今夏、工学院、物質理工学院、環境・社会理工学院の3学院が主催する各種のサマープログラムに参加する留学生が6月から7月にかけて来日し、9月までの約3ヵ月間、各学生が設定した研究を行いました。世界各地の25大学から44名の学生が参加しました。
プログラム名 |
2019年 参加校(順不同) |
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1 |
Asia-Oceania Top University League on Engineering: AOTULE アジア・オセアニア工系トップ大学リーグ |
1)清華大学 2)香港科技大学 3)国立台湾大学 4)KAIST 5)南洋理工大学 6)バンドン工科大学 7) チュラロンコン大学 8)ハノイ工科大学 9)インド工科大学マドラス校 10)モラトゥワ大学 |
2 |
Summer Exchange Research Program: SERP 夏期短期学生交流プログラム |
1)ウィスコンシン大学 2) アーヘン工科大学 3) マドリード工科大学 4) カールスタード大学 5) ソルボンヌ大学 6) USサンタバーバラ 7) ウォーリック大学 8) オックスフォード大学 |
3 |
Asia-Oceania Strategic Universities Exchange Program: AOSU アジア・オセアニア重点大学交流プログラム |
1) 国立台湾科技大学 2) 国立成功大学 3) 武漢理工大学 4) タマサート大学 5) シンガポール工科デザイン大学 |
4 |
Student Exchange Program for School of Materials and Chemical Technology 物質理工学院 学生国際交流プログラム |
1)ジェノバ大学 2)国立台湾科技大学 |
工学院、物質理工学院、環境・社会理工学院は、欧米やアジア・オセアニアの先進理工系大学と独自に協定を締結し、これらの大学から留学生を受け入れ、同時に東工大からも学生を派遣しています。学生交流を中心とした協定校とのネットワークを構築・確立することで、3学院はさらなる国際化を推進し、国際的な舞台で活躍できる人材の育成を目指しています。
留学生たちは、それぞれ自身の専門分野の研究室に所属して、受入教員の指導のもとで短期研究プロジェクトを行うと共に、日本語の基礎を学ぶ授業を履修しました。また、日本を代表する先端企業の見学や日本文化に関わる活動など、日本の技術や文化への理解を深めるためのイベントにも参加しました。
研究活動
参加学生 : ヘレン・レビーさん(夏期短期学生交流プログラム:SERP)
在籍大学 : カリフォルニア大学サンタバーバラ校(学士課程4年)
東工大での所属 : 工学院 機械系
研究題目 : 人力車ロボットの設計と制御
私の参加したプロジェクトは非常に興味深く、やりがいのあるものでした。受入指導教員や研究室の仲間から多くのことを学びました。皆さんはいつも親切でしたし、皆さんがやっている仕事を見て刺激を受けました。研究室では新しくて有益なテーマをたくさん学びました。ロボットの連動システムと、それらをどのように数値実行や数値最適化のために分析するかについて多く学ぶことが出来ました。
また、今まで理論的にしか知らなかったモーター・エンコーダをプログラミングする実地経験を積むこともできました。修士課程に進学するにあたって、何に焦点を当てるべきかを見つけ出す目的で来日しましたが、ここの研究室に所属し、私は本当にロボットと制御システムを学び続けたいと決意を新たにしました。
受入指導教員 : 岩附信行教授(工学院長)
ヘレンさんには「人力車ロボットの設計と制御」と題する研究プロジェクトに取り組んでもらいました。これは2足歩行ロボットが従動2輪のカートを牽引して移動するロボットで、たった2個のモーターで転倒することなく、直進・旋回を実現することが課題です。わずか3ヵ月弱で、用いる機構の運動解析、ロボットの設計・試作、マイコンによる制御系の設計・実装を成し遂げ、人力車ロボットの走行実験に成功し、その走行性能を明らかにしました。彼女が独力で黙々と研究する姿には、研究室の学生も感銘を受けたものと思います。
特別講義
サバイバル・ジャパニーズ(日本語集中講座)/小学校訪問
本講座は、日本語初級レベルの学生向けの日本語クラスです。講義では、日常生活場面で用いる会話表現を学び、実際に会話できるようになり、また、日本社会についてのプレゼンテーションを行い、日本の文化や社会について理解を深めることを目指します。また授業の一環として、地元の小学校を訪問し、児童たちと交流する機会もありました。
参加学生 : ルマイシャー・コディジャー・コリスさん(アジア・オセアニア工系トップ大学リーグ)
在籍大学 : インドネシア バンドン工科大学(修士課程2年)
東工大での所属 : 工学院 機械系
小学校訪問当日は、楽しく心温まる歓迎をしていただきました。5年生の児童たちは、私にかわいらしい名札を作ってくれたり、校内見学に連れていってくれたりしました。そして、中に折り紙が仕組まれたポップアップカードの作り方も教えてくれました。どの児童も英語の練習を頑張っていて、私にたくさんの質問をしてくれて嬉しかったです。4年生の教室では、洗足池公園について素晴らしい紹介をしてくれました。さらには、私に「じゃんけん」を教えてくれる子どもたちもいました。給食の時間になり、私は子どもたちの中に入って、とても美味しい給食をいただきました。給食のメニューのひとつ、「わかめサラダ」は、日本食の中でも私の好物のひとつになりました。私は子どもたちと過ごす時間がこんなにも楽しいものだと長い間忘れていたように思います。親しくなるのに、難しい話題を話す必要はありません。子どもたちは私を楽しい世界に連れていってくれました。研究で忙しい中、しばし研究のことを忘れることができました。子ども時代を大いに楽しんで、将来、夢をかなえて欲しいです。
