50年にわたってNHK大河ドラマの時代(建築)考証を担当してきた本学 平井聖名誉教授の町並みスケッチなどを集めた展覧会「平井聖 町並みスケッチ展 in(イン) 東工大百年記念館」(第2回は2019年2月28日(木)まで開催中)と、その関連イベントとして2月9日に開催された「描く!“東工大流”スケッチ講座」の様子をご紹介します。
平井聖 町並みスケッチ展in東工大百年記念館
「平井聖 町並みスケッチ展 in 東工大百年記念館」は、全国をまわって城郭や町並みの修復・整備を指導してきた建築史家の平井名誉教授が、その傍ら朱印帳に長年描きためてきた各地の町並みや建築、旅行先での食事や庭の草花などのスケッチを展示しています。
第1回 1月7日 - 1月16日
主催:冬夏会(環境・社会理工学院 建築学系同窓会)
場所:大岡山キャンパス 百年記念館1階T-POT(ティーポット)
スケッチに描かれた地域は、北海道(函館、根室)から東北地方(山形、喜多方)、関東地方(安中、多摩、田町)、北陸地方(金沢、高岡、朝倉一乗谷)、中国地方(倉敷、竹原、岩国)、九州地方(福岡、長崎、熊本)と全国にわたっています。それぞれの地域に残る古い町並みが平井名誉教授の目によってパノラマの風景として捉えられ、それが折りたたみ式の朱印帳に連続立面図として描かれています。朱印帳に描かれた町並みスケッチは、最も初期のもの(金沢ひがし茶屋街)が1982年の制作で、多くは1980年代に描かれています。これらのスケッチは、当時の平井名誉教授の歴史観が投影された研究資料であるとともに、30年以上を経た現在では、失われた建物の貴重な記録的価値も持ち始めています。
スケッチの多くはロットリング(製図用のペン)で描かれ、淡く美しい着彩は日本画用の岩絵の具を水に溶いたものだそうです(携帯用絵の具セットは展覧会でも展示しました)。スケッチの描かれた朱印帳は、たたむと12 ㎝×18 ㎝と持ち歩くのに便利なサイズですが、広げると全長が2.5 mにもなります。
展示品には、町並みをパノラマ風景として描いたものの他に、日記風に、当時校長を務めていた東工大附属高校の修学旅行の訪問先やそこでの食事メニューを記録したものもありました。場所と時間が一体化した物語を水平方向に読み進む体験は、まるで絵巻物の現代版のような印象を受けました。
展示方法はこうした朱印帳の特性に合わせ、横長テーブルをひたすらつなげてその上にロール和紙を敷き、朱印帳を広げて展示した上から透明のロールフィルムをかぶせて保護するという、極めてシンプルなものでした。
展示品はその他、東工大の学内誌の表紙やテレホンカード、絵はがきセットなどに提供された、記録的価値のある大岡山キャンパスのアクソメ図※、平井名誉教授の専門である江戸城本丸御殿や近世の武家住宅に関する手描きの復元図、歴史家として批判的な提案を込めて描かれた東京駅の復元計画案 (コンペ佳作)の原画なども展示されました。本展の企画・展示レイアウトは環境・社会理工学院 建築学系の山﨑鯛介准教授が担当しました。
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- アクソメ図とは、対象物を立体的に描く図法の一種
期間中には、展覧会を主催した環境・社会理工学院建築学系の同窓会である冬夏会の新年会が百年記念館内で開かれたため、平井名誉教授の授業を受けた多くの卒業生があらためて平井名誉教授のスケッチ力に感銘を受けていました。また、学内・学外から多くの方が来館し、じっくりと時間をかけてスケッチを鑑賞していました。
第2回 1月28日 - 2月28日
主催:東京工業大学博物館
場所:大岡山キャンパス 百年記念館 2階企画展示室
第1回の展示から一部展示内容を変えて、2月28日まで開催しています。第1回で展示していた朱印帳に描かれた町並みやそこで食べた食事のスケッチを始め、レストランのコースターや紙エプロンといった身近なものに描かれたスケッチを展示しています。また、現在は表参道ヒルズに一部外観を残した同潤会青山アパートのスケッチなど、姿を変える町並みのありし日の姿も紹介しています。
「描く!“東工大流”スケッチ講座」
2月9日には関連イベントとして、目黒区教育委員会連携講座「描く!“東工大流”スケッチ講座―見て、描いて、感じる 建築スケッチに触れよう―」が目黒区在住・在学・在勤者を対象として開催されました。参加者は、江戸時代の絵巻物の資料を見ながら平井名誉教授のレクチャーを聞いたり、スケッチの基礎である「線」の描き方を体験し、様々な側面からスケッチを通した建築の面白さを実感していました。
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- 2月22日16:15 本文中に一部誤りがあったため、修正しました。