東京工業大学のグローバル理工人育成コースは、米国マサチューセッツ工科大学ジャパンプログラム(MITジャパン)と共同で、双方の学生がペアを組んで日本語と英語を学び合う国際交流プログラム「語学タンデム」をオンラインで開催しました。6月から7月にかけて約1ヵ月間行い、東工大生17名とMITジャパンより18名の計35名が参加しました。
東工大とMITは2019年度から開始した交換留学や2017年度より開始された、たたら製鉄ワークショップ等の交流実績があります。
2020年は新型コロナウィルスの影響により、国境を越えた移動が制限され、多くの国際交流イベントが延期や中止となりました。対面での国際交流の代替案として、オンラインの語学タンデムが企画、実施されました。
タンデムとは、異なる外国語を学ぶ異なる国の学生(例えば英語を勉強する日本人と、日本語を学ぶ外国人)でペアを組み、お互いに語学学習を助けあう方法です。すべてオンラインでの実施となった今回の語学タンデムは、
- 1.
- 外国語でのコミュニケーション能力の向上
- 2.
- 語学交流を通じた異文化理解、視野の拡大
の2つを目的として、東工大生とMITの学生17グループがペアを組みました。
語学タンデムでビデオ制作
6月上旬のイントロダクションセッションを皮切りに、それぞれのグループは東京とボストンの間の13時間の時差を克服してスケジュールを調整し、少なくとも3回、語学タンデムを行いました。1回の語学タンデムは日本語の会話が30分、英語での会話が30分で構成されます。参加者は、会話のトピックを自由に選び、最後にグループごとにお互いの国の事情から学んだことについて、5分間のビデオをつくります。グループはそれぞれ教育制度、大学制度、料理、昔話、スポーツ、映画、音楽、言語学、テレビ番組、映画タイトルの翻訳などさまざまなテーマを選びました。多くのグループは3回以上の語学タンデムを行いました。
それぞれのグループは自由にビデオ制作を行い、理工系大学生ならではの多くの技術を駆使し、ユニークで面白いビデオを作りました。
ファイナルセッションでそれぞれのビデオを紹介
7月上旬、個別の語学タンデムセッションを終了し、参加者はファイナルセッションに参加しました。それぞれのグループが作ったビデオを編集したダイジェスト版が紹介され、参加者が一人ひとり感想を述べました。その際、東工大生は英語で、MITジャパンの学生は日本語で発言しました。17グループの中から投票により、
- 1.
- 伝統料理の比較
- 2.
- 昔話の比較
- 3.
- 言葉の構成
をテーマとしたベスト3のビデオが選ばれ、作ったグループが紹介されました。投票者たちのコメントは「選んだビデオが一番見やすく、内容も勉強になり、説明も分かりやすかった」「比較が面白く、ビデオも分かりやすかった」「とても創造的でBGMの選択もよく、料理を実際に作っていて、食べたくなった」などです。ファイナルセッションの最後には、参加証明書と共に、MITジャパンから記念品が贈られました。
プログラム終了後にアンケートを行いました。アンケートに回答した33名全員がこのプログラムを友達にも勧めると答えました。本プログラムは、外国語と母国語を対等な関係で互いに学び、教え合うことができるのが特徴です。プログラム修了後も、継続して、オンラインの交流を行っているグループもあります。アンケートには「参加者の多くが、他の国の新しい知り合いを作り、共通のテーマについて日本とアメリカの事情を比較し、外国語でのコミュニケーションを楽しんだ」とのコメントがありました。
グローバル理工人育成コースとMITジャパンは、このプログラムを通して参加者が育んだ友情が続き、MITと東工大の関係が発展することを願っています。
参加した東工大学生のコメント
- 動画を作るのは大変でしたが、完成したときに、お互いをより深く理解し、信頼関係を築いて仲良くなりました。スピーキングの練習ができる貴重な機会でした。また相手の出身国やアメリカの文化を学ぶことができ勉強になりました。
- パートナーとよい時間が過ごせました。会話を進める中で、トピックについて教えることも学ぶことも多かったです。
- 授業とプライベートの中間的な位置付けで取り組めたので、緊張感などもなくよかった。
- 英語力の向上や同じ理工系大学で学ぶ友人が出来る、など良かった点が多かったです。時差の問題は難しかったですが、朝の時間と夜の時間で工夫して行いました。トピックを各自で決められたため、話していくうちにお互いが興味を持ったり、面白いと思ったトピックをさらに深めてビデオにすることができました。他のグループのビデオを見ることもでき、新しい発見があってとても面白かったです。
- 制約も少なく、自由に会話できたので良かったです。お互いの言語の勉強がしっかりできました。
- 普段ならハードルが高くて参加できないイベントでしたが、オンラインで気軽にMITの学生と会話できると聞いて参加すると決めました。めったにない貴重な機会で楽しかったです。 期間に関しては1ヵ月くらいが軽すぎず、重すぎずちょうどよかったと思います。 話し合う時間ややり方などをペアと決められる自由さがあり、忙しい僕でも続けやすかったです。
- 新しい友人との会話を楽しめました。英語の語彙だけでなく文法や、アメリカの文化やライフスタイルについて学びました。そのため、アメリカやMITにさらに興味を持ちました。
主催したMITジャパンと東工大グローバル理工人育成コースの教員・スタッフのコメント
マサチューセッツ工科大学 MITジャパンプログラム クリスティーン・ピルカベージ事務局長
学生たちの最終課題であったビデオを見たとき、相手の文化と言葉を学ぶ彼らの創造性と情熱にとても感動しました。今回参加したMITの学生の多くに直接日本語を教えましたが、彼らがハッピーでエネルギーに満ちながら日本語で話す顔を見て、この大変な状況の中でとても価値ある経験になったと思います。今回のプログラムは、教育手法としてもよく練られており、語学教師としても多くの学びを得ました。東工大の主催者の方々に感謝すると共に、この活動が発展し継続することを願っています。
マサチューセッツ工科大学 グローバル・ランゲージ 相川孝子シニアレクチャラー
MITジャパンプログラムのインターンシップが新型コロナウィルスの影響で中止となり、とても心を痛めていました。日本での経験を得られなくなってしまったMITの学生が語学タンデムを通して東工大の学生とつながれたことで、日本との距離が少し近くなり、とても嬉しく思いました。MITと東工大の学生たちにとって、語学をお互いから学ぶ中で育まれた友情が一番の宝物であると思います。MITと東工大の国際交流を継続してくださっている太田先生に感謝するとともに、お互いの学生が語学そしてお互いの文化を学びたいと思えるような充実したプログラムが実施できることを望みます。そしてもちろん、我々が日本に渡航できる日が来て、友達になった東工大生に会えることを希望しています。
東京工業大学 国際教育推進機構 太田絵里特任教授/ユニバーシティエデュケーションアドミニストレーター
今回、初めての試みとして、東工大生とMITの学生がオンラインで交流するプログラムを実施しました。最後にグループごとに制作されたビデオを見て、参加された学生たちが仲良くなれた様子が感じられてとても嬉しく思いました。このイベントを通じて、場所や時間の隔たりをいとわず、国境を越えた友情つくりは可能かもしれない、と感じました。一方で、MITとの国際交流イベントである東工大たたら製鉄ワークショップの主催者として、両校の学生たちが日本で直接交流できればよかったのに、と未練がましく思います。この活動が継続され、次回は、オンラインの交流と直接の交流の双方を組み合わせて実現できることを真に願います。最後に、参加された学生さん、MITのクリスティーンさん、相川先生に心よりお礼を申し上げます。
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