コロナ禍で変化する社会の課題を解決するために、東京工業大学の若手研究者は何ができるでしょうか。
東京工業大学は10月29日、学内組織の未来社会デザイン機構(以下、DLab)と科学技術創成研究院基礎研究機構の広域基礎研究塾(以下、広域塾)の共催で、ワークショップ「未来社会と自身の研究との繋がりを考える」をオンラインで開催しました。DLabは、東工大と社会が一緒になって、ワークショップなどを行いながら未来社会をデザインすることを目指しています。一方、広域塾は学内の若手研究者が塾生として所属し、専門分野に関わらず自らの学術的興味に基づいて独創的あるいは萌芽的な研究課題を見出す場を提供しています。このワークショップは広域塾の塾生が、DLab作成の「未来シナリオ」を使って社会の課題を検討します。塾生自身の研究内容が未来社会に繋がっていることに気づき、俯瞰力、創造力、他者と協働する力を強めることを目的としています。両組織が共催するワークショップは3回目です。
コロナ禍によって浮かび上がった社会的課題を "未来" を使って解決する
11名の塾生が参加した今回のワークショップは、コロナ禍によって大きく変化した生活や社会と、それによって生じた課題に焦点を当て議論を行いました。DLabの未来シナリオとそれぞれの専門分野の知識を活かし、課題を解決するサービスや仕組みと、その実現にはどのような研究や技術、さらに社会制度が必要かを考えました。
はじめに広域塾の塾長でありDLabの副機構長も務める科学技術創成研究院の大竹尚登副研究院長と東工大研究・産学連携本部研究戦略部門長の新田元リサーチ・アドミニストレーター(URA)がワークショップの概要を説明しました。
その後、塾生は3つのチームに分かれてグループワークを開始しました。グループワークでは、コロナ禍の中、自らの生活や社会にどのような変化があったかについて、塾生各自が5つずつの事例を挙げ、それを分類し、一つの課題としてまとめました。
次に、未来シナリオを使って課題解決につながるサービスや仕組みを考え、そのために必要な研究や技術、社会制度等を検討しました。
物流や人の流れが滞ることを課題としたチームからは自動運転技術などによる「生産や輸送の自動化」、対面でのウイルス感染を課題としたチームからは「次世代のマスクやウイルス除去システム」、対面と同等の非対面社会の実現を課題としたチームからは「AIやロボットを用いた医療、VRを使ったレジャー」が解決策として挙げられました。
最後に、これらの解決策を実現するために自身の研究を含めてどのような技術や社会制度が必要かについて議論した結果を発表しました。
工学・材料・バイオテクノロジー・建築など、さまざまな分野の若手研究者がそれぞれの分野の知見を共有しながら協働し、課題について熱心に意見交換を行うことで、理工系総合大学である東工大の特色を生かしたワークショップとなりました。
完全オンラインで実施したワークショップで見えた可能性
今回のワークショップは、オンラインのミーティングシステムとオンラインのホワイトボードツールを併用し、全体ミーティングからグループワークまでを全て非対面で行いました。
これまでのような対面のワークショップとは異なり、他のグループの雰囲気が分かりづらい点やネットワーク環境によってはシステムに不具合が生じる点などいくつかの課題が見つかりました。一方で協働での作業を伴うグループワークは、ホワイトボードツールを使うことで問題なく実施できることが分かりました。また、対面のワークショップでは参加者が近隣の圏内に限られますが、オンラインのミーティングシステムを使えば、たとえ遠隔地であってもネットワーク環境さえあれば自由に参加できます。広く社会の皆さんと対話をし、共に未来を作っていくDLabの活動にとって、オンラインでのワークショップは新たな可能性となりました。
DLabの未来シナリオにある「おうち完結生活」では、2040年に「生活がほぼ家の中で完結する」と予想しています。コロナ禍により社会全体が外出を自粛した生活は、DLabの予想した2040年の "未来" が図らずも20年早くやってきた、とも言えるのではないでしょうか。今後もさまざまツールを活用し、ありたい未来を描き、実現する活動を進めていきます。
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