東京工業大学グローバル理工人育成コースでは、毎年の夏休みと春休みに10日程度の留学を含む超短期海外派遣プログラムを実施しています。本派遣はグローバル理工人育成コースのプログラムの一環であり、将来の長期留学やアカデミックキャリア、また海外勤務の参考となるよう、海外の大学機関やさまざまな施設、そして企業や研究所などを訪問し、海外での実践的能力を育成するものです。
2019年2月~3月の春休みには、世界7ヵ国に向けた8プログラムを通して、合計86人の東工大生が日本から世界に飛び立ちました。
派遣国またはプログラム名 |
訪問先の大学機関・施設・企業など |
派遣期間(2019年) |
参加者人数 |
---|---|---|---|
イギリス |
ヨーク大学、インペリアル・カレッジ・ロンドン、ロンドン大学クイーンメリー校、Hitachi Rail Europe(日立レールヨーロッパ)、国立物理研究所(NPL)など |
3月4日 - 3月15日 |
12人 |
シンガポール・マレーシア |
シンガポール/南洋理工大学、シンガポール工科・デザイン大学、横河エンジニアリング・アジア マレーシア/マレーシア科学大学、SONY EMCS Malaysia (ソニーイーエムシーエス マレーシア)、花王ペナングループなど |
2月20日 - 3月3日 |
14人 |
インド |
インド工科大学マドラス校、L&T construction、Renault Nissan Automotive India Private Limitedなど |
3月3日 - 3月12日 |
14人 |
オーストラリア |
メルボルン大学など |
3月7日 - 3月17日 |
10人 |
フィリピン |
デラサール大学、フィリピン工科大学、国際協力機構(JICA)など |
2月28日 - 3月9日 |
11人 |
アメリカ西海岸 |
ワシントン大学、Boeing(ボーイング)工場、マイクロソフト コーポレーション、 Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)など |
2月20日 - 3月1日 |
14人 |
ジョージア工科大学・リーダーシッププログラム(アメリカ) |
ジョージア工科大学、CNN、コカ・コーラ社など |
3月5日 - 3月15日 |
8人 |
学生企画型(フィリピン) |
デラサール大学など |
2月19日 - 2月26日 |
3人 |
訪問先の大学機関では研究室を訪問し、実験装置や研究成果の紹介を受けました。海外大学の研究室に入室するのはどの参加学生にとっても初めての経験であるため、学生は熱心に質問をし、日本での研究環境との相違について理解を深めました。また、講義を聴講したり、東工大生のために特別に用意された講義に参加したりするなど、海外大学の授業を体験しました。
さらに訪問大学では、現地学生との交流の場が設けられ、アクティビティを通して両国の学生が意気投合する様子が見られました。プログラム外の時間も一緒に過ごし、キャンパスライフや将来について語り合うなど、良い友情関係を築く機会を得られたようです。
また企業訪問では、グローバル企業の本社、日本企業の海外拠点や工場を見学しました。事業説明を受けた後、その地で働く社員の方々との交流を深めました。世界をリードする技術、企業ビジョン、またグローバルにおけるキャリアパスや身につけるべきスキルなどを理解し、大きな刺激や学びを得ました。
プログラム参加学生による報告
イギリスでのホームステイ 優しいホストファミリーに支えられて
工学部 経営システム工学科 Sさん 学士課程4年
特に多くのメンバーが一番良かった体験として挙げているのは、イギリスに到着した日から5日間に渡るヨークでのホームステイです。英語力の向上を目指す中で、日本語が通じる相手が誰も存在せず、かつ会話の頻度が非常に多くなるホームステイは非常に有意義なものでした。
私がお世話になったホストファミリーはお父さん、13歳の息子、10歳の息子の3人家族でした。私は英語力に不安があったものの、お父さんはゆっくり分かりやすく話してくれ会話を順調に進めることができました。大学の行き帰りも行動を共にして、買い物や料理、テレビ鑑賞も一緒に行うことで、コミュニケーションの時間が多くとれ、意識的に英語を使うように努力しました。自分の英語が伝わらないときは、違う言い回しにすることで解決でき、英語力に対する自信がつきました。英語力に不安を感じていると、英語を使うことに消極的になってしまうので、“英語で言いたいことを伝える努力”そして“自信”がついたことは大きな収穫であると感じています。
