7月10日、東京工業大学 リベラルアーツ研究教育院(ILA)は「池上彰先生に『いい質問』をする会6」を開催しました。ILAの池上彰特命教授から「いい質問ですね」のひと言を引き出せるよう、教授と直接対話できる場として2017年にスタートしてから、6回目の開催です。1つの会場に集まるのは5年ぶりで、オンライン配信も同時に行いました。
今回は、2024年度に統合予定の東京医科歯科大学と、東京工業大学附属科学技術高校からも参加者を募り、会場とオンラインを合わせて総勢208人が参加しました。
国際情勢、教育、日本の財政からAIの利用まで、幅広い好奇心に応える
今回のトピックスは「経済とAIと戦争と」でした。会場とオンラインのそれぞれから寄せられた12の質問について、池上特命教授は休むことなく、ノンストップで回答していきました。
「戦争」に関するトピックスでは、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、戦争の終結方法についての関心が高く、グローバル社会において生じる国家間の緊張に対処する方法に関して疑問・質問が寄せられました。
池上特命教授は過去の戦争事例を具体的に挙げながら、「これまでも武断派を押さえることはできなかった」とし、「国同士の話し合いで戦争が終結することはあり得ず、和平は実利的な妥協によって成立する」と、外交による平和的な紛争解決の難しさ、建前と現実に大きな差があるリアルな国際情勢を説明しました。
「経済」に関するトピックスでは、東京医科歯科大学や附属高生から、「高齢者と医療」「大学の授業料の無償化」など、それぞれの立場に即した質問が出ました。これらの質問は、「日本の移民の受け入れ状況」や「少子化対策の一環である教育費」をどのように考えるかなど、現代史を担当する池上特命教授ならではの幅広い問題提起へとつながっていきました。
そして、社会全体を根本的に変えるAI技術の可能性とリスクについては、「AIは人間の活動に大きな影響を及ぼすだろうという懸念を踏まえた上で、AIに学習させるのも、AIが出した解答を検証するのも人間であると認識し、AIとの対話を繰り返しながら自分自身の思考力、質問力を高めていく必要がある」と説明しました。また、「すべてをAIに任せれば良いというのではなく、人間がAIをどう使うのかが重要だ」と強調しました。
問題意識を持ち、現実を良い方向へ導く方策を考え続けて
学生たちから寄せられたすべての質問に答える中で、池上特命教授は一貫して、「問題意識を持つことの重要性」を語りました。そして、「発信されている情報が事実か否かを自身で判断する力をつけ、戦争や政変の悪化など、絶望的な気持ちで受け入れざるを得ない現実に直面した時も、どうすれば少しでも状況が良くなるかを問い続け、現状が良くなる方策を考え続けてほしい」と、学生にエールを送りました。
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