東京工業大学の学生が東南アジアに滞在し、アジア各国の学生と交流し議論を深めるTokyo Tech-AYSEAS(東工大・アジア理工系学生派遣交流プログラム)が8月27日から9月6日まで、インドネシアで開かれました。今年は、バンドン工科大学(インドネシア)がホスト大学となり、東工大生11名に、バンドン工科大学、ガジャマダ大学(以上インドネシア)、デラサール大学(フィリピン)、キングモンクット工科大学ラカバン校(タイ)、ハノイ工科大学(ベトナム)からの参加学生13名が加わり、参加者は5か国から計24名となりました。
プログラム概要
Tokyo Tech-AYSEASは、東工大生が東南アジアの国に赴き、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナム等現地・近隣諸国の大学生とともに、施設見学、ディスカッションを行う10日間の海外派遣プログラムです。インターカルチュラルコミュニケーションを通して、急速な発展段階にあるASEAN各国のダイナミズムを体感します。
AYSEASはAsia Young Scientist and Engineer Advanced Study Programの略語です。
インドネシアで開かれたAYSEAS 2019では、学生たちは先ず首都ジャカルタでアジアの大都市の活気を肌で感じたあと、学園都市バンドンに移り、涼しい気候の下、様々な活動に取り組みました。現地の日系企業やインドネシア企業、ODA事業の建設現場等を見学し、経済成長が続いているインドネシアの現状や、ASEAN諸国と日本との関係について学びました。
毎日行われるグループディスカッションでは、訪問先で得た知見に基づき、経済成長と格差、健康・医療と人口過多、技術移転の功罪、技術革新と国際競争、インドネシアの農業等、それぞれの国が抱える問題とその改善策について意見を交わし、最終日にプレゼンテーションを行いました。
休日には、インドネシア特産のコーヒー「コピ・ルアック」の製造所を見学したり、インドネシアの伝統楽器「アンクルン」のショーを鑑賞したりしました。他にも、参加学生5ヶ国の文化を紹介する文化交流会を行い、東南アジアの国々の歴史・文化への理解を深めました。10日間寝食を共にした仲間とは、国籍・文化・宗教の違いを超えて信頼関係を築き、強い絆を感じつつ現地を後にしました。
10月16日に、本学において帰国報告会を実施し、現地で行ったプレゼンテーションをさらに発展させ、本プログラムの成果として発表しました。その後、水本哲弥理事・副学長(教育担当)より、東工大の参加者全員に修了証書が授与されました。
スケジュール
6月 - 7月 |
国内学習(本学教員及び外部講師による講義、現地文化学習、荏原製作所藤沢工場見学、訪問先事前調査及びプレゼンテーション) |
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8月27日(火) |
インドネシアへ出発、顔合わせ会 |
8月28日(水) |
ノムラ・リサーチ・インスティテュート・インドネシア事業説明 GnBアクセラレータ事業説明、起業家によるシンポジウム MPPプロジェクト(高層ビル)建設現場見学 |
8月29日(木) |
鉄道でバンドンへ移動 バンドン工科大学にて開講式、キャンパスツアー |
8月30日(金) |
ケムコ・ハラパン・ヌサンタラ(ブレーキ部品)工場見学 味の素インドネシア工場見学 |
8月31日(土) |
コピ・ルアック製造所、水上マーケット見学 |
9月1日(日) |
アンクルン村見学 |
9月2日(月) |
文化交流会 |
9月3日(火) |
パティンバン港開発事業(アクセス道路・新港)現場見学 |
9月4日(水) |
アストラ・ホンダ・モーター工場見学 海外協定校学生向け留学説明会 |
9月5日(木) |
最終プレゼンテーション、閉会式 |
9月6日(金) |
日本へ帰国 |
10月16日(水) |
帰国報告会 |
AYSEAS 2019参加大学
日本 : 東京工業大学
インドネシア : バンドン工科大学(ホスト大学)、ガジャマダ大学
タイ : キングモンクット工科大学ラカバン校
フィリピン : デラサール大学
ベトナム : ハノイ工科大学
参加学生の体験談
多々見理緒さん(生命理工学院 学士課程1年)
