英国王立科学研究所(Royal Institution、以下 Ri)で毎年クリスマスの季節に開かれるクリスマス・レクチャーが、読売新聞社主催、東京工業大学共催により、この春竣工したばかりの東工大レクチャーシアター(TLT)で開催されました。
クリスマス・レクチャーは英国で190年前に始まり、日本でも1990年から毎年夏に開催されており、25回目となる本年、東工大で開かれることになりました。
内容は、昨年Riで開催された本場のクリスマス・レクチャーのうちの一つである「電話」を、日本風、東工大風にアレンジされました。「『すごい』を伝えよう」と改題し、歴史的装置・技術、原理的実験、先進技術等を交えながら、五感の伝達を目標とするものです。
公演は9月12日・13日の両日、午前・午後の1回ずつ計4回行われ、講師はRiと同じ、マンチェスター大学のダニエル・ジョージ教授が務めました。10数回にも及ぶ台本の推敲を重ねながら、実験装置の準備・調整と並行してTLTの設備・機器の習熟も兼ねて、6回ものリハーサルを重ね本番に臨みました。
前日9月11日には本番さながらの最終リハーサルで確認を終えると、18時からジョージ教授、Riスタッフ、本学、読売新聞社、英国大使館等からの関係者出席のもと、レセプションが開かれ、本番に向けての雰囲気が盛り上がりました。
公演第1回目は、東工大関係者向けに特別に設けられた部で、学生、教職員、卒業生などが一般の参加者に混じって参加しました。公演の開始にあたっては、三島学長、英国大使館、ついで来年度から始まる新教育システムの、とくに1年生の教育プログラムを検討するグループの代表者である大竹教授から挨拶がありました。そして、いよいよジョージ教授による公演が始まりました。
ジョージ教授はまず、グラハム・ベルが発明した電話をとりあげ、ベルが用いた装置を再現し、音声(聴覚)の伝達をクリアすることから始めました。次に視覚に移り、バケツとお手玉で映像記録センサーの作動原理を説明した後、最新デバイスによる映像抽出の実演を行い、映像の送信に使われる光ファイバーの原理について、バケツと懐中電灯による簡単な実験で示しました。
ここから、楽屋裏に待機した本学修士課程2年のマイケルさんとジョージ教授のやりとりが始まります。マイケルさんの映像を、薄い板状に立ち昇る霧でできたスクリーン(fog screen)に投影することで、ステージから離れた場所にいるマイケルさんが、あたかもステージにいるかのような感覚を観客に味わわせました。つづいて触覚に移り、マイケルさんが離れた場所からステージのロボットハンドを操作するタイプのパワーアシストハンドを登場させ、fog screenを介しながら、楽屋裏とステージとの間で触覚が伝達できるということを示しました。
残りの味覚・嗅覚についても、楽屋裏とステージとを結びながら、イギリスで開発された電気デバイスにより味覚を体験させる実験が行われました。そして、携帯のイヤホンジャックに差し込むことで、特定の匂いを噴射できる装置を用い、匂い(嗅覚)を伴うことで味覚が強調されるということが示されました。
このように1時間15分程度の間、次から次へと参加者を飽きさせない実験、実演が連続しました。その都度、クリスマスレクチャー実行委員会副委員長の齋藤卓志准教授が、軽妙な司会で参加者に協力を呼びかけました。そのため、会場全体が一体感で盛り上がり、楽しく魅力ある公演となりました。
いずれの実験にも子どもたちをはじめとする参加者の積極的な協力があり、クリスマス・レクチャー本来のねらいである、参加型講義のスタイルを維持することができました。
問い合わせ先
ものつくくり教育研究支援センター
国際フロンティア理工学教育プログラム担当
特命教授 津田 健
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