大岡山蔵前ゼミは、東工大の全学同窓会である蔵前工業会の東京支部が主催する、卒業生と学生の交流の場です。日本社会や経済をリードしている先輩を講師に迎え、これから社会に出る大学生・大学院生に、講演会・懇親会をとおして、様々な情報提供、意見交換を行っています。
10月30日、東工大蔵前会館にて第26回大岡山蔵前ゼミが開催されました。今回は「鉄鋼技術の進歩」と題して、第一部「これまで/エッフェル塔から東京スカイツリーへ」をJFE物流株式会社 代表取締役社長(元 JFEスチール(株)専務執行役員 東日本製鉄所長)小俣一夫氏、第二部「そして今/熱間圧延におけるTMCP(化工熱処理)技術について」をJFEスチール株式会社 東日本製鉄所 熱延技術室長(部長)和田武司氏が講演しました。学生98名、社会人49名(教職員8名、一般1名を含む)、計147名が参加しました。
JFEは、かつて「鉄は国家なり」と呼ばれた日本の誇る鉄鋼業界のトップ企業の1社であり、小俣氏からは技術に関する話や、日本の製鉄業界の変遷、現在の海外の競合相手の会社とのポジショニングに至るまで、参加者にとって非常に興味深く充実した内容になったようです。
「当社が鉄鋼材料を受け持った東京スカイツリーは、技術的側面では、エッフェル塔で使用された材料の3~4倍の高強度で溶接性に優れたものが使用されており、高硬度化・溶接性と靭性の両立化が最先端の技術で実現されています。その構造自体も、東京スカイツリーのパイプトラス構造という非常に立地面積を最小化できる最新構造を採用しました。この技術により、エッフェル塔や、東京タワーの330m前後の高さの建築物で、土台の径がそれぞれ、125m、80m必要だったものが、その約2倍弱の634mの高さを誇る東京スカイツリーの土台の径が、なんと70mですんでいます。」と熱を持って話しました。
また、小俣氏は、世界の鉄鋼の生産量について、現在は階段の踊り場に来ていると表現し、中国1か国の爆発的な生産量の伸びや、世界中で行われている鉄鋼メーカー同士の合併・買収による、急激な業界内のポジショニングの変化、再編成の話など、非常に多岐にわたる鉄鋼業界の情報が満載の講演となりました。
続いて和田氏からは、TMCP技術を熱間圧延プロセスに導入する計画の立上げから、設備完成まで具体的に映像を交えながら分かりやすく説明がありました。
質疑応答では、学生から入社後どのような仕事の担当になるかという質問があり、両氏は自身の経験を踏まえ、具体的に回答しました。
講演会に引き続き、学生と卒業生の懇親会がロイアルブルーホールで開催されました。現役学生の蔵前工業会の窓口である学生分科会広報班の紹介や、JFEスチールの若手技術者と学生とのセッションも行われ、社会人と現役学生の交流が大いに深められたようです。
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