東京工業大学InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム(ISE)は1月16日、第4回公開シンポジウムを大岡山キャンパスとオンラインによるハイブリッド形式で開催しました。同時通訳で英語でも配信したシンポジウムには、学内外から314人が参加しました。
年1回開催するこのシンポジウムは、ISEの理念と活動を広く一般に報告する機会として位置づけられており、4回目となる今回は「カーボンニュートラルを実現する水素エネルギーの将来」をテーマに開催しました。
開会のあいさつでは、益一哉学長が東工大の総合エネルギー科学の取り組みについて語り「ISEと、Tokyo Tech GXI(グリーン・トランスフォーメーション・イニシアティブ)の連携によりカーボンニュートラル社会の実現に貢献していきたい」と述べました。
シンポジウムの趣旨説明では、チェアの木村好里教授(物質理工学院 材料系)が「カーボンニュートラル実現の切り札としての水素エネルギーを、広く社会に普及させて活用するためにはどのようなシナリオを考えるべきなのか。このシンポジウムを通して、その実現に向けた課題解決策を考えていきたい」と述べました。
基調講演には、いち早く「水素」の将来性に着目し事業展開している川崎重工業株式会社の橋本康彦代表取締役社長執行役員/最高経営責任者を講演者として招きました。「つぎの社会へ、信頼のこたえを―水素サプライチェーン構築とディジタル・ロボティクスによる社会課題への取り組み―」と題して、ロボットと水素という広い観点から、カーボンニュートラルを実現するべき将来の社会像を描きました。
続いて、本コンソーシアムからは「InfoSyEnergy水素エネルギービジョンの概要」と題して、会員企業との情報交換とディスカッションを通じて創り上げた水素ビジョンの概要を、代表の伊原学教授(物質理工学院 応用化学系)が講演しました。電力系統モデルを導入した経済モデルを使った最適化によって、カーボンニュートラルを実現する2050年に予想されるグローバル水素、ローカル水素の総量、および鍵となる技術開発などについて述べました。
さらに、本学科学技術創成研究院 化学生命科学研究所/物質・情報卓越教育院長の山口猛央教授から「水素社会とアニオン交換膜を用いた水電解による水素製造」と題して、新材料を用いた水素製造について最新の研究成果が発表されました。
後半のパネルディスカッションでは、シンポジウムの標題となる「カーボンニュートラルを実現する水素エネルギーの将来」をテーマに熱い議論が交わされました。パネリストとして川崎重工業株式会社で世界初の液化水素運搬船の開発を手がけた西村元彦専務執行役員をはじめ、水素とともに次世代燃料として注目されるアンモニアの利用技術を手がけている株式会社IHIの須田俊之プログラムディレクター、分散型エネルギーとしての水素利用の観点から三菱電機株式会社先端技術総合研究所の森一之主席技師長のほか、本学から山口猛央教授、エネルギー・情報卓越教育院の濱崎博特定講師、モデレーターとして伊原学代表が登壇しました。
パネルディスカッションの締めくくりとして伊原代表は「水素エネルギーの導入は、カーボンニュートラルの実現に必須であり、グローバル水素(輸入水素)、ローカル水素(国内水素)が、それぞれの特長を生かしながら、社会に導入されていく必要がある。そのため、カーボンニュートラルに向け、今とは大きく異なる、より高度で複雑化したエネルギーシステムへの変革が求められる。その推進には、エネルギー学理と情報科学の融合分野の開拓が鍵となる」と述べました。そして「この挑戦的な課題に、異なるセクター間で連携して取り組んでいこう。InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアムは、そのグループづくりの手助けをしていきたい」と加えました。
閉会のあいさつでは、渡辺治理事・副学長(研究担当)が、参加者・講演者への謝辞に加え「このシンポジウムは、水素の重要性を知る絶好の機会となった。本学では、学術をベースに企業とチームを組んでカーボンニュートラルに進んでいくとともに教育にも力をいれていく」と述べて会を閉じました。
- InfoSyEnergy研究/教育コンソーシアム
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