東京工業大学で進行中の教育改革の端緒として「国際フロンティア理工学教育プログラム」が始まりました。本年度その試行として、類ごとに国際的に著名な科学者・技術者を招聘して学部1年次学生向けの特別講義を実施することとなりました。
4類では、ホンダジェットエンジン開発者で本学卒業生である株式会社本田技術研究所 取締役 執行役員 航空機エンジンR&Dセンター担当 藁谷篤邦氏を招き、「ホンダの夢を世界の空に ホンダにおけるジェットエンジン開発物語」と題した講演をしていただきました。1月27日、大岡山キャンパス70周年記念講堂にて、「機械工学系リテラシー※」特別講演として開催されました。
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- 機械工学系リテラシー:
4類の新入生を対象とした通年の講議。「4類系学科の専門教育の導入科目」と位置づけ、エンジニアリングセンス養成の第一段として、これから学ぶ機械工学を中心とする工学の広がりと奥深さを種々の実体験を通じて楽しく理解させる。
講義の企画にあたり、4類関連学科の教員で構成される対応委員会を設置して、講義の内容について検討し、国際フロンティア理工学教育プログラムの趣旨を考慮するとともに、4類ならではの企画を立案するために以下の方針を設定しました。
- 1.
- 最新の科学技術、特に機械システム技術に関する内容の講義とすること
- 2.
- 最新の科学技術の開発に直接携わり、国際的に活躍、評価されている日本人エンジニアに依頼すること
- 3.
- 開発リーダーに相当するエンジニアを選出し、エンジニアの個性が感じられる講義をしてもらうこと
- 4.
- 実物に接する機会を設けること
その結果、講演主題を航空機とし、講師として本学機械工学科を卒業され、株式会社本田技術研究所でジェットエンジン開発リーダーを務めた藁谷篤邦氏を選出しました。講演に際しては、機体およびジェットエンジンモデルの展示を依頼しました。「機械工学系リテラシー」の受講生は約220名であり、学内から広く聴講を許すことにしたため、70周年記念講堂を会場としました。
当日午前中にモデルの搬入および演壇上への設置などの準備を終え、12時50分に開場、13時20分より開始しました。約80分間の主な講義内容は以下の通りでした。
- 1.
- イントロ
Hondaの紹介、ビジネスジェットとは、飛行機の進化におけるエンジンの役割 - 2.
- Hondaにおけるジェットエンジン開発
- 研究編
目標は低価格・低燃費、セラミックガスタービンでのトライ、コンベンショナル設計によるベース機試作、軽量化、低エミッション、高信頼性、加工技術、各種テスト - 事業化編
航空機エンジン事業の収益構造、GEとの合弁事業化、事業化へのハードル
- 研究編
- 3.
- まとめ
日本の会社としての課題とチャンス、今後の方向性、学んだこと
さまざまな画像やビデオ映像を用いて、ジェットエンジンの歴史、ホンダにおける開発経緯、性能保証のための各種テストの内容などが解説されました。講義の最後は「決してあきらめない」ことが最も大事であるとのメッセージでまとめられました。講義終了後には質疑応答が30分間以上にわたり続けられ、多数の質問を受けて、講義を終了しました。その後、壇上に展示したモデルを見学するために大勢の学生が残り、実機を興味深く見入る様子がうかがえました。
聴講者は約300名にのぼり、アンケートでは大多数から好評の意見が寄せられました。初年度学生には少々難しいと思われる専門用語や内容が含まれていたものの、動機付けの講義として充分な効果を発揮し、その役割を果たしました。藁谷氏からは、今後も同プログラムにより実施予定の授業科目「科学・技術の最前線」などに協力いただけるとの心強い支援の言葉をいただきました。
お問い合わせ先
国際フロンティア理工学教育プログラム事務室
Email : kokusaif@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3190