東京工業大学の学生と東南アジアの大学生をつなぐTokyo Tech-AYSEAS(東工大・アジア理工系学生派遣交流プログラム)が開催されました。本プログラムは2013年から続く短期留学プログラムです。2021年度は初めてオンラインでの開催となり、東工大生11名、AYSEASメンバー大学からは24名が参加し、交流を深めました。
プログラム概要
TokyoTech-AYSEAS(Asia Young Scientist and Engineer Advanced Study Program)は、東工大生が東南アジアの国に赴き、現地・近隣諸国の大学生とともに、施設見学、ディスカッションを行う10日間の海外派遣プログラムです。
オンラインでの開催となった今年度、さまざまな団体、企業、個人の皆様の協力を得て、バーチャル見学やお話を伺う機会に恵まれました。
10年前にAYSEASの前身プログラムに参加した社会人2人には、海外の大学院への進学や現在の研究生活についてお話しいただきました。独立行政法人国際協力機構(JICA)ベトナム事務所と一般社団法人コペルニク・ジャパンからは国際援助の現場で大切なことについて教えていただき、参加者からたくさんの質問が寄せられました。また、株式会社日立製作所の鉄道プロジェクトバーチャル見学では、ホーチミン市がロックダウンとなったため工事現場からの中継はかなわなかったものの、多くの写真と動画を使ってプロジェクトについて説明いただき、臨場感ある見学となりました。さらに、環境・社会理工学院 融合理工学系の髙木泰士准教授によるアジアの開発と防災をテーマにした講義がありました。
プログラム最終日に行われるグループプレゼンテーションのため、参加学生は6つのグループに分かれ、プログラム中に設けられたグループディスカッションの時間やプログラム外の時間に話し合いました。今年の発表テーマは「企業やNGOを作ることを計画し(もしくはサービスや製品を考案し)、それについて発表しなさい」というものでした。最終日に発表されたグループプレゼンテーションの分野は、教育、観光産業、パンデミック下での災害対策、頭脳流出、公衆衛生など多岐にわたり、さまざまな制約がある中、参加者の努力と結束がうかがえる内容となりました。
AYSEASは本来、さまざまな国から参加する学生が寝食を共にして濃密な時間を過ごすことが魅力であるため、プログラム開始前にはオンラインでどれくらい親しくなれるのか、グループディスカッションはやりにくくないか、という危惧する声もありました。しかし、参加学生は、様々なツールを使ってプログラムの時間外にもプレゼンについて話し合ったり一緒に遊んだりしたようでした。修了式では、プログラムへの感謝のメッセージを集めて動画を作成し、サプライズで公開してくれる学生もいて、学生の工夫によりオンラインでも交流を深めることが可能であることが感じられる結果となりました。
スケジュール
7月 |
事前学習(東工大生のみ/オリエンテーション、英語ディスカッション練習、アジア理解講座) |
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8月23日(月) |
オンラインによる事前交流イベント |
8月30日(月) |
プログラム初日 |
8月31日(火) |
国際協力機構(JICA)ベトナム事務所バーチャル訪問 |
9月1日(水) |
日立製作所バーチャル訪問、グループディスカッション |
9月2日(木) |
講義「Development and Natural Disaster in Asia」 |
9月3日(金) |
グループディスカッション、東工大への留学説明会 |
9月6日(月) |
最終プレゼンテーション、修了式 |
AYSEAS 2021参加大学
- 日本:東京工業大学
- インドネシア:ガジャマダ大学、バンドン工科大学
- タイ:カセサート大学、キングモンクット工科大学トンブリ校、キングモンクット工科大学ラカバン校
- フィリピン:デラサール大学、フィリピン大学ディリマン校
- ベトナム:ハノイ工科大学、ベトナム国家大学ホーチミン市校工科大学
参加学生の体験談
飯干成美さん(環境・社会理工学院 学士課程1年)
「英語は使えるようになりたいけど、留学に実際に行くとなると少しハードルが高い。」と感じていたときにオンラインで他の国の学生と交流する機会が得られると知り、応募してみました。
初めは「オンラインだからそんなに他の学生と交流を深めることもできないのではないか。」と予想していましたが、予定されていたディスカッションや企業訪問だけでなく、プログラムの時間外にグループのメンバーとオンラインでディスカッションを行ったり、オンラインゲームを一緒にやったりと想像以上に交流を深められました。また、得意な楽器の演奏を披露するなど、家にいるからこそできるような交流の仕方もあり、とても楽しい時間になりました。
今回のプログラムを通して、アジアの他の国の文化や、海外で働く人達がどういった仕事をしているか、など多くのことを学びました。それと同時に、自分の語学力が不足していたり、日本の文化をうまく説明できなかったりと多くの課題点も見つかり、これからの学習のモチベーションを上げることにつながりました。
とても良い経験ができたと思います。ありがとうございました!
