Quantcast
Channel: 更新情報 --- 東工大ニュース | 東京工業大学
Viewing all 4086 articles
Browse latest View live

基礎研究機構 オープニングセレモニー開催

$
0
0

最先端科学技術を担う若手研究者を育成する具体的かつ持続的な仕組みとして東京工業大学が設立した基礎研究機構(小山二三夫機構長)のオープニングセレモニーが、5月24日、東工大すずかけ台キャンパスS8棟レクチャーホールで開催されました。益一哉学長ら本学関係者のほか、本機構の塾生や取材記者ら出席者は総数100名を超える催しとなりました。基礎研究機構は、本学が世界をリードする最先端研究分野である「細胞科学分野」と「量子コンピューティング分野」の2つの「専門基礎研究塾」と、本学のすべての新任研究者が塾生として3ヵ月間研さんする「広域基礎研究塾」から構成されます。

セレモニーは、益学長の挨拶で始まり、大竹尚登 広域基礎専門塾長(科学技術創成研究院 教授)から「専門基礎研究塾では塾生が数年間じっくりと研究課題に取り組む環境を作りたい。一方、広域基礎研究塾は、様々な研究分野の若手研究者が一堂に会して自分の将来の研究テーマを考える機会を与えたい」との説明がありました。

挨拶する益学長

挨拶する益学長

続いて、大隅良典塾長(専門基礎研究塾 細胞科学分野)から「基礎研究の重要性」について、西森秀稔塾長(専門基礎研究塾 量子コンピューティング分野)から「量子コンピューティングの面白さ:『不思議』が役に立つ」をテーマにした講演が行われました。

大隅塾長(専門基礎研究塾 細胞科学分野)「若手が自由に研究できる環境」

大隅塾長(本学 栄誉教授)は、「落ち着いた研究環境の中で、若手研究者が自分の学術的興味から細胞科学の研究課題を見出し、仮説の立案と検証を行えるかどうかが、大きな課題だ」と述べました。その使命として、下記の2点が挙げられました。

1. 交流の楽しさ、重要性:

互いの研究を理解し、尊重する努力。優れた研究に接する機会、違った考え方・アプローチを学ぶ。他人の仕事に興味を持ち、良い仕事を喜び、たたえる姿勢。

2. 研究者を活かす研究組織:

若手が自由に研究できる環境。共通設備の充実と利用しやすいシステム。高度な技術者による支援体制の構築。各自の透徹した好奇心、新しい共同研究の創出。AI(人工知能)時代に将来の研究者として問われる資質。

講演する大隅塾長

講演する大隅塾長

西森塾長(専門基礎研究塾 量子コンピューティング分野)「オープンイノベーションの根源」

西森塾長(科学技術創成研究院 教授)が、「若い人の力を伸ばすことが大切。基礎研究はオープンイノベーションの根源であり大学の役割だ」と話しました。

講演する西森塾長

講演する西森塾長

塾長による講演に続き、細胞科学分野の塾生である堀江朋子助教(科学技術創成研究院 細胞制御工学研究センター)と、量子コンピューティング分野の塾生である坂東優樹研究員(科学技術創成研究院)が自身の研究について発表しました。

記者会見と塾生ポスター発表・交流会

セレモニー終了後、益学長、大隅塾長、西森塾長、大竹塾長と、出席した記者との間で質疑応答が約30分間行われました。さらに、S1棟1階のオープンスペースに会場を変え、塾生ポスター発表会並びに交流会が開催されました。60名を超す参加者が、発表ポスター21件を前に熱心な討論を繰り広げ、今後の基礎研究機構の運営や本学の将来について意見を交わしました。

ポスター発表と交流会で議論する参加者

ポスター発表と交流会で議論する参加者

ポスター発表と交流会で議論する参加者

基礎研究機構とは

本学は、最先端研究領域を開拓し、世界の研究ハブの地位を継続的に維持・発展させるために必須な基礎研究者を育成する場として、2018年7月、基礎研究機構を科学技術創成研究院に設置しました。本機構は、2つの専門基礎研究塾と広域基礎専門塾からなります。

