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「未来年表」創りに向けて始動 「Team Imagine 会合」を開催

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東工大未来社会DESIGN機構(以下、DLab)は、2018年9月に発足した新しい組織です。大学が設置した組織としては珍しく社会への貢献を第1の目的として掲げ、「豊かな未来社会像を学内外の多様な人材と共にデザインし、描いた未来へ至る道筋を提示、共有することで、広く社会に貢献すること」を活動目標としています。

DLabではその発足前から、人々が望むような未来社会像の提示を目指し、様々な専門性を持つ方々を学外からも構成員として迎え入れ、「そもそも人々が望むような未来とは何か」「どのように提示すればわかりやすいか」など、答えのない議論を積み重ねてきました。しかし、まだ誰も見たことのない未来を、その実現に向けた道筋を示しつつわかりやすく提示するという課題は、構成員たちの予想よりはるかに困難なものでした。それでも2018年度の活動により、東工大ならではの「東工大未来年表(仮称)」を作成し、そこから未来社会像を創出するという計画を立て、取組を開始できるところまで漕ぎつけました。

DLab最新動向

まさに新たな時代の幕開けともなる今年度の活動の第一歩として、DLabは4月26日、東工大大岡山キャンパス百年記念館にて学外構成員を含めたミーティング「Team Imagine(チームイマジン)会合」を開催しました。Team Imagineは、学外有識者と学内メンバーが幅広い知見から議論し、豊かな未来社会を構想する場です。

4月の会合では「東工大未来年表(仮称)」作成のため、高校生や大学生を交えたワークショップをもっと頻繁に開催してはどうか、年表作りをワークショップにして外部の人たちの知恵を取り入れてはどうかなど、学内外双方の構成員から多くの意見が出ました。さらに、本学の研究にどのように展開していくかといった、提示する未来社会像の実現を見据えた議論も交わされ、今年度の活動計画に大きく関わる会合となりました。

DLabからどんな「東工大未来年表(仮称)」が生まれるのか、さらにそこからどんな未来社会像が創出されるのか、今後もDLabの活動にご注目ください。

DLab構成員に聞く「DLabってどんなところ?」

人々が望む未来社会像を多様な視点で議論していくため、DLabには学内外から様々な経歴を持つ構成員が集まっています。なぜDLabの活動に参加することになったのか、今後の活動にどのような期待を持っているのかインタビューしました。構成員の紹介とともに、それぞれが思い描くDLabの姿をご紹介します。(肩書はインタビュー当時のもの)

高校生の無垢な勇気が、未来の扉を叩く

DLab Team Imagine所属 杢野純子さん
株式会社 円谷プロダクション 執行役員 マーケティング本部長、本学卒業生

1984年東京工業大学 理学部 情報科学科卒業。横河ヒューレット・パッカード株式会社(現 日本ヒューレット・パッカード株式会社)でシステムエンジニアとして勤務後、ワシントン大学(米国)でMBA(経営学修士)を取得。帰国後、アーサー・D・リトル・ジャパン株式会社でコンサルタントとして、主にハイテク、IT関連企業の経営戦略立案に従事。株式会社ポケモン、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社で新規事業立ち上げ、デジタルマーケティング、CRM(顧客管理システム)を担当。現在は株式会社円谷プロダクションでマーケティング全般の担当者。

DLab Team Imagine所属 杢野純子さん
DLab Team Imagine所属 杢野純子さん

DLabに参加したのは、東工大のOB・OG会である蔵前工業会で講演をさせていただくうちに、「今度、DLabというプロジェクトが立ち上がるので参加しませんか?」とお誘いいただいたのがきっかけ。佐藤勲機構長からの「まだ何も決まっていない」との言葉がすっかり気に入りました。未来は「何も決まっていない」からこそ未来ですから。

東工大のユニークな先生方が集まり、外部からは私を含め異色の経歴のスペシャリストたちが顔を出していました。しかも女性が多い。私が学生の時の東工大の女性比率は2%でしたので、隔世の感があります。

私たちの最初のミッションは「何をやるべきか」「どんな未来を提示するのか」を決めること。2018年10月28日のキックオフイベントでは、10代から80代まで、若い学生さんと大学の教員や企業の役員が混ざり合い、お互い遠慮せず「未来はこうあってほしい」と自由に意見を述べました。とりわけ一番若い高校生たちが最初に手をあげて発言した、あの素直な力をDLabに取り込みたい。もっともっと学内の現役学生たちが参加しやすいように、大学構内でカジュアルにワークショップやイベントを開き、たまたま通りかかった学生たちが、「おや、面白そうだな」「ちょっと顔を出してみよう」「私も混ぜて」と参加したくなるような、ベンチャーが立ち上がるような雰囲気のあるプロジェクトにしたいですね。

若者たちが「楽しい!」と感じながら、何も決まっていない未来を自らの手で試行錯誤しながらつくっていくように誘う。そして彼らが、お祭りのようなムーブメントを起こして、周囲が巻き込まれていく。全部を決め込んで作っていくことだけではなく、若い人たちの勇気を少しだけ引き出すことも、重要な未来デザインではないか。マーケティングの立場から、クリエイターたちと仕事をしてきた経験からそんなことを思います。

理系と文系の垣根を超えれば、未来が見える

DLab Team Imagine所属 倉持隆雄さん
国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター センター長代理