大学初めての夏休みをどう過ごそうか、そう考えているときにこのTokyo-Tech AYSEASプログラムに出会いました。英語力の向上はもちろん、視野を広げ海外の友人も作りたい、そんな思いから参加を決めました。AYSEASは、ホスト大学のキャンパスツアー、企業訪問、工場見学、ディスカッション、プレゼンテーションなど、盛りだくさんの内容が短期間にぎゅっと詰まったプログラムでした。今回、いろいろな方からお話を伺うことができ、とても貴重な経験になりました。インドネシアをはじめとする参加した国内外の学生達は皆とてもフレンドリーかつ個性的でした。おかげで何気ない会話もはずみ、一緒に過ごすうちに緊張がほぐれて、自然と英語力が身についてきたと思います。
海外の学生達とのディスカッションでは文化、立場、考え方の違いを感じ、とても刺激を受けました。また、私がインドネシアについて調べてわかっていたつもりのことも、異なる立場から見れば違うのだということを身をもって感じました。最終日のプレゼンテーションではチームごとに内容だけでなく、中には発表方法にもオリジナリティーがあるものがあり、魅せる見せ方についての新たな視点を得ることができました。今後はこうしたディスカッションのテクニックや内容の深め方についてもスキルアップしていきたいと思います。
ありがとうございました!Terima Kasih!
久保田健太さん(工学院 機械系 学士課程2年)
昔から海外留学に興味があって「英語力を向上させたい!」、「海外に友達作りたい!」と思っていたところ、偶然このAYSEASを見つけました。正直最初はプログラムの内容もよくわかっていませんでしたし、留学に対する恐怖は少なからずありましたが「勢い」で応募しました。
プログラムの内容は「ホンダ」や「味の素」など誰もが一度は聞いたことがあるような、日本の大企業の工場を見学したり、現地で活躍している日本人の方のお話を聞いたり、プレゼンテーションをしたりなど枚挙にいとまがありません。本当に濃密です。
ただ一番自分の記憶に残っているのは海外の学生と交流した時間です。AYSEASには派遣先(インドネシア)以外からも様々な国から学生が来ます。実際に僕のルームメイトはタイ人で彼とは11日間同じ部屋で過ごしました。会った初日はなかなか打ち解けることができなかったのですが、一緒に過ごしているうちにどんどん仲良くなることができました。最後の別れは本当につらくて、まだ誰にも言っていませんが、バスで泣きそうになっていました(笑)。彼らとは今でも連絡を取り合っています!
たった11日間という短い期間ではありますが、民族や国、文化の壁は崩れ去り、個人的には宗教の壁が粉々に壊れました。またお金を貯めて留学へ行きたいと思います。
松江博文さん(物質理工学院 材料系 学士課程4年)
色々な国から来たメンバーとのふれあいはTokyo Tech-AYSEASの大きな特徴の一つです。今回の留学先はインドネシアでしたが、参加メンバーは東工大生とインドネシア人学生だけではなく、ベトナムやフィリピンやタイから来た学生もいました。
訪問先が東南アジアの非英語圏の国であるのにもかかわらず、メンバー同士のコミュニケーションは基本的に英語で行われます。このような環境で、自分と同じ非英語圏出身の人と英語で交流ができ、英語圏出身の人々とは異なるコミュニケーションのとり方が体験できました。
工場の製造プロセスを見学した時は、自分が大学で学んだ知識が色々なところで役に立っていることがわかりました。また、最終日のプレゼンテーションのための参考文献の検索やスライド作りに、研究室で学んできたことが役立ち、達成感を得ました。
Tokyo Tech -AYSEAS2019のリーダーを務めて最も心に残ったことは、参加者24人がプログラム終了までにすばらしい友情を築けたことです。
- Tokyo Tech-AYSEAS 2018 実施報告|東工大ニュース
- Tokyo Tech-AYSEAS 2016実施報告|東工大ニュース
- 東南アジアの優秀な学生たちと切磋琢磨~Tokyo Tech AYSEAS 2015 実施報告|東工大ニュース
- AYSEAS, Tokyo Tech-Asia Young Scientist and Engineer Advanced Study Program