専門基礎研究塾では、基礎研究で顕著な業績を有する本学の研究者を専門基礎研究塾の塾長に据えるとともに、若手研究者の研究エフォート(職務時間のうち研究に集中できる時間の割合)を現在の6割から9割(平成26年度文科省調査より推計)に増加させるために、人、資金、スペース等のリソースを投入し、5年程度研究に集中できる環境を整備することで、卓越した研究者を養成します。2019年4月現在、細胞科学分野には14名、量子コンピューティング分野には2名の塾生がいます。

広域基礎専門塾では、本学の全ての分野の若手研究者を対象として3ヵ月間研究エフォートを9割に増加させ、研究テーマを落ち着いて考えるなど研究に集中する機会を設けます。2019年6月現在、29名の研究者が塾生として所属しています。

その結果として、基礎研究が実る節目と言われている10年程度を経た2030年以降に卓越した研究成果を継続的に生むことを目指しています。

お問い合わせ先

基礎研究機構事務局

E-mail : ofr@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-3702


東工大柔道部が東京地区国公立大学体育大会柔道の部66kg級個人戦で準優勝

$
0
0

6月9日に第67回東京地区国公立大学体育大会柔道の部が講道館(東京都文京区)で開かれました。

この大会は東京都内の国公立大学(東京工業大学、東京大学、一橋大学、東京学芸大学、東京海洋大学、首都大学東京、東京農工大学、電気通信大学)を対象とした試合で、今回は東工大が主管校を担当しました。

8大学から79人の選手たちがトーナメント形式の団体戦、個人戦に参加しました。

その66kg級個人戦において本学柔道部の主将である小野篤輝さんが4回戦を勝ち抜き、準優勝を飾りました。

東工大柔道部の部員とOBたち(前列真ん中が主将の小野さん、後列右から三番目が柔道部部長の末包哲也教授)

東工大柔道部の部員とOBたち
(前列真ん中が主将の小野さん、後列右から三番目が柔道部部長の末包哲也教授)

メンバー

  • 小野篤輝(物質理工学院 応用化学系 学士課程4年)
  • 松島宏太 (工学院 システム制御系 学士課程2年)
  • 松井優樹(物質理工学院 応用化学系 学士課程2年)
  • 山田翔太(生命理工学院 生命理工学系 学士課程2年)
  • 新井達寛(生命理工学院 生命理工学系 学士課程2年)
  • 小塚恒輔(工学院 電気電子系 学士課程2年)
  • ユン・ヒジュ(物質理工学院 応用化学系 学士課程2年)
  • 野中慧悟(物質理工学院 学士課程1年)
  • 浅田丈瑠(環境・社会理工学院 学士課程1年)
  • 太田琉生(理学院 学士課程1年)

小野篤輝さんのコメント

自分が準優勝したことに、自分も正直驚いています。

今まで柔道を10年近くやってきましたが、表彰台に立てたことは初めてのことです。

この準優勝は私一人のものではなく、日頃の練習に参加している部員や活動を支えてくださるOB・OGの先輩方、技の指導をしてくださる師範、さらには生活を支えてくれる両親のおかげです。さらに高みを目指して、部員と練習に励むと共に、今年から始まった研究生活に精を出し、成果を出せるように励んでいきます。

東工大柔道部

東京工業大学柔道部は長谷川博師範の下、部員10人で活動している、創部100年以上の歴史を誇る部活動です。

活動場所は、主に大岡山キャンパスの地下武道場で、現役部員の他にも多数の留学生が一緒に練習に参加し、柔道を通じた国際交流にも力を入れています。柔道を楽しむことを大切にしているため、経験者はもちろん初心者も気楽に参加できます。現在、全国国立工業大学柔剣道大会(六工大戦)に向け活動中です。

お問い合わせ先

東京工業大学柔道部

E-mail : titech.judo@gmail.com

パブリックブロックチェーンのシミュレータ「SimBlock」を開発・配布開始 性能や安全性の手元での検証を可能にし、ブロックチェーン技術の研究・開発を加速

$
0
0

東京工業大学 情報理工学院 数理・計算科学系の首藤一幸准教授、青木優介大学院生(研究当時)、大月魁大学院生、金子孟司大学院生、永山流之介大学院生、坂野遼平研究員らの研究グループと情報理工学院 サイバーセキュリティ研究センターは、ブロックチェーンネットワークをPC上で模擬して性能や安全性を検証できるパブリックブロックチェーンのシミュレータ「SimBlockouter」を開発し、オープンソースソフトウェアとして公開、無償配布を開始しました。