1977年東京大学 理学部 生物化学科卒業、1979年東京大学 大学院理学系研究科 生物化学専門課程修士課程修了。同年科学技術庁計画局計画課へ入庁。研究開発局宇宙国際課長、独立行政法人理化学研究所理事・次世代スーパーコンピュータ開発実施本部副本部長・X線自由電子レーザー計画推進本部長、文部科学省大臣官房審議官(研究振興局担当)、同省研究振興局長、同省国際統括官などを歴任し、2012年5月より内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)として科学技術の振興に尽力。2015年より現職。

DLab Team Imagine所属 倉持隆雄さん
DLab Team Imagine所属 倉持隆雄さん

1979年に科学技術庁に入庁以来、40年にわたって日本の科学技術を振興する仕事に就いてきました。20世紀後半の高度成長期は、「いい研究をすれば、いい技術を開発すれば、必ず報われ国も豊かになる」とプロダクトアウト志向が強く、研究者も技術者も専門領域に閉じこもりがちでしたが、それでも十分に社会の要請に応えることができていました。

ところが、経済成長が終わり、インターネットが発達し、AI(人工知能)をはじめ次世代の科学技術が普及するようになった21世紀、「いい研究をしていればよかった」という時代は終わり、研究者も技術者も、己が作り出す未来の科学技術の意味や意義について、自覚する必要が出てきました。2018年、DLabのプロジェクトに参加したのは、ちょうどそんな頃でした。

日本の大学教育は理系と文系の知性が協業するチャンスが存外ありませんでした。大きな力を持つ科学技術は、人間を幸せにも不幸にもします。持続可能な未来を志向するには、科学技術と人間の関係を真剣に考えなければいけない。DLabでは、理系の先生と文系の先生が一緒に人類の未来を考え、共に「未来」をデザインするという野心的な試みが動き出していたのに感銘を受けました。

様々な人たちが混ざって、科学技術を通じて未来を考える場を大学内にたくさん用意してほしいな、と思います。私も理系出身だからよくわかりますが、実験や研究に没頭する学生たちにとって、大学のキャンパスそのものが小さな社会です。この小さな社会に外部の人たちがどんどん加わり、意見を交わす。単なるプロダクトアウトに終わらない、より創造的な研究が生まれるのではないか、と思います。DLabの活動を通して、人々がより素敵に生きるための科学技術を生み出すことができる研究者や技術者が、東工大から羽ばたいてほしいですね。

過去とケタ違いのダイバーシティが未来を創る

DLab Team Imagine所属 林千晶さん
株式会社ロフトワーク 共同創業者 代表取締役

早稲田大学 商学部、ボストン大学(米国)大学院ジャーナリズム学科卒業。花王株式会社を経て、2000年に株式会社ロフトワークを起業。ウェブデザイン、ビジネスデザイン、コミュニティデザイン、空間デザインなど、手がけるプロジェクトは年間200件を超える。「FabCafe(ファブカフェ)」「MTRL(マテリアル)」「AWRD(アワード)」などを運営し、マサチューセッツ工科大学(以下、MIT。米国)メディアラボ所長補佐、官民共同事業体「株式会社飛騨の森でクマは踊る」代表取締役社長も務める。

DLab Team Imagine所属 林千晶さん
DLab Team Imagine所属 林千晶さん

東工大に関しては、日本の理工系大学のトップに君臨していて、頭のよい男の子、女の子たちがAIの話をものすごいスピードでしていて、隣にいても何を話しているかちっともわからない、というすごい偏見を持っていたのですが、DLabのメンバーになり、昨年10月のキックオフイベントに参加して、そのイメージはふっとびました。

日本の大学は理系=縦軸、文系=横軸に分かれていて、通常この縦軸と横軸は交わらない。ましてや東工大のような理工系大学は縦軸=理系しかない、そう思っていたのですが、大岡山キャンパスにお邪魔すると理系=縦軸の中に文系=横軸が、いい具合に混ざりつつある、ということに気づきました。連想したのは、私自身が所長補佐を務めているMITメディアラボのことでした。AI、建築、脳、ソーシャル…、20の多岐にわたるジャンルを率いる研究者と企業とが混ざり合って、新しいものが次々と誕生する。あの自由さ、あのクリエイティブ力を、私はDLabを通じて触れた東工大に感じました。

次に求められるのは具体的なアウトプットです。そこで重要となる参加者は、企業と現役の大学生たちです。今、若い人たちと話をすると、価値観が大きく変わっている、と感じます。企業は地球や社会の持続可能性そのものを商品やサービスの核に位置付けるべきではないか、と考えているのです。10年以内に企業には、サステイナブルで社会に対してプラスの価値を生むことが求められるようになります。となると、ものづくりに強い日本の企業には、次の時代のリーダーに返り咲くチャンスが訪れる。だからこそ、DLabと東工大に私は期待したいのです。マネーゲームではない、持続可能なものづくりの規範を示してほしいのです。そしてその牽引役としてぜひ現役学生たちをプロジェクトに引き込んでほしい。

さらにジェンダーや国籍も混ぜてほしい。東工大の学生の男女比率は、9対1とうかがいました。MITは、55対45。ほぼ1対1です。意識しないと、ジェンダーや国籍のバイアスは克服できない。AO入試や推薦入試などを駆使して、3年以内に女子学生比率を30%まで引き上げたら、東工大から、そして学生たちが参加するようになったDLabから、明るい未来を創造するプロジェクトが生まれてくると思います。日本一の理工系大学である東工大が、理系と文系の垣根を外した次世代型の教育研究機関になると、ここから未来を担うすごい人たちがたくさん巣立つ。そんなことを考えています。

お問い合わせ先

総務部企画・評価課総合企画グループ

E-mail : kik.sog@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2011


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