川口万太郎さん(生命理工学院 生命理工学系 学士課程3年)
自由な海外渡航が難しいこの時期に何かしら国際的なプログラムに参加できないかと考え、見つけたのがこのコースでした。オンラインということで気軽に参加できるようになっていたこともあり、迷わず応募しました。
プログラムは少人数での討論を主なコミュニケーションの場としており、グループのメンバーには大いに助けられました。自分は英語のみでのディスカッションの経験がなく、序盤は会話に入ることもままなりませんでした。しかし、プログラムの時間外にも何度もコミュニケーションの場を設け、密に接していくうちに、次第に打ち解けて会話に参加できるようになっていきました。プログラムのためのグループメイトというだけでなく、初めての海外の友人と言える関係を築くことができたことを非常に嬉しく思います。また、今はコロナウイルスという世界共通の話題があったからこそ、各国の対応の違いから始まり、異文化理解へとスムーズに移行できたと感じています。
もちろん、企業紹介やOB/OGの方による講演といった、グループワーク外でのアクティビティも有意義なものでした。自分のキャリアについて見直す機会も多々ありました。現地に行けない中、最大限の成果を得られるプログラムだったと思います。
今後はこのプログラムで学んだことを見つめ直し、実際の海外渡航への土台を作っていきたいと思っています。そして、プログラムで出会った友人たちと直接話せる機会が来ることを願っています。ありがとうございました。
ジャスティン・マージェリン・グアンゾンさん(ベトナム国家大学ホーチミン市校工科大学 修士課程1年)
学士課程でフィリピン大学ディリマン校に在籍しているころから東工大のAYSEASプログラムに興味がありました。幸運なことに、現在在籍しているベトナム国家大学ホーチミン市校工科大学(HCMUT)もAYSEASのメンバー大学で、プログラムに参加することができました。数多くの応募者から選ばれたことに感謝しています。
AYSEAS運営チームからプログラムのしおりが送られてきたときには、HCMUTからの参加者が自分だけとわかり、少し不安になりました。私は内気なので、知らない人たちと話すことが苦手だからです。しかし、事前交流イベントでハノイ工科大学からの参加者と話したときに私の不安は消え去りました。彼らとは自分の経験や知識を共有できただけでなく、様々な話題について自分の意見や考えを存分に話すことができました。アイスブレイキングセッションのためのベトナム紹介ビデオを一緒に作るのは本当に楽しく、新型コロナ蔓延後の生活をひととき忘れることができました。オンラインで開催されるプログラムであっても楽しむことができたのです。
最終プレゼンテーションのためのグループは、様々な国からの参加者で構成されていました。メンバーたちとアイデアを出し合ってプレゼンの準備をしたのですが、同じ国の参加者のみのチームであれば考え付かないような素晴らしいアイデアがでてきました。また、プログラム中は様々な団体、企業、NGOで働くプロフェッショナルの刺激的なお話を聞くことができました。大学で研究する若者として、たとえ理工系分野であっても文化に対する深い理解が大切であることを学びました。
また、AYSEASは、深く考えたことのなかった社会問題に気付かせてくれました。教育、公共交通機関、健康、文化など、さまざまな分野の問題について、短期、長期両面の解決策がなぜ必要なのかについても理解できました。たとえ自分はその問題から深刻な影響を受けていないとしても、私たちにはやるべきことがあり、自分には関係ないと見ないふりをすることはできません。技術者、そして科学者として、今こそ社会問題解決のために行動しなければなりません。
AYSEASでただひとつ残念だったことは、プログラムが1週間しかなかったことです。新しい友人たちともっと長く過ごしたかったですが、私にとって今年最良の経験となりました。プログラム運営チームに心からの感謝を送ります。プログラムで知り合えた皆さんに実際に会える日が待ち遠しくてなりません。
- Tokyo Tech-AYSEAS(東工大・アジア理工系学生派遣交流プログラム)|特色ある国際交流の取り組み|国際交流
- Tokyo Tech-AYSEAS 2019 実施報告|東工大ニュース
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