SimBlockは、インターネット上の多数のノード(サーバ)から成るブロックチェーンネットワークを模擬するソフトウェアです。SimBlockでは、ブロックチェーンネットワークを構成するノードの挙動を比較的簡単に変えることができ、改良や新手法がブロックチェーンにどのような影響を与えるのかをPC上で調べることができます。これによって、Bitcoinといった既存ブロックチェーンの改良や、また、独自に考案したブロックチェーンを手元のPC上で実験し、その性能や安全性を検証できます。

背景

暗号通貨の基礎技術として生まれたブロックチェーンは、決済や送金だけでなく、資産や権利の管理、また、食料などの流通履歴追跡、投票といった政治プロセス、組織の自動運営などさまざまな応用が期待されています。

2009年のBitcoin立ち上げから開発と展開が先行しましたが、最近では研究も盛んに行われています。ブロックチェーンを主題とする学術国際会議も、IEEE ICBC、CryBlock、IEEE Blockchain等、いくつも立ち上がっています。しかし、動作しているブロックチェーンネットワークの性能や安全性を高める改良や新手法を考案しても、それを実地で試すことはほとんど不可能です。改良や新手法を試すためには全ノードのソフトウェアを更新する必要がありますが、全ノードの管理者を実験に従わせることは現実的ではありません。そもそもブロックチェーンネットワークの動作を壊してしまうかもしれない実験を実地で行うわけにはいきません。改良や新手法を試せないだけならともかく、もし深刻な問題が見つかって修正したい場合に、修正がネットワークを壊してしまうことがないかどうかを事前に実験・検証できないことも大きな課題でした。

ブロックチェーンシミュレータSimBlock

そこで本研究チームは、ブロックチェーンネットワークのシミュレータ「SimBlock」[論文1]を開発し、2019年6月、オープンソースソフトウェアとして公開、無償配布を開始しました。SimBlockは一般的なPC上で動作し、1万台近くに達するノード群の、インターネット上での振る舞いをシミュレートできます。技術者・研究者はこのSimBlockを用いることで、Bitcoinといった既存ブロックチェーンの改良や、また、自ら考案したブロックチェーンを、手元のPC上で試すことができます。安全性については、例えば、悪意あるノードを模擬して攻撃の成功率を調べたり、攻撃への対策を模擬してその効果を調べることができます。

現在のSimBlockは、Bitcoin、Litecoin、Dogecoinの、規模やブロック生成間隔、また、インターネット越しのノード間通信時間を模擬できます。ノードの振る舞いを変えたい場合、Java言語で開発されているSimBlockの当該個所に変更を加えることで、ブロックチェーンネットワーク上で何が起こるかを調べることができます。ブロックチェーンのパラメータ、インターネット上での通信の速さをさまざまに変えることもできます。

また、SimBlockは可視化機能を備えており、ノード間通信とブロック高[用語1]を地図上でアニメーション表示できます(図1)。技術者・研究者はこの表示から、何が起きているかを直観的に確認できます。以下のウェブページに可視化機能のデモがあります。

ブロックチェーンネットワークの可視化, © OpenStreetMap contributors

図1. ブロックチェーンネットワークの可視化, © OpenStreetMap contributors

本研究チームは、SimBlockを国際会議IEEE ICBC 2019(2019年5月、韓国 ソウル)にてデモ展示し[論文2]、研究者の関心を集めました(図2)。

国際会議IEEE ICBC 2019でのデモ展示

図2. 国際会議IEEE ICBC 2019でのデモ展示

応用例

本研究チームは、SimBlockを活用し、ブロックチェーンの性能を向上させる研究を行っています。

隣接ノード選択[論文3, 4]

図3. 隣接ノード選択[論文3論文4]

リレーネットワークの影響測定 [論文5, 6]

図4. リレーネットワークの影響測定[論文5論文6]

図3は、隣接ノード選択という技法の効果を示しています。各ノードがネットワーク的に近いノードと優先的に接続を持つように改良することで、ブロックがブロックチェーンネットワーク上を伝搬するのにかかる時間を短縮できました。伝搬時間が短くなると、安全性が向上します。また、安全性を犠牲にせずにトランザクション処理性能を向上させることができます。

