クリスマス・レクチャー日本公演2018を、9月15日、16日に大岡山キャンパス西5号館のレクチャーシアターで開催しました。午前と午後に1回ずつ計4回行われ、子どもや一般の参加者ら各回約200名、延べ約800名が出席しました。
「クリスマス・レクチャー」は、英国王立科学研究所(The Royal Institution of Great Britain。以下、RI)が青少年向けに開催するイベントで、190年以上続く人気の科学実験講座です。このクリスマス・レクチャーを日本で再現するイベントは1990年から始まり、東工大では2015年から毎年開かれ、今回は4回目です。英国側主催はRI、日本側主催は読売新聞社、共催東工大、後援駐日英国大使館・文部科学省で開催されました。
東工大は、2016年度からスタートした教育改革の取り組みの一つとして、新入生を対象とした「科学・技術の最前線」や「科学・技術の創造プロセス」などの実演・実験付き授業を開講しています。これらの授業はクリスマス・レクチャーを手本としており、レクチャーシアターを最大限活用した臨場感あふれる個性的な授業を展開しています。
今回のクリスマス・レクチャーは2017年にロンドンで開催されたレクチャーを日本向けにアレンジしたものです。講師は認知神経科学が専門のロンドン大学教授ソフィー・スコット博士で、本学工学院 機械系の齊藤卓志准教授が司会を務めました。「生き物のコミュニケーション(The Language of Life)」と題し、スコット博士が様々な生き物のコミュニケーションとその仕組みについて紹介しました。東工大からも工学院 システム制御系の倉林大輔教授がフェロモンの研究とそれを応用した探索ロボットについて講演し、約1時間半の充実したレクチャーとなりました。
9月12日にRIのスタッフ2名が来日して物品等を運び込み、公演に使われる機器の準備・調整が始まりました。東工大の学生スタッフ8名が素早く準備を整えました。
公演を翌日に控えた9月14日には講師のスコット博士を迎え、打ち合わせおよびリハーサルを行いました。午後の最終リハーサル終了後には、スコット博士、RIの職員、本学、読売新聞社、英国大使館等の関係者が出席した歓迎レセプションが開かれ、参加者全員で親交を深めながら、翌日からの公演に備えました。
公演1回目は、一般の参加者に加え、東工大関係者にも100席の優先席が設けられました。各回の公演開始前には、司会による注意事項やボランティア(講師の呼びかけによりステージで講師の実験に協力する参加者)への要望などがあり、軽妙な司会進行により、場が盛り上がりました。公演に先立ち、1回目は益一哉学長から、2回目は英国大使館から、そして3回目と4回目は科学技術創成研究院の大竹尚登教授からそれぞれ挨拶がありました。
大きな拍手で迎えられたスコット博士は笑顔と話術で観客を魅了し、「生物はどうやってコミュニケーションしているんだろう」と語りかけ、大人から子どもまで誰もが熱心に公演に見入っていました。本公演はすべて英語で行われましたが、一人ひとりに同時通訳の機械が配られ、英語が分からない人でも安心して楽しめるよう配慮がなされました。同時通訳の設備が整っていることはレクチャーシアターの特徴の一つです。また、登壇する子どもボランティアにはスコット博士がやさしく話しかけ、緊張気味の子どもたちを上手にリラックスさせていました。なかにはスコット先生に直接英語で受け答えをする子どももいました。
今回の公演では、最初にコオロギとマダスカルゴキブリが登場し、コミュニケーションの手段としての音がどのように伝わるか、その仕組みが紹介されました。中でも共鳴については、振り子の実験も行い、詳しいメカニズムにも触れました。次に、においがコミュニケーションの手段として紹介されました。空気砲を使って、ひどいにおいと、良いにおいの煙が発射され、観客の鼻孔までとどけられましたが、特にひどいにおいがもたらす顔の表情に、会場は笑いに包まれました。倉林教授からは、においの一つであるフェロモンを分泌する虫としてカイコガが紹介され、工学院 システム制御系 システム制御コースの足達哲也さん(修士課程2年)が実際にメスの出すフェロモンにオスが集まる様子を子供達と一緒に実験しました。倉林先生らがこのしくみをロボットに応用し、災害に役立てる研究をしていることが紹介されました。さらに光、身振り、顔の表情など種々のコミュニケーションの手段が紹介され、その実験には、多くの子どもたちが積極的にボランティアとして参加してくれました。
公演の終了後には、東工大学生スタッフらが全員登壇し、観客の大きな拍手に包まれました。最後にスコット先生から子どもたちへ、「夢をもって、あきらめずに自分の道を信じて研究に取り組む科学者になってほしい」という熱いメッセージが伝えられました。公演終了後もスコット博士は質問やサインの要望に喜んで応えてくれたので、子どもたちにとっては素晴らしい思い出となったのではないでしょうか。このレクチャーをきっかけに、子どもたちが将来科学者を目指し、東工大で学ぶことを祈ります。
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