科学技術創成研究院基礎研究機構の広域基礎研究塾は7月18日、大岡山キャンパス百年記念館において未来社会DESIGN機構(以下、DLab)と共催で「未来社会と自身の研究との繋がりを考えるワークショップ」を開催しました。
基礎研究機構は、最先端研究領域を開拓し、世界の研究ハブの地位を維持・発展させるために必須な若手研究者を育成する場として、科学技術創成研究院に設置されました。世界をリードする最先端研究分野で顕著な業績を有する傑出した研究者が塾長に就任した「専門基礎研究塾」と、本学の全ての新任の若手研究者が塾生として3ヶ月間研鑽を行う「広域基礎研究塾」(以下、広域塾)から構成されています。
DLabは「人々が望む未来社会とは何か」を東工大と社会の皆さんが一緒になって考えデザインするための組織で、2018年9月に発足しました。東工大の教職員、学生、卒業生、さらには学外者も参加したキックオフイベントやワークショップなどで議論を重ねています。2020年の年明けには未来を俯瞰できる装置としての「東工大未来年表(仮称)」と東工大が考える豊かな未来社会像を発信する予定です。DLabのワークショップでは、キックオフイベントや研究者のワークショップなどで出たアイデアを基に作成した「未来要素」のカードを見ながら意見を交わします。KJ法(ケージェイ法。多種多様な情報を効率良く整理し、その過程を通じて新たなアイデアの創出や本質的問題の特定を行う手法)を用いてカードを整理して、「未来のシナリオ」として仮説を組み立てます。
今回のワークショップでは、広域塾の塾生15人がDLabと同様の方法を用い、「未来要素」から「未来のシナリオ」を作成することで、自身の研究内容と未来社会との繋がりについて新たな気づきを得るとともに、チーム毎に分かれて共同作業を行うことで、俯瞰力、想像力、他者と協働する力を強めるのが狙いです。
テーマを「極限(宇宙、地底・海洋、スピードなど)」「職業と産業」「教育と大学」の3つに絞って未来要素を分類し、テーマ毎にチームに分かれて議論をしました。はじめに「未来要素」のカード内容をメンバーで共有しました。カードの意味することや可能性について意見を交換し、新しいアイデアや意見をふせん紙に書いてカードに貼っていきます。1枚のふせん紙に1つの情報というルールのため、議論が白熱したチームではカードに何枚ものふせん紙が重なり、ほとんど隠れてしまうほどでした。30枚前後のカード内容を30分間で共有するというハードなスケジュールでしたが、どのチームも集中して全てのカードに目を通し、議論を深めていました。
次にKJ法で未来要素を整理して未来のシナリオを作成し、チーム毎に発表を行って作成されたシナリオを全体で共有しました。自分の研究分野と離れたテーマであっても、普段の研究で得られた視点を基に分析するなど、研究者ならではの発想が随所にみられました。たとえば、「教育と大学」チームでは「生活を豊かにするシンクロトロン学習」というシナリオを導きだしました。シンクロトロンは加速器の一種です。発表時には「どこがシンクロトロンなのか」との質問もありましたが、「大学の中、社会、大学の外と円形加速器のように学習が加速していく」との答えに笑いが起き、終始リラックスした雰囲気のワークショップとなりました。
今回のワークショップは参加者全員が理工系の研究者ということで、これまでのDLabでのワークショップとは異なり、研究者ならではの発想や視点に基づく未来のシナリオが出来上がりました。今回作成されたシナリオはDLabの活動にもフィードバックされる予定です。広域塾にとってもDLabにとっても実りのあるワークショップとなりました。
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