東京工業大学は、学問分野を問わずに世界規模の課題について考える3日間の集中プログラムを「グローカルスクール」として2019年夏から開いています。「グローカル」とは、ローカルでの優れた技術や発想をグローバルに展開していく発想を意味しています。主な参加者は大学院の学生ですが、他大学の学生や留学生も参加できます。
2021年夏のグローカルサマースクールは「人によりそうを形にする — 高齢社会のケア」をテーマとして9月13日から15日までオンラインで開催しました。
海外から参加できるよう日本時間で午後5時以降に行い、東工大からは博士後期課程8名、修士課程2名の計10名が参加しました。
第1日(9月13日)グループワークと特別講演
グループワークと特別講演が行われました。スクールの運営にあたる環境・社会理工学院 社会・人間科学系(リベラルアーツ研究教育院)金子宏直准教授による講義の後、参加者は、事前に作成した自己紹介ポスターを紹介し、専門分野や好きな魚のペーパークラフトを示しながら交流しました。
参加者は、ZOOMのブレークアウトルームでグループに分かれ、事前に選択した調査課題について話し合いました。各グループの代表者がグループごとの議論を参加者全員に報告した後、全員で高齢化社会と介護について自由に討論しました。
特別講演では、朝日新聞社編集委員の浜田陽太郎氏が、介護現場の現状と介護現場に導入されている最新テクノロジーについて解説しました。世界の健康・医療に関連して、浜田氏はビル・ゲイツ氏へのインタビューも紹介しました。
第2日(9月14日)特別講演
特別講演が2つ行われました。
第1講演では、一橋大学大学院経済学研究科・佐藤主光教授が高齢化社会の進行で介護と医療の予算が急増している実態を説明し、必要な対策をデータに基づいて解説しました。
第2講演は、福島県立医科大学の岡﨑裕司教授が、高齢者が転倒して寝たきりになるメカニズムと実際の骨折治療の映像資料を紹介し、予防法について解説しました。
グローカルサマープログラムでは、グループごとにテーマを決めて最終プレゼンテーションを行います。プレゼンテーションでは、説明のポスターと立体的なモデルを共同作業で作成します。2日間の講演の後、グループごとにプレゼンテーションの打合せをして、コミュニケーションツールを使いグループワークに取り組みました。
第3日(9月15日)最終プレゼンテーション
最終プレゼンテーションには、審査にあたる井村順一副学長(教育運営担当)が参加しました。
最終プレゼンテーションは、各グループが10分間の持ち時間で、メンバー全員が交代でアイデアを発表しました。発表後、10分間の質疑も行われました。
審査の結果、「高齢者の孤立を解消し介護従事者が働きやすい介護都市のアイデア」を提案したグループに、グローカル賞が授与されました。受賞したグループは工学院機械系博士後期課程2年のワン・ウェイチェンさん、環境・社会理工学院イノベーション科学系博士後期課程1年の小松祐さん、環境・社会理工学院融合理工学系修士課程1年の二木恵さんの3名です。
井村副学長は、「すぐには実現できない大きな構想を立てることも大切である」とコメントしました。
最後に、井村副学長は総評で、今回のプログラムでグループワークや協働作業について学んだことを活かして、積極的に、国際プログラムや共同研究に参加してもらいたいと述べました。
各グループの最終報告の概要は、グローカル・グローバル・スクールのウェブサイトで公開する予定です。
このサマースクールは、金子准教授が運営し、国際プログラム経験のある2名の博士後期課程学生ボランティア、ジェローム・シラさんと宮田智美さんがグループワークのファシリテーションを担当しました。