将来の水素利用体系に関する、総合的かつ技術的な検討を産学官が連携して推進する組織として、「東工大グローバル水素エネルギーコンソーシアム」が発足しました。
この発足を記念したシンポジウムが、11月26日、東工大蔵前会館で開催されました。当日は300人を超える参加者が集まり盛況となりました。三島良直学長は、冒頭のあいさつで「とてもチャレンジングなコンソーシアムで、成長していってほしい」と期待を寄せると、谷明人経済産業省技術総括審議官も「このコンソーシアムが関連する個別技術のまとめ役となってほしい」と強く要望していました。
コンソーシアムの全体的な構想については、コンソーシアムの代表でもある岡崎健特命教授(ソリューション研究機構)が説明し、「燃料電池以外の水素の利用技術もさまざまに抱合し、将来の水素利用体系について総合的な検討を、技術面に重点を置きながらやっていきたい」との方向性を示しました。
コンソーシアムの目的については、伊原学教授(化学工学専攻)が説明し、「関連する技術を中立的に評価するためにその基盤の構築を目指すとともに、ボトルネック技術を明らかにして、その要素技術の開発・実証を行う」と言明しました。
その後、このコンソーシアムに参加する11の企業・組織から取り組みについてのプレゼンテーションがありました。
「未利用資源"褐炭"から造るクリーン水素サプライチェーン構想」
川崎重工業株式会社 西村元彦氏 (水素チェーン開発センター副センター長、理事)
西村氏はオーストラリアの褐炭から水素を作り、サプライチェーンを作り上げる構想を紹介しました。「SPERA水素システムと今後の展望」
千代田化工建設株式会社 岡田佳巳氏 (技師長)
岡田氏も水素サプライチェーンに触れ、既存のインフラを使うプランを解説しました。「弊社酸素吹き石炭ガス化技術の水素製造技術への適用について」
電源開発株式会社 作野慎一氏 (技術開発部研究推進室上席課長)
水素を製造する技術に酸素吹き石炭ガス化技術を適用させる取り組みを紹介しました。「水素社会への取り組みについて」
三菱商事株式会社 大槻晃嗣氏 (地球環境・インフラ事業グループ、環境事業本部 環境 R&D 事業部 事業部長)
大槻氏は、水素を運ぶ技術ができれば、例えば赤道上の太陽光発電で作ったCO2フリー水素を運ぶことも可能だと話しました。「水素に関する取り組み」
東京ガス株式会社 藤田顕二郎氏 (エネルギーシステム研究所長)
藤田氏は、水素を導入していく3ステップ(燃料電池の普及→水素自動車用の本格普及→化石燃料の代替)をわかりやすく説明しました。「大阪ガスの水素エネルギーに関する取り組み」
大阪ガス株式会社 田中琢実氏 (技術戦略部 企画チーム)
田中氏は高効率の家庭用・業務用・産業用の定置用燃料電池の導入と水素ステーションの整備に貢献したいと語りました。「イワタニの水素事業のご紹介」
岩谷産業株式会社 中島康広氏 (プロジェクト部マネージャー)
中島氏も、水素自動車の普及に向けた国内の水素供給体制の確立を目標に掲げました。「水素供給 ―つくる、はこぶ、ためる― への取組みと課題」
JX日鉱日石エネルギー株式会社 斎藤健一郎氏 (中央技術研究所上席フェロー)(東京工業大学 AESセンター 特任教授)
斎藤氏は、まずは化石燃料由来の水素で水素自動車の普及を支え、長期的には再生可能エネルギーによる水素の活用に向かいたいとの意向を示しました。「CO2フリー水素システム ―普及の可能性と今後の動向―」
一般財団法人 エネルギー総合工学研究所 坂田興氏 (プロジェクト試験研究部部長、参事)
坂田氏は、水素の製造・輸送・貯蔵の技術開発は、今まで結びつかなかったものが結合しイノベーションを引き起こすとの見解を披露しました。「水素利活用に向けた高砂熱学の取組み」
高砂熱学工業株式会社 加藤敦史氏 (技術研究所 主査)
加藤氏は、CO2の排出量が多い業務部門への水素利活用技術について紹介しました。「株式会社日本製鋼所における水素社会に向けた取り組みについて」
株式会社日本製鋼所 久保和也氏 (システム技術グループ主任研究員)
久保氏は、水素を貯蔵する技術をベースに蓄圧器や圧縮機、貯蔵合金の開発の取り組みを報告しました。
東京工業大学の取り組みについては、3人の教授が説明しました。加藤之貴教授(原子炉工学研究所)は水素エネルギーの関連研究を紹介し、平井秀一郎教授(環境エネルギー機構長)は、燃料電池の関連研究を解説しました。山田明教授(電子物理工学専攻)は、数多くの太陽光エネルギー関連研究を紹介しながら、人材育成から先端研究を一貫して推進していることを強調しました。
最後に、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議議員の久間和生氏が講評しました。「米国、欧州、中国と戦っていくには、オールジャパン体制で圧倒的に強い基盤技術を創出することが重要で、国内の企業や大学が連携するこの取り組みは素晴らしい」と熱をもって話しました。閉会のあいさつでは安藤真理事・副学長(研究担当)が「大変先進的で素晴らしい取り組みで、何年後に何ができているのか明確になっていくことが楽しみ」と期待を寄せていました。
お問い合わせ先
グローバル水素エネルギーコンソーシアム事務局
Email : ghec@ssr.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3335