東京工業大学教育革新センター(以下、CITL)は、1月23日、2019年度 教育革新シンポジウムを大岡山キャンパス西9号館ディジタル多目的ホール、メディアホールで開催しました。
2015年度から数えて5回目となる今回は「学生のエンゲージメントを高めるオンラインを活用した授業づくり」をテーマとして開催しました。講義法とアクティブ・ラーニング※1のそれぞれの利点を活かして、オンラインや教室での学生のエンゲージメント(深い関与)を高める授業づくりについて、参加者と共に考えました。学内外合わせて100名を超える大学教職員、学生及び教育関係者が参加し、質の高い学びを実現するための授業づくりへの関心の高さを改めて認識する機会となりました。
- ※1
- アクティブ・ラーニングとは、学生同士でのグループワークやディスカッション、プレゼンテーション、または、学生個人の振り返り活動など、一方向的に講義をただ聴いて覚えるという受動的な学習を乗り越えるための、あらゆる能動的な学習または授業形態のこと。
基調講演の前には、メディアホールにおいてシンポジウム登壇者3名を交えて交歓会およびポスターセッションが行われました。ポスターを囲み、参加者と発表者による活発な意見交換の場となりました。
他大学からは部局間協定を締結している九州工業大学学習教育センターをはじめ、ICT環境や反転授業等を活用した教育制度を実践している東京大学、京都工芸繊維大学、早稲田大学、首都大学東京(4月1日より「東京都立大学」と名称変更)の発表者からそれぞれの取組みの紹介がありました。本学からは2019年度に採択された教育の質向上サイクル推進助成(Education Enhancement Cycle Grant:EdCycle Grant)の取組みや、国際教育プログラム(6-University Human Assets Promotion Program for Innovative Education and Research 、6U-HAPPIER)、情報活用IR室、CITL、オンライン教育開発室(OEDO)の取組みに加え、東工大教育賞受賞者を紹介しました。
シンポジウム冒頭、益一哉学長より開会挨拶があり、その後、登壇者の1人でもある本学CITLの大浦弘樹准教授より、本シンポジウムの趣旨説明がありました。
基調講演では、米国フットヒルカレッジ 音楽部のエリザベス・F.・バークレイ教授から、“Making Lectures Interactive and Engaging(講義をインタラクティブで魅力的にする)”と題して、講義法とアクティブ・ラーニングのそれぞれの利点を活かして教室での学生のエンゲージメントを高める授業づくりについて、同氏が提唱するInteractive Lecturing(インタラクティブ・レクチャリング) フレームワークの説明と、それに沿った具体的な授業活動の紹介がありました。
続く事例紹介(国内事例1)では、北海道大学 情報基盤センターの重田勝介准教授(オープンエデュケーションセンター副センター長)から、北海道大学におけるオンライン教材の活用事例や教材開発の組織的運用体制などについて説明がありました。
引き続き、事例紹介(国内事例2)では、大浦弘樹准教授(CITL)から本学におけるオンライン教育の推進に向けた実施ガイドラインや教員向けセミナーや、2019年度から試行運用している学習管理システム「T2SCHOLA」について説明がありました。
その後、田中岳教授(CITL副センター長)のファシリテーションによるラウンドテーブルが行われ、本シンポジウムのテーマである「学生のエンゲージメントを高めるオンラインを活用した授業づくり」に向けて、教室とオンラインでの学生のエンゲージメントを高める工夫や課題等について、活発に意見交換や質疑応答が行われました。
最後に、本学の水本哲弥理事・副学長(教育担当)より閉会挨拶があり、シンポジウムは盛会のうちに終了しました。
全プログラムを終えて行ったアンケートでは、来場者の満足度は「満足」と「やや満足」を合わせて89.4 %と高く、特にバークレイ教授の基調講演が有益であったと好評でした。自由記述には「自分は大学で教授は話すだけ、学生が聴くだけの昔のスタイルの講義を受けてきたため、現在の新しいアクティブ・ラーニングなどの経験がなく、このようなセミナーは非常に有益です」「オンラインを活用した様々な授業設計について例を提示してくださり、大変勉強になりました」「講演もポスターセッションもラウンドテーブルも、どれも有益な情報が多く、とても参考になりました」等の感想が寄せられました。
