研究者たちが描く「新たな未来」を実現するためにはどんな科学技術が必要でしょうか?
東京工業大学は10月25日、未来社会DESIGN機構(以下、DLab)と科学技術創成研究院基礎研究機構 広域基礎研究塾(以下、広域塾)の共催で、オンラインワークショップ(以下、WS)を開催しました。DLabは東工大内のみならず、社会と共にワークショップなどを開催し、ありたい未来社会をデザインすることを目指し活動を続けています。広域塾は、異なる専門分野の研究者同士が自らの学術的興味を探究する、あるいは萌芽的な研究課題を見出す場を提供しています。
開催4回目となる2021年は、「私たちが思い描く未来シナリオを実現するためにはどんな科学技術が必要になるか」をテーマに、18名の塾生が参加し若手研究者が理想とする未来を考えました。理想の未来を実現するためにはどのような研究が社会から求められるのか。また、どのような技術で貢献できるのかを一緒に考え、既存のDLab未来シナリオをアップデートし、理想とする未来社会像を発表しました。
コロナ禍によって前倒しになった未来の先を考える
はじめに広域塾の塾長であり、DLabの副機構長も務める科学技術創成研究院の大竹尚登副研究院長からWSの趣旨について説明がありました。その後、塾生たちは5つのグループに分かれ、コロナ禍によって実現が前倒しされたDLab未来シナリオNo.8「おうち完結生活」について意見を交わしました。前倒しできたこととして「多様な働き方を許容すること」「家での時間のうち、生産する時間が増えた」「人生を新たに考える機会が増えた」「食を中心にオンラインンサービスが普及した」「自宅で過ごす(家族と過ごす)時間が増えた」などの意見が挙がりました。一方で、「対面と同じような人と人とのつながり」「開くエッセンシャルワーカーとの格差」「地方インフラの未整備」「快適さに資する技術は未開発」など、達成できていないことへも塾生たちは思考を巡らせました。
「コミュニティを自由に選び、つくれるようになる」未来を実現するには?
次に、DLab未来シナリオNo.4「コミュニティを自由に選び、つくれるようになる」から、実現に向けてボトルネックとなる、もしくはなり得る要素について、マインドマップを使いながら分解して考えを深堀りしました。深堀りしていくなかで、「異なるコミュニティ間の摩擦を解消する」「オンラインにも人権を」「バーチャル体験をリアル体験に近づける・バランスをとる」「コミュニティの保護」など、コミュニティで合意しておきたい多様な価値観や、社会制度などについてお互いの意見を出し合いました。その後、「ホログラムなど、発光体そのものを使った3D表現」「ヒトの動きのデジタルツイン[用語1]」など、既存の技術が今後、発展していく上での実現性、また、塾生の研究領域とも関連付けながら議論は進みました。
アップデートした未来シナリオからバックキャストしてテーマを追究する
WSの最後には、各グループによるアップデート版未来シナリオの発表が行われました。塾生らが新たに描いたシナリオを実現するためには、「発光素材の開発」「デジタルツイン技術」「センサー技術」など、塾生の興味や好奇心に立脚した研究テーマのさらなる探究が期待されます。今回のWSは、既存の未来シナリオを起点とし、そのアップデート版を想像することで、新たな研究テーマを持ち帰ってもらう機会となりました。参加した塾生からは、「自身の研究内容と無理矢理にでも関連させることで研究への理解が深まった。同時に、コストなどの制約条件を度外視したうえで実装された様子を具体的に思い浮かべることができた」との感想がありました。
今後もDLabでは若手研究者をはじめ、社会の人々と共に理想の未来を描き、あらゆる人々が理想とする未来を実現するための活動に取組んでいきます。
用語説明
[用語1] デジタルツイン : 現実世界にある情報をもとに、デジタル空間に現実空間のコピー(双子)を再現する技術。
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