東京工業大学附属科学技術高等学校(以下、附属高校)の科学部では、はやぶさ2の打ち上げにあわせて2014年より、展示物「ピタゴラはやぶさ2」を製作しています。これは、NHKのピタゴラスイッチでおなじみのピタゴラ装置を使って、はやぶさ2のミッションの旅路を紹介するものです。子どもから大人まで大勢の人に、「はやぶさ2のミッションの内容や真価を“楽しく”“実感”してもらいたい」という考え方で作られました。
実物は、附属高校の文化祭「弟燕祭」で二日間限定の展示でしたが、現在はYouTubeで公開しています。
二年目の今年は2015年10月3、4日の「弟燕祭」で「ピタゴラはやぶさ2 Season2」が披露されました。小惑星Ryugu(1999JU3)へ着地寸前の姿で、約1メートルの高さにそびえ、その周りに縦横無尽にピタゴラ装置が巡らされています。
今年紹介しているミッションは「スイングバイ」「軌道調整」「安全退避」「クレータ生成」「サンプル採取」の五つです。これに、打ち上げと帰還の二つの要素が加わり、参加者はわずか30秒余りではやぶさ2の旅路を辿ることができます。
参加者体験型装置
目的地の小惑星Ryuguへと伸びた一筋のクモの糸を進むような、はやぶさ2の難業を疑似体験することができます。
参加者がプール用の空気入れを踏むと、ストローで作られたでH-IIロケットがリフトオフし、その後ロケットに弾かれるようにして、はやぶさ2(直径16ミリの鉄球)が旅を開始します。
世間で話題になった「スイングバイ」は、斜面の勾配と磁石を使い目に見えないコースを作ることで再現しています。鉄球の勢いがよすぎればコースアウトしてしまうため、力の調整が難しいです。続く「軌道調整」では、参加者がコントローラで進路を決めることができます。
はやぶさ2ならではのミッションの装置
はやぶさ2は、Ryuguから地球生命の原材料を含むと考えられるサンプルを持ち帰るため、金属片をRyuguに打ち込んで人工クレータを作り、新鮮な内部を表出させてサンプルを採取します。この時、事前にRyuguの背後に回り込み、打ち込みの際の衝撃を回避してから再び採取位置に戻ります。これは、はやぶさ2ならではの高度な技術ミッションです。
「ピタゴラはやぶさ2」では、「安全退避」として、Ryuguを取り巻くドミノによる軌道を、赤い退避ゾーンから安全な青いゾーンへと駆け抜けていく様子で表現しています。そして、続く「クレータ生成」では、宇宙風化した表面として茶色いココアパウダー、その下層に白い小麦粉層という二層構造の疑似小惑星表面に金属球を落とし、内部のフレッシュな白い小麦粉層が飛び散ってクレータを描く様子を、その場で楽しみながら体験できるようになっています。
東京工業大学附属科学技術高校 科学部顧問 成田彰のコメント
科学部が10年前に宇宙技術班を立ち上げた頃、ほとんどの高校生にとって、宇宙技術は、手の届かない憧れるだけのものでした。その後、東工大ものつくり教育研究支援センターによる「ロケットガール&ボーイ養成講座・東京チーム」に参加の機会を得て東工大生と一緒にハイブリッドロケットを作る体験を経て、今、自分たちの手で模擬人工衛星「缶サット」を作り、高校生対象の競技会「缶サット甲子園」に出場しています。そして、小さいながらも自分たちの模擬宇宙ミッションのプロジェクトを動かして、その過程にある困難と克服、失敗と復活を知りつくしています。
そんな自分たちならではの仕事として、はやぶさ2のミッションの難度をピタゴラ装置の動作に置き換えて、そして、それを楽しく体験していただくことを思いつきました。憧れるだけではなくなった高校生たちの手による「ピタゴラはやぶさ2」で、おもしろさの中にはやぶさ2の凄さと真価を見つけ、ともに宇宙技術の魅力を実感していただければと願っています。
「ピタゴラはやぶさ2」は、2020年のはやぶさ2の帰還までバージョンアップして行く予定です。ぜひ附属高校の弟燕祭(例年10月実施)で、現物を前にして、ピタゴラ装置が描くミッションに楽しくハラハラドキドキしながら、はやぶさ2(そして、他の探査機や人工衛星、ロケットも)が成し遂げている偉業を御一緒に確かめて下さい。
お問い合わせ先
東京工業大学附属科学技術高等学校 科学部
Email : sci_club@hst.titech.ac.jp
Tel : 03-3453-2251