ハイテク・ジャパン(工場・企業見学)
本講義は、研究所や工場の見学を通して様々な分野の日本企業の先端技術を概観することを目的としています。本年度は、理化学研究所、JFEスチール株式会社、TDK株式会社、そして鉄道総合技術研究所を訪問しました。
参加学生 : ティラカラトゥン・サリカさん(AOTULE)
在籍大学 : スリランカ モラトゥワ大学(修士課程2年)
東工大での所属 : 環境・社会理工学院 土木・環境工学系
見学先 : TDK株式会社
社内では、距離や気温、湿度など、あらゆる気候を正確に測定できるセンサーが展示されていました。正確なデータは研究の仮説を立証するのに不可欠なものです。私の修士学位研究は、データ収集の段階での測定データの多くが、信頼性が高いものとは言えませんでした。関連各所にも確認したところ、使用した機材は期待できるものでないと判明しました。TDK製品を使用できたなら、私の研究も大幅に改善できただろうと思います。この訪問でTDKの研究方法論や研究結果判定の方法も学ぶことが出来ました。TDKは従業員に新しい研究へのアイディアを考えることを働きかける環境であり、それは私の母国における課題だと思いました。
第11回 多専門領域にわたる国際学生ワークショップ(MISW 2019)
8月6~8日、工学院、物質理工学院、環境・社会理工学院の修士・博士後期課程学生、国際大学院プログラムの3学院に所属する留学生およびAOTULEサマープログラム参加留学生を主な対象として「第11回多専門領域にわたる国際学生ワークショップ(MISW 2019)」を開催しました。
このワークショップは、議論や懇親会を通じて、それぞれの方法論・価値観・世界観の交流を行い、多文化共生と新たなイノベーションへの手掛りを模索することを目的としています。本ワークショップの発表者の中から、特に優秀な学生に優秀講演賞を授与しました。参加した学生たちにとっては、日ごろの研究の成果を存分に発表し、プログラムや国籍、年齢を超えて意見交換しあう実りある機会となりました。
今回は、チームラボ株式会社 山田剛史氏を招聘し、“Relationships Among People”(人々の関係性を変化させ、他者の存在をポジティブな存在に変える)と題した基調講演を行っていただきました。
参加学生 : ラヴィシャンカー・サミュクタさん (AOTULE)
在籍大学 : シンガポール 南洋理工大学(博士後期課程3年)
東工大での所属 : 物質理工学院 応用化学系
MISWに参加でき、光栄でした。世界中の学生と交流が出来る素晴らしい機会をいただきました。発表テーマは機械工学から土木工学まで様々な分野でしたが、それぞれの分野における革新的な新しい考えや学びがありました。
私の口頭発表は、様々なバックグラウンドの聴衆の前で行うという点で、今までの発表とは違っていました。自分の研究活動を、分かりやすく、かつ研究の背後にある科学に通じるよう説明することは難しかったですが、やりがいのある素晴らしい経験でした。また、10分間では発表できる内容にも限度がありました。しかし、与えられた時間内で簡潔に経緯を説明することも勉強になりました。
私は会の一つを進行する機会をいただき、実りある討議が生まれました。間違いなく私にとっては挑戦でした。私の経歴や予備知識が少しでも発表者に近ければ、おそらくもっと役に立てたと思いますが、観客に質問するよう呼びかけ、積極的に討論を促そうと努めました。改善点としては、私自身が様々なトピックについて事前に学び、他のAOTULEの参加者にも事前に集中講義のような時間を作ってもらう方が、より面白くなったのではないかと思います。
最後は、折り紙で橋を架けるという楽しいグループワークで締めくくった素晴らしいプログラムでした。私たちのチームは最長の橋を架けることから程遠かったですが、とても簡単な技術で長い橋を建設したチームに驚き感心しました。私はこの研究活動を締めくくる素晴らしい方法を、世界中から来た学生やスタッフと共有することが出来たことを生涯大切にしたいと思います。
文化・交流イベント
日本文化体験(生け花・茶道)
7月11日、公益財団法人 目黒区国際交流協会の協力の下、目黒区総合庁舎にて生け花と茶道の体験をしました。短い時間の間に、基礎的な作法のみならず、おもてなしの心や歴史的背景も学ぶことが出来ました。
参加学生 : 陳 學毓さん(アジア・オセアニア重点大学交流プログラム:AOSU)
在籍大学 : 国立台湾科技大学(博士後期課程3年)
東工大での所属 : 物質理工学院 材料系
生け花はとても面白く、作品は美しく出来上がったと思います。たくさんの情熱と季節感が必要な伝統芸でした。幸運だと思ったのは、研究室に戻ったとき、私の日本人チューターは生け花をやったことがなかったそうで、私のことを「すごい」と褒めてくれました。また、伝統的な方法で抹茶をいただくだけでなく、どのようにして抹茶を点てるのかも講師の相馬尊子先生に教えていただきました。本物の抹茶はお茶の表面に無数の泡が立つことを知り、とても興味深かったです。お茶菓子も大変美味しくて、台湾へ帰る時に持ち帰りたいと思っています。質疑応答の時間に、相馬先生は着物についても説明してくれました。とても優美でしたので、いつか着る機会があればと願っています。
キャンパス・ツアー
交換留学プログラムの特徴を生かし、留学生と東工大派遣学生による交流イベントも企画・運営されました。留学生が出席するオリエンテーションの一環として、図書館ツアー、そして本年度協定校に派遣予定および過年度に派遣された東工大生が中心となり、大岡山キャンパス・ツアーを実施しました。
歓送迎会
各プログラムで、歓送迎会が開催されました。自国や在籍大学の紹介、工系学生国際交流プログラム派遣生たちとの交流、日本を象徴するようなお楽しみイベントなど、賑やかな時間を過ごしました。