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高温高圧下における水+炭化水素混合系の液液相転移を解明

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概要

東京工業大学大学院理工学研究科化学工学専攻の下山裕介准教授は、水の臨界点 (374 ℃,218 気圧、用語1) 付近の高温高圧下で形成される水+炭化水素混合系の液液平衡(用語2)において、水リッチ相と炭化水素リッチ相の上下位置関係が、圧力変化によって逆転する液液相転移(用語3)を発見した。

研究の背景

高温高圧下における水+炭化水素2成分系では、気液・液液・気液液平衡といった複雑な相挙動を示す。これらの相挙動は、軽質炭化水素や重質炭化水素といった炭化水素の種類によって大きく異なり、軽質炭化水素+重質炭化水素から成る炭化水素混合系では、水+炭化水素2成分系と比較して、より複雑な相平衡が形成されると考えられる。

研究成果

温度一定下において、水+軽質炭化水素+重質炭化水素系の液液平衡を形成させ、圧力を操作した結果、高圧条件では上相が水リッチ相、下相が炭化水素リッチ相となり、低圧条件では、上相が炭化水素リッチ相、下相が水リッチ相となることが確認された。さらに、液液相転移が生じる圧力について、重質炭化水素の供給組成や、軽質炭化水素の種類が及ぼす影響を把握した。これらの結果は、高温高圧水を利用したオイルサンドやビチュウメン(用語4)等の超重質油改質プロセスにおいて、改質反応工程や分離・精製工程での相状態を明らかにする上で不可欠な知見となる。

今後の展開

幅広い温度・圧力条件、ならびに多種の炭化水素混合系における液液相転移の把握を目指し、本研究で得られた実測データを基に、液液相転移を再現する理論モデルの構築が期待される。

用語説明

用語1: 臨界点
気液相が共存する蒸気圧線の終点。臨界点では、気相と液相の区別がつかなくなる状態となる。

用語2: 液液平衡
2液相が共存した状態で、無限時間放置した状態で液相が巨視的に変化せず、熱力学的に安定となる状態

用語3: 液液相転移
液液平衡において、上下相の位置が入れ替わる現象

用語4: ビチュウメン
堆積岩に含有される石油、タール、アスファルト等の重質油成分

高温高圧水+炭化水素混合系の液液相転移
高温高圧水+炭化水素混合系の液液相転移: 高圧条件において上相である水リッチ相が、低圧条件では下相となる。

論文

雑誌名
The Journal of Chemical Thermodynamics 55, 1-6 (2012)
論文タイトル
Phase transitions on (liquid + liquid) equilibria for (water + 1-methylnaphthalene + light aromatic hydrocarbon) ternary systems at T = (563, 573, and 583) K.
Digital Object Identifier (DOI):
執筆者
東郷昌輝、稲守由輝、下山裕介

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