また語学以外の側面では、イギリス文化を肌で感じることが出来たことが良かったです。イギリスと日本というバックグラウンドが全く異なる文化に成り立った考え方を、否定せずに尊重し合うことで、より実りのある会話ができたと思います。考えが異なってもそれを尊重し合う大切さを、ホームステイを通して強く感じました。
インドの成長を支える、真面目で親切な国民性を知る
第7類 Uさん、学士課程1年
インドで働く日本人駐在員の方々によると、現地社員の方々は真面目で親切な人が多いそうです。これは私もインド工科大学マドラス校(ITTM)で感じたことです。
授業中は、多くの学生が積極的に発言していました。研究室訪問でも、作業をしていた学生が手を止めて、何をしているのか丁寧に説明をしてくれました。IITMの廊下には学問を奨励する格言の数々が額縁に飾られていて、学生たちが真剣に学びに来ている様子が感じ取れました。工場で働く従業員やIITMの学生を見て、彼らのような真面目な人々がインドの経済成長の要なのだろうと感じました。
ジョージア工科大学で、リーダーシップについて徹底的に学ぶ
生命理工学部 生命科学科 Kさん、学士課程4年
アメリカの多様性と自由な文化、そこでリーダーシップについて学んだ経験は、本当にやりたいことは何かを考え直す機会をくれました。日本は、特に身内の恥や失敗に不寛容で、世間体や同調圧力も非常に強い傾向があるので、人目を基準とする行動規範にどうしても支配されがちです。失敗に厳しい社会で失敗を恐れずに!という方が無理というものです。
でも失敗を恐れて安全なことしかしなかったら、失敗によって学ぶことのできる本質的な教訓はいつまでたっても学べません。経験値は上がらないし、ものの見方を豊かにすることもできません。それなら、リスクを分割して小さくし、失敗を恐れずに、何にでも挑戦したらよいのではないか。ジョージア工科大学での研修を通じてそんなことに気づきました。
小さいステップに分けたなら失敗したところでそんなに失うものもなく、失敗から学んで改善していくことができます。これはこのプログラムのリーダーシップの教科書に書かれていたことです。プライベートにおいても、さまざまなことにチャレンジすれば交友関係も視野もぐっと広がります。
不安を感じている暇があったら、もっと身軽になって、手を動かし、頭を使い、新しい知識、ものの見方、スキルなど身につけられるものは何でも身につけた方がずっと楽しい人生になるのではないか、と思いました。
グローバル理工人育成コースとは
グローバル理工人育成コースは、世界でリーダーシップを発揮できる人材を育成することを目的として開設され、2013年度~2016年度は学士課程の学生のみを対象としていました。コース設置初年度に入学した学生が修士課程に進学する2017年度から、対象を修士課程、専門職学位課程の学生にまで広げ、初級、中級、上級の3つの段階的なコースで構成しています。
修士課程まで対象を広げた背景として、教育改革により「学修一貫」の教育課程を開始し、修士課程修了までに国際的な活動をすることを強く推奨していること、また、本学学士課程の学生の約9割が修士課程に進学することが挙げられます。本コースは、「国際基礎力」「国際実践力」「国際協働力」を段階的に発展させる国際性涵養に特化した教育カリキュラムです。専門性を基礎としたアイデンティティー・知識・経験・技術力を基軸とし、多様性を理解し、倫理観を持って、グローバル社会の未知な課題に対応できる「科学・技術の力で世界に貢献する人材」の育成を目的としています。
2016年度には1,000名を超え、2019年5月時点では所属生総数が2,133名(うち学士課程1667名、修士課程・専門職学位課程466名)となり、学士課程の学生の約3人に1人が本コー スに所属しています。
グローバル理工人育成コースの特徴
本コースの特徴は、将来国際的に活躍したいと希望する学生に対し、留学経験の提供に加えて、アクティブラーニング型の講義等の受講や、自身の専門性と社会を関連付け、視野を拡大する科目の履修、実践的な英語力を強化する支援等を通じ、総合的なカリキュラムを提供していることです。
本コースの所属生は、大きく2つのタイプに分けられます。1つは、国際的・グローバルな活動への希望や必要性を感じているがまだ具体的ではなく、本コースの活動や所属生・留学生との交流を通じその目的や学生時代にやるべきことを明確にする学生です。もう1つは、国際的・グローバルな活動について、長期留学、海外への就職、海外での研究、国際機関での勤務など明確な目的を持ち、本コースを自身の将来計画の準備として位置づける学生です。
本コースは、双方のタイプの学生にさまざまな学習・活動の場を提供しています。
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