
また、合同な三角形や相似な三角形を特定するための情報は、中学校で習った三角形の合同条件や相似条件により、それぞれ3次元や2次元となります。この3や2という数は、三角形を決定する6次元の情報から、平行移動や回転を表す3次元の情報、また縮尺を決定する1次元の情報を引くことで得られることを確認しました。議論の末に苦労して答えを発見したとき、みんな「なるほど!」と納得して楽しそうです。四角形になったらパラメーターはいくつになるんだろう、と発想はどんどん広がります。
「ものを数える」とは「何を同じものとみなすか」であることを、しっかり学べた90分間でした。最後に三角形や四角形であふれる図書館内を英語で案内し、高校生たちは青空のもとへ飛び出して行きました。