2019年度教育革新シンポジウム ポスターセッションタイトル一覧
タイトル |
発表者 |
所属カテゴリ |
|
---|---|---|---|
1 |
演習型の初年次教育において学生・TA・教員のインタラクションを高めるICT環境の構築 |
椿本弥生(東京大学) |
他大学の取り組み |
2 |
遠隔地の外国語話者との協働による英語プレゼンテーション講義 |
坪田康(京都工芸繊維大学) |
他大学の取り組み |
3 |
Creating an Engaged Classroom with ICT: Good Practices and Organizational Support at Waseda Univerisy |
Yan Jiang(早稲田大学) |
他大学の取り組み |
4 |
認識的準備活動を導入した反転授業の効果の検討 |
伏木田稚子(首都大学東京) |
他大学の取り組み |
5 |
Response Collector: 反転授業のためのビデオ学習ツールの開発 |
奥本隼(株式会社TwoGate) |
他大学の取り組み |
6 |
九州工業大学 学習教育センター(LTC)の取組み |
宮浦崇(九州工業大学) |
他大学の取り組み |
7 |
国際教育プログラム「アーヘン工科大学 学生交流プログラム」 |
原正彦(東京工業大学) |
国際教育プログラム |
8 |
キャンパス・アジア・サマースクール「理工系大学を多元中継でつなぐ特別講義」 |
原正彦(東京工業大学) |
国際教育プログラム |
9 |
「地惑巡検」ハワイ大学/すばる天文台訪問 |
石川晃(東京工業大学) |
国際教育プログラム |
10 |
学士課程専門科目でのeラーニング構築とアクティブラーニングへの展開 |
時岡えい(東京工業大学) |
EdCycle Grant |
11 |
Raspberry Piを用いた「ものつくり」セミナー |
齊藤卓志、伊東幸子(東京工業大学) |
EdCycle Grant |
12 |
マサチューセッツ工科大学/ハーバード大学との国際交流「たたら製鉄ワークショップ」におけるオンライン教材の活用 |
鹿取弥生、太田絵里、田家美和子、村上理映(東京工業大学) |
国際教育プログラム |
13 |
授業「宇宙システムプロジェクト」「宇宙工学実践プロジェクト」とARLISSへの参加 |
ポスター掲示のみ |
国際教育プログラム |
14 |
リベラルアーツ必修科目における上位層・要学修支援層の顕在化と全学(大岡山・すずかけ台・田町)教員との連携を通じた教育の質向上 |
猪原健弘(東京工業大学) |
EdCycle Grant |
15 |
6U-HAPPIER, 6-University Human Assets Promotion Program for Innovative Education and Research |
HAPPIER事務局(東京工業大学) |
CITL関連 |
16 |
デザイン思考とハンズオンワークを用いた機械系アクティブラーニング |
八木透(東京工業大学) |
EdCycle Grant |
17 |
建築意匠設計第二「上海ワークショップ」 |
ポスター掲示のみ |
国際教育プログラム |
18 |
Institutional Research論の開講実績 |
大石哲也(東京工業大学) |
CITL関連 |
19 |
東京工業大学におけるオンラインコース(MOOC/SPOC)の開発と活用 |
長濱澄(東京工業大学) |
CITL関連 |
20 |
教育革新センターの概要と活動紹介 |
ポスター掲示のみ |
CITL関連 |
- 【開催案内】2019年度 教育革新シンポジウム|教育革新センター
- 海外拠点「東工大ANNEX」第2号をドイツ・アーヘンに開設|東工大ニュース
- 東工大生がMIT・ハーバード大学の学生と学ぶ「たたら製鉄ワークショップ」|国際交流TOPICS|国際交流
- 教育質向上サイクル推進助成|教育・国際連携本部
- 6大学工学系人材養成機構(6U-HAPPIER)
- オンライン教育開発室(OEDO)
- 教育革新センター(CITL)