東京工業大学と港区立みなと科学館は、「中学生・高校生向け科学教室『量子コンピュータでパズルを解こう2022』」を9月3日に開催しました。本イベントは2019年1月に初開催された「中学生・高校生向け科学教室『本物の量子コンピュータを使ってみよう』」の第2回として、現地参加とオンライン参加のハイブリッド形式で行われ、全国の中学1年生から高校3年生まで約70名が参加しました。参加者は量子アニーリングの計算原理を学び、特設サイト上での計算を通じてパズル問題を解きました。
量子コンピュータは私たちの身の回りにある普通のコンピュータ(古典コンピュータ)とは動作原理が異なります。講義では、まず古典コンピュータの動作原理と組合せ最適化問題の計算の難しさを学びました。次に量子アニーリングマシン※1の動作原理とイジングモデルに基づいた"計算"方法を学びました。その後パズルのルール説明が行われ、参加者はTA(ティーチング・アシスタント)らのサポートを受けながら各自のペースで解き進めました。
途中、特別講演として、blueqat株式会社の湊雄一郎CEOが、仕事は数学と物理の勉強の日々であることや、アプリケーション開発の地盤が十分に整っていない中での研究開発の難しさを語りました。
パズルは暗算で解けるほど簡単なものですが、あえて量子アニーリングを使って解けるかどうかを楽しむように設計されています。参加者はパズルの問題文をイジングモデルで解釈し、特設サイト上でキメラグラフ※2に計算のためのバイアス※3を設定しました。アニーリング処理によって得られた量子スピンの組み合わせをパズルの答えとして再解釈し、適切に解けたかどうか判断します。想定通りの答えが得られるまで繰り返しバイアスの設定を見直しました。2種類の答えが想定される問題ではアニーリングによって約50%の確率で2種類の答えが得られるなど、量子計算ならではの問題もありました。
参加者からは「量子アニーリングのアルゴリズムが分かった」「パズルの仕組みが分かって面白かった」「後半の問題が難しかったので解説が欲しい」などのコメントがありました。みなと科学館からは「YouTubeで様々な科学実験が見られる時代だが自分の手で実験をして、家庭でできない実験は科学館を利用してほしい」と、講師の湊氏からは「10年後、20年後には量子プログラマの仕事が定着しているはずなので、若い皆さんにこそ学んでほしい」と参加者への激励がありました。
本イベントは、東京工業大学と港区との基本協定に基づき、港区からの支援を受けて開催されました。資料監修と量子アニーリングマシン利用はblueqat株式会社、資料作成と特設サイト作成はビネット&クラリティ合同会社(「東工大発ベンチャー」称号授与企業)の支援を受けて行われました。
一般に量子コンピュータと呼ばれる量子ゲート方式のマシンではなく、イジングマシン方式に分類されるアニーリングマシン(D-wave)を扱いました。
量子ビット間の接続を模式的に表した図
量子ビットのスピンに偏りを与えたり量子ビット間に"もつれ"を与えたりするための数値パラメータ
- 「港区と国立大学法人東京工業大学との連携協力に関する基本協定」を締結|東工大ニュース
- 「量子アニーリング」理論を応用したコンピュータが登場 — 西森秀稔|研究ストーリー|研究
- 港区立みなと科学館
- blueqat株式会社
- ビネット&クラリティ合同会社