東京工業大学附属科学技術高等学校(以下、附属高校)は、10月27日に環境省主催の“ぐぐるプロジェクト” 「ラジエーションカレッジ(放射線に関する学びの場の創生)」セミナーを開催しました。この“ぐぐるプロジェクト” 「ラジエーションカレッジ」は、環境省が放射線の健康影響に関する情報発信を展開する取り組みです。「ぐぐる」とは「学び、知をつむぐ」、「人、町、組織をつなぐ」、「自分ごととしてつたわる」の語尾からとったもので、放射線の健康影響について、「知る」「学ぶ」「決める」「聴く」「調べる」の5つの視点からさまざまなことに取り組みます。
主に大学生、大学院生、専門学校生を対象としていた本プロジェクトは、2021年、全国の高校に先駆けて、附属高校で開催された「ラジエーションカレッジセミナー特別講義」により、2022年には高校生も本プロジェクトの対象に加えられました。
附属高校での本セミナーには、1、2年生の希望者22人が参加しました。“ぐぐるプロジェクト”の5つの事業の中から「知る:論文を科学的に読み解く」と「学ぶ:ラジエーションカレッジ」とのコンビネーションで進められました。
講義1:「知る:論文を科学的に読み解く」
講師:福島県立医科大学医学部 アミール偉(いさむ)助教(放射線健康管理学講座)
2021年にも講義を行ったアミール助教は、東工大の卒業生であり、大学院博士課程在学中に附属高校で理科・化学の講師を務めていました。
講義では「情報の信頼性を考える」と題し、身近な情報をはじめ科学論文やその反論論文も例示しながら、情報を見極める力がいかに大切であるか、情報を鵜吞みにせず少し立ち止まること、多角的な視点を持って物事を捉えることが重要であると話しました。
因果関係と相関関係の違い、書籍とネット記事の違いにも触れ、生徒たちはなぜ風評被害が起こるのかについて考えました。講義は双方向にコミュニケーションできる環境で行われ、ウェブツールを使った質疑応答では多くの質問が寄せられました。
講義2:「学ぶ:ラジエーションカレッジ」
講師:環境省大臣官房環境保健部放射線健康管理担当参事官室 松村悠子氏
松村氏が“ぐぐるプロジェクト”のコンセプトについて紹介し、「ラジエーションカレッジ」セミナーの今後の展開について説明しました。
生徒からの質問と回答(抜粋)
Q1.
情報統制が行われている国を例に、それらの政府が出す情報には政府の意図が含まれているため必ずしも信頼できるとは感じないが、真に信頼できる情報とは何だとお考えですか。A1.
情報の信頼性を自分自身で担保するためには、複数の情報元(例えば、複数の新聞記事)から情報を得ることが、第一に必要なこととなります。Q2.
放射線というひとつのエネルギーが、身体に悪影響を及ぼすことは多くあるのではないでしょうか。A2.
私達は、普段の生活の中でも常に放射線を浴びています(これを「被ばく」と呼びます)。放射線はエネルギーの強い波ですから、多かれ少なかれ、放射線被ばくによって私達の体の細胞が壊されることはあります。しかし、それと同時に、我々の体の細胞は壊された箇所を修復する機能を持っています。この機能が上手く働かず、壊された細胞が完全に修復しきれないときに影響がでることがあります。Q3.
私は今現在知らないことが多いのですが、存在すら知らないことを知るために何ができるでしょうか。A3.
(難問だったため)アミール助教は会場全体に問いかけ、皆で考えました。