2018年11月27日から2019年2月5日まで、オセアニア地域から本学協定校等との連携による国際化の推進を目的として、ウィンタープログラム(Tokyo Tech Winter Program 2018)を開催しました。第3回目となる今年度は、オーストラリアのメルボルン大学、オーストラリア国立大学、シドニー大学、ニューサウスウェールズ大学の計4大学から18名の学生が参加しました。
研究中心プログラム
約10週間にわたるプログラム期間中、参加学生18名は受け入れ教員の指導の下、本学での研究活動に取り組みました。研究室での研究活動のかたわら、必修科目「ジャパン スタディーズ(Japan Studies)」で、近代日本の科学技術史に関する講義や企業・研究所見学に参加しました。
受入研究室からのメッセージ
中島研究室
- 参加学生:メルボルン大学 クラーク・キャサリンさん
- 受入担当教員:工学院 システム制御系 中島求教授
中島教授から
本研究室ではスポーツ工学、バイオメカニクス、福祉工学の研究を行っています。キャサリンさんの専門は生体医工学で、元々の興味は神経工学でした。本研究室ではパラアスリート支援のトレーニング用具の開発を行っていたため、その用具の設計をテーマとして提案したところ大変興味を示して、やってくれることになりました。具体的には、ちょうど彼女と入れ替わりに夏にYSEP交換留学を終えたフランスからの学生が担当していた、片前腕切断スイマー用のパドルの改良設計に取り組んでもらいました。キャサリンさんは物事を理解して吸収するのが驚くぐらい早い学生さんでした。私が1個やってごらんと言えば10個かそれ以上やってくるようなタイプでした。そのため、彼女の研究テーマはこれまでの蓄積があり理解する必要があることが多くありましたが、彼女はあっというまに吸収して自分のものにしてしまいました。さらに、自分で新たなメカニズムを提案し、その有効性を検証するシミュレーションを多数走らせました。その結果、非常にチャレンジングな課題であったにも関わらず、最終的な設計案の形として実を結ぶまでになりました。一方で、キャサリンさんはオンとオフの切り替えが上手で、日本での旅行もとても楽しんでいたようです。そんな彼女の積極的姿勢が研究室の他の学生にも良い刺激を与えてくれました。彼女の滞在に感謝したいと思います。
上田研究室
- 参加学生:ニューサウスウェールズ大学 シュテインマン・アレクシスさん
- 受入担当教員:物質理工学院材料系 上田光敏 准教授
上田准教授から
上田研究室では、高温における耐熱鋼の環境劣化に関する研究を行っています。耐熱鋼は、使用環境において表面に保護性酸化皮膜が生成するように設計されていますが、水蒸気を含む環境においては表面に保護性酸化皮膜が生成せず、劣化してしまう場合があります。アレクシス君には、耐熱鋼のモデル合金を用いた初期水蒸気酸化実験を行い、保護性酸化皮膜の生成挙動を実験的に明らかにしてもらいました。約2か月半という短い期間でしたが、試料作製から酸化実験、その後の試料の解析まで、この分野における一連の研究の流れを学んでもらえたかと思います。アレクシス君は、非常に熱心にこの研究テーマに取り組んでくれました。また、研究室のゼミ等にも参加してもらい、研究室の学生とも交流してもらえたことは、当研究室にとってもよい刺激となりました。当研究室での活動がアレクシス君にとって有意義なものになってくれれば幸いです。
日本企業・研究所訪問
12月5日には必修科目ジャパン スタディーズの一環で、JXTGエネルギー株式会社の中央技術研究所(横浜)を見学しました。参加学生は4グループに分かれて、カレイドスクリーンや水素出荷設備センター等を見学しながら、担当者から研究開発についての説明を受けました。12月12日には、物質理工学院の吉川史郎准教授と松本秀行准教授の引率で、前年に引き続き産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)を訪問しました。水素キャリアによるエネルギー貯蔵・利用技術や、風力・地熱発電の効率化、超薄型軽量ソーラーパネルをめぐる研究開発現場の見学を通して、日本の先端的なエネルギー研究のみならず、そうした研究が推進される日本独特の背景事情についての理解も深めました。この日の福島は積雪に見舞われましたが、昼食で立ち寄った猪苗代湖では、雪景色に溶け込むような白鳥の姿に喜ぶ参加学生の姿が見られました。
日本文化体験
11月28日には茶道部の活動に参加し、1月16日は合気道部で心身統一合氣道会、小原英雄師範の指導の下、合気道体験を行いました。また、1月23日は、3月にオーストラリア超短期派遣プログラムに参加する本学学生の事前学習に参加し、学生との交流を行いました。ほかにもタンデム―パートナー(語学学習)やホームビジットプログラムで、本学学生と共に日本文化に触れあいながら様々な交流を行いました。
1月25日には西1号館ラウンジで、学生支援センター国際交流支援部門が主催するひな祭りイベントに参加しました。同様に、1月29日に開催された「どら焼き教室」でも、参加学生が楽しむ様子が見られました。
研究成果発表
プログラム最終日には、参加した18名全員がポスター研究成果発表を行い、活発な質疑応答が交わされました。研究室メンバーが多数応援に駆けつけてくれました。
本プログラムは、「スーパーグローバル大学創成支援事業(Top University Global Project)」による取組みとして開始しました。
「スーパーグローバル創成支援事業」は、2015年に文部科学省が開始したプログラムで、日本の高等教育の国際競争力の向上を目的に、海外の卓越した大学との連携や大学改革により徹底した国際化を進める、世界レベルの教育研究を行うトップ大学や国際化を牽引するグローバル大学に対し、制度改革と組み合わせて重点支援を行うことを目的としています。
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