今年度最初の東工大コンサートシリーズは、4月17日にディジタル多目的ホールで「プーランクの夜会:東工大への招待」と題して行われました。一般にも公開されており、学外からの参加者も含めて300人のホールがほぼ満員になりました。
若い才能の紹介と大学ならではの企画
このシリーズは、科学者を触発し続けてきた芸術を愉しむ会であり、実際に研究開発を行っている理工系の教員が企画・運営を行っているところに特徴があります。
また、キャンパスコンサートは、ポピュラーな作品をとりあげる場合が多いのですが、企画・運営側では、東工大を1つの文化の発信拠点とするために、若い才能の紹介と大学だからこそできる尖がった内容を重視しています。過去にはメシアンの「世の終わりのための四重奏曲」やペンデレッキの作品など現代音楽の傑作、そして、新作の初演も行っています。
今回の演奏会ではプーランクを特集しました。一般には知名度が低い作曲家ですが、20世紀前半にパリで活躍した作曲家です。モーツァルトの再来と評されたように、親しみやすく美しいメロディや踊りたくなるような軽快なリズムが特徴です。20世紀前半のパリを象徴する音楽を今回まとめて聴くことで、その価値を知ってもらいたいと考え、数少ない貸譜しかなく幻の作品である「城への招待」を演奏しました。その中に含まれる「ためらいのワルツの動機」などは、プーランクの粋や美的センスの最上のものです。
当日のプログラム
フランシス・プーランクの作品
- 愛の小径(フルート、ピアノ)FP106b(1940)
- オーボエ、ファゴット、ピアノのためのトリオ FP43(1926)
- ホルンとピアノのためのエレジー FP168(1957)
- フルート・ソナタ FP164(1956-57)
- 城への招待(クラリネット、ヴァイオリン、ピアノ)FP138(1947)
- ヴァイオリンソナタ「アラン・ロルカの思い出」から第2楽章 FP119(1942-43 rev. 49)
- 六重奏曲(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、ピアノ)FP100(1932)
出演者プロフィール
演奏は、東京藝術大学で同時期に学んだ仲間でもあり、現在はそれぞれがソリストや著名オーケストラの団員として活躍中の20代半ばの若者たちに任せました。
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黒岩航紀(ピアノ)
神奈川県出身。東京藝術大学附属高校から藝大へ進学し、首席で卒業。藝大大学院修士課程を修了。第11回東京音楽コンクールピアノ部門第1位及び聴衆賞受賞。同年第84回日本音楽コンクールピアノ部門第1位、第4回いしかわ国際ピアノコンクール第1位など受賞多数。国内外のオーケストラと共演している。
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伊藤優里(フルート)
山梨県甲府市出身。東京藝術大学卒業後、修士課程入学後、リヨン地方音楽院に1年間留学、現在、修士課程在籍中、ぱんだウインドオーケストラ団員。第19回日本クラシック音楽コンクール全国大会第2位(最高位)など、受賞多数。
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佐竹真登(オーボエ)
埼玉県出身。東京藝術大学附属高校から藝大へ進学し、修士課程を修了。在学中に神奈川フィル契約団員を経て日本フィル団員となる。第85回日本音楽コンクール・オーボエ部門2位。
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矢野健太(ホルン)
東京都出身。東京藝術大学卒業。現在、ソロの他、読響をはじめ、多数のプロオーケストラに出演中。
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大内秀介(ファゴット)
京都市出身。東京藝術大学卒業および同大学院修士課程修了。在学中に日本フィル団員となる。
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照沼夢輝(クラリネット)
茨城県東海村出身。東京藝術大学を卒業。在学中に日本フィル団員となる。日本クラシック音楽コンクール第2位など。
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岸本萌乃加(ヴァイオリン)
岡山県倉敷市出身。東京藝術大学附属高校から藝大へ進学し首席で卒業。現在、修士課程に在学中。第9回東京音楽コンクール第1位。第86回日本音楽コンクール第3位など受賞多数。
次回開催
次回は、10月15日(月)と10月29日(月)に開催予定です。両日とも17時30分から東工大現役生および卒業生(アマチュアオーケストラ界のレジェンドたち)の演奏会、19時からプロを招聘した演奏会です。15日はリードを使う木管楽器のアンサンブル「トリオ・ダンシュ」、29日は若手ヴァイオリニスト小林美樹さんのリサイタルです。詳細は後日、本学HPにて発表しますので、トップページのイベント新着情報をご確認下さい。
今後も、海外の著名演奏家やマスタークラスの方をお呼びし、東工大コンサートシリーズを盛り上げていきます。お楽しみに!