東京工業大学の伊賀健一名誉教授・元学長が公益社団法人応用物理学会の第4回光工学功績賞(高野榮一賞)を受賞しました。授与式は3月16日、オンラインで開かれた第68回応用物理学会春季学術講演会で行われました。伊賀名誉教授は同学術講演会で受賞記念講演を行いました。
応用物理学会 光工学功績賞(高野榮一賞)
応用物理学会によると、光工学業績賞・功績賞(高野榮一賞)は、光工学の研究開発において顕著な業績をあげた研究者、技術者を顕彰することを目的とし2017年に創設されました。2010年に応用物理学会に設立された高野榮一光科学基金の事業です。「光を利用した機器・部品開発や計測技術、光の制御・操作技術など、光技術・光科学の発展にインパクトのある応用が期待される優れた研究開発」の業績を称える業績賞と長年の功績を称える功績賞の2種類があります。
高野榮一氏はキヤノン株式会社、タムロン株式会社などに勤務しカメラレンズの設計、開発にあたり、また光科学研究所を設立し光学技術者の育成に努めました。2010年に逝去し、遺言に基づいて応用物理学会に遺贈された財産を原資に高野榮一光科学基金が設立されました。
応用物理学会が発表した授賞理由
功績賞受賞者:伊賀健一氏(東京工業大学名誉教授)
業績:面発光レーザーとその応用に関する先駆的研究ならびに微小光学における長年にわたる顕著な功績
伊賀健一氏は垂直共振器面発光レーザーの発明者として国内外に広く知られています。面発光レーザーは現在では、高速光ファイバーやデータセンターなどの光通信や、レーザープリンター、マウス、最近ではスマートフォンの顔認証システムなどのレーザー光源に使われています。同氏はこの業績により2005年度第6回応用物理学会業績賞(研究業績)を受賞されています。
しかし、伊賀氏は光工学の分野でもう1つ重要な貢献を果たしています。それは、我が国に微小光学という研究分野を創設し、その発展に寄与したことです。微小光学における同氏の研究業績は、分布屈折率平板マイクロレンズアレイなどの光学素子の開発が挙げられます。これは、面発光レーザーアレイと組み合わせて2次元並列光情報処理を目指す研究で、その後のマイクロレンズ技術の発展に大きく寄与しました。また、応用物理学会に微小光学研究グループ(現微小光学研究会)を設立し、30年近く代表を務め、研究会や国際会議を企画運営し、微小光学の基礎と応用に関する研究開発の啓発活動に重要な役割を果たしてきました。
さらに伊賀氏は、日本学術振興会理事、電子情報通信学会会長、東京工業大学学長などの要職を歴任し、我が国の科学技術振興や若手研究者・技術者の育成に尽力されました。
以上を要するに、伊賀健一氏の長年にわたる功績は、光工学の発展、関連する多くの産業の創出、若手人材育成に大きく寄与するもので、光工学功績賞を受賞するのにふさわしい研究者であると認められます。
伊賀健一名誉教授のコメント
この度の受賞は、面発光レーザーとともに微小光学に関する貢献に対してと理解しております。微小光学は、NECの内田禎二さん、日本板硝子の北野一郎さんらが1968年頃に、Microoptics(マイクロオプティクス)として提唱したもので、私達次の世代が受け継ぎました。私としては、面発光レーザーを発明した1977年の直後、1979年に平板マイクロレンズを発明し、2次元アレイの光学として推進してきました。1992年から、応用物理学会・微小光学研究会の代表として活動しております。
レンズ設計者として高名な高野榮一氏の名を冠する賞をいただくことは、小学生の時からカメラ少年であった私にとってこの上ない喜びです。レンズアレイは、液晶プロクターやレーザーレーダー搭載のiPad Proなど、広く使われています。私の発明した面発光レーザーも搭載されていますし、微小光学の技術も組み込まれています。
いつもレンズや光学設計がシステムの変化と相まって動いていると思われます。その基礎となるのが、レンズ設計の思想であり、高野榮一さんの功績が今も受け継がれているのではないでしょうか?
私にとって、本当に嬉しい賞となりました。
応用物理学会には、現在5つの技術賞があります。そのうち、業績賞、小舘香椎子賞、高野榮一賞の3つを戴いたことになり、まことに光栄です。
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