東京工業大学の理工系学生能力発見・開発プロジェクトは創造性の育成と国際的リーダーの育成を目的として、本学学生が主体となってシンポジウム開催などに取り組んでいます。その一環として、1月17日に第13回シンポジウム「移民と宗教~宗教の異なる人の共存~」を大岡山キャンパスで開催しました。学生から社会人までさまざまな所属や年齢の方約39名が来場し、宗教に興味と関心を持っていることがうかがえました。
シンポジウムの様子
2018年12月に出入国管理法の改正が成立し、多くの外国人が日本へやってくることが予想されます。外国人や異なる宗教を持った人々とどう接していくべきなのかを考える機会として、本学 リベラルアーツ研究教育院の弓山達也教授と大正大学の星野壮専任講師をパネリストとしてシンポジウムを行いました。
問題の所在を整理し星野氏に問いかけをする弓山教授
弓山教授からの問いを受けて講演する星野氏
シンポジウムの冒頭、弓山教授が仕事のために来日している外国人とそのご家族や、留学生などの日本に居住する外国人が増加した背景や、外国人が日本でどのように生活し、宗教とどのように関わっているのか、と質問を投げかけました。これに対する返答として、僧侶でもある星野氏による講演が行われました。星野氏は、在日ブラジル人を例にとり、彼らに対応した街や店を紹介し、彼らの意識について話しました。「多くの在日ブラジル人は、日本に来てから日本とブラジル文化との差異を感じることで自分が『ブラジル人』であると強く認識するようになる。宗教活動が自分のアイデンティティの剥奪体験の埋め合わせだったり対抗アイデンティティの表れとなったりするのではないか」と語りました。また、「日本人は無宗教だと言われているが、これから外国人が増えていくと予想される現代において、宗教についてリテラシーを高め、多文化に対してより寛容になる必要がある」と指摘しました。
参加者とのディスカッションでは、日本ではあまり宗教的でないという自覚を持つ人が多い中で、異なる宗教間での交流などの話題を含め、あらゆる角度から宗教について議論が行われました。
パネルディスカッションの様子
シンポジウム司会を務めた後藤美奈さん(生命理工学院 生命理工学系 学士課程3年)のコメント
司会を担当した後藤さん
今回のシンポジウムは宗教をテーマに行われました。私自身、1年目に宗教学を文系科目として選択し学んだことから、宗教に非常に関心がありました。宗教そのものを理解するだけでなく、宗教を通して他者を知ることが自己を知ることに繋がるのだと学びました。宗教にかかわらず、他の文化を学ぶことが相互理解へと進み、自らを豊かにすると考えるようになりました。
理工系学生能力発見・開発プロジェクトとは
創造性の育成と国際的リーダーの育成を目的として本学が主催する、本学の学士課程学生を対象としたプロジェクトです。シンポジウムのテーマ立案からパネリストへの出演交渉、開催当日の司会や運営など、全ての活動を学士課程学生が主体となって行っています。現在の取り組みはシンポジウムの開催、特別講義の開催、国内学会の見学の3つが中心です。創造性、国際性、リーダーシップをはじめ、企画力、交渉力、コミュニケーション力といった参加学生の総合的な人間力を養います。
2018年度には、特別企画「東工大生と日本科学未来館を巡る会」(8月20日、24日)の開催、今回のシンポジウム「移民と宗教~宗教の異なる人の共存」(1月17日)の開催、日本植物学会、日本生化学会、日本脳科学会への参加(第3~4クォーター)への参加を実施しました。
2019年度はまず、2019年6月26日(水)に認知神経科学に関する特別講義を開催する予定です。
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