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電子商取引の経営に科学の光を当てる―段階的成長モデルを提案―

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概要

東京工業大学大学院イノベーションマネジメント研究科博士課程(当時)の林滋と比嘉邦彦教授は、電子商取引(EC:E-コマース)では信用と価値を段階的に高めていくことが顧客の購買行動に結びつくというECの段階的成長(SG:Staged Growth)モデルを提案した。

SGモデルを使用することにより、ECの経営者らはビジネスや顧客について科学的に分析することが可能となる。

研究の背景

世界市場においてECの取引額は増加し続けている。従来型の商取引に比べ多くの利点を持つECではあるが、ECビジネスで成功することは簡単なことではない。

今のところ、多くのECビジネスの経営者らは学習からの推測、経験法則、表面的な数値データ、予感などの非科学的な方法で意思決定を行っている。

研究成果

東工大の林氏と比嘉教授は、信用と価値の要素が相互に影響しあうECの段階的成長モデルを提案した。具体的には、第1段階は「一時的な信用構築」と「価値の提示と普及」、第2段階は「信用構築」と「同質の価値の継続的供給」、第3段階は「ブランドの確立」と「新しい価値の創造や追加」というモデルである。

ここでいう信用と価値は、商品・サービスそのものに加え、生産者やECビジネス独自の信用と価値も対象となる。例えば、有名ブランドの新商品は、商品そのものの信用・価値はまだ認識されていなくても、生産者独自の信用・価値が顧客の認識に影響を与えると考えられる。

実際のECビジネスのデータを基にSGモデルの有効性を検証した。その結果、ECビジネスの顧客の購買行動は、信用と価値の要素によって約80%説明可能であった。また、7名のECビジネス経営者へのヒアリング調査からSGモデルの実務的な有効性も確認された。

今後の展開

SGモデルを使用することにより、実務家はマーケティング活動ごとの効果分析が行え、研究者は顧客の購買行動の遷移状況分析や信用と価値の相互影響の分析などが行えるようになると期待される。

ECの段階的成長モデル

図1. ECの段階的成長モデル

論文情報

掲載誌 :
日本経営工学会論文誌 60, 191-196 (2009)
論文タイトル :
Analysis of Differentiating Factors among Trust and Value Stages in e-Commerce Growth Process.
(「E-コマースの成長過程における信用と価値の段階差を生む要素の分析」)
著者 :
林滋、比嘉邦彦
CiNii :

問い合わせ先

大学院イノベーションマネジメント研究科
教授 比嘉邦彦
Email : khiga@craft.titech.ac.jp
Tel : 03-3454-8732


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