図4は、リレーネットワーク[用語2]を利用したノードが受ける恩恵を示しています。リレーネットワークを利用することで、マイニング[用語3]によって生成したブロックが孤立ブロック[用語4]になってしまう確率が大幅に下がることがわかりました。これは、リレーネットワークを利用することでノードは収入を増やせることを意味します。なぜなら、ノードは孤立ブロックからはマイニング報酬を得られないからです。

ノードがリレーネットワークを利用すると、生成されたブロックをいち早く受け取れるため、自身がマイニングに成功する確率が上がりそうなものです。しかし、マイニング成功率の明確な向上は確認できませんでした。一方で、本研究チームは、リレーネットワークの利用にはむしろ別のメリットがあることを発見しました。具体的には、マイニングしたブロックが孤立ブロックになって報酬を失う確率を下げることができるという利点です。リレーネットワークによって全体の孤立ブロック発生率が下がることは自然であり、以前より指摘されていました。しかし、リレーネットワークを利用したノードが1%とごくわずかであっても、それら利用したノードは非常に大きな恩恵を受けられるということは本研究チームの発見です。

今後

本研究グループは、SimBlockを活用してブロックチェーンの性能を向上させる研究を続けていきます。また、ブロックチェーンへの攻撃手法と対策をシミュレートし、安全性を向上させる研究にも取り組んでいきます。SimBlock自体の改良としては、Ethereumといった他のブロックチェーンへの対応、インターネットの現況への対応、ブロックチェーンの新しい通信方式(例:Compact Block Relay)への対応等を進めています。

SimBlockが、本研究グループの研究だけでなく、多くの技術者・研究者を支え、ブロックチェーン技術の発展とこの技術が支える社会に貢献することを強く信じています。

謝辞

本研究は公益財団法人セコム科学技術振興財団の研究助成を受けています。

用語説明

[用語1] ブロック高 : ブロックチェーンの長さ。ここでは、各ノードがこれまで受け取ったブロックの総数。

[用語2] リレーネットワーク : ブロックとトランザクションを高速に配布する、ブロックチェーンネットワークとは別のネットワーク。

[用語3] マイニング : 各ノードが、ブロックを生成して報酬を得るために競って行っている計算競争。

[用語4] 孤立ブロック : ブロックチェーンの分岐によって、一度は生成されたものの無効になってしまったブロック。

論文情報

[論文1]

掲載誌 :
Proc. CryBlock 2019、2019年 4月
論文タイトル :
SimBlock: A Blockchain Network Simulator
著者 :
Yusuke Aoki, Kai Otsuki, Takeshi Kaneko, Ryohei Banno, Kazuyuki Shudo

[論文2]

掲載誌 :
Proc. IEEE ICBC 2019, pp.3-4, 2019年 5月
論文タイトル :
Simulating a Blockchain Network with SimBlock
著者 :
Ryohei Banno, Kazuyuki Shudo

[論文3]

掲載誌 :
Proc. IEEE Blockchain 2019, 2019年7月(採択)
論文タイトル :
Proximity Neighbor Selection in Blockchain Networks
著者 :
Yusuke Aoki, Kazuyuki Shudo

[論文4]

掲載誌 :
電子情報通信学会 技術研究報告, Vol.118, No.481, pp.225-232, 2019年 3月
論文タイトル :
ブロックチェーンネットワークにおける隣接ノード選択
著者 :
青木優介, 首藤一幸

[論文5]

掲載誌 :
Proc. AINTEC 2019、2019年8月(採択)
論文タイトル :
Effects of a Simple Relay Network on the Bitcoin Network
著者 :
Kai Otsuki, Yusuke Aoki, Ryohei Banno, Kazuyuki Shudo

[論文6]

掲載誌 :
電子情報通信学会 技術研究報告, Vol.118, No.481, pp.309-316, 2019年 3月
論文タイトル :
Bitcoinネットワークに対するリレーネットワークの影響
著者 :
大月魁, 青木優介, 首藤一幸
<$mt:Include module="#G-09_情報理工学院モジュール" blog_id=69 $>

お問い合わせ先

東京工業大学 情報理工学院 数理・計算科学系

准教授 首藤一幸(分散システム研究グループ)

E-mail : dsg-titech@googlegroups.com

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

機械学習の「記憶」を活用し、高分子の熱伝導性の大幅な向上に成功 少ないデータでも高精度な予測が可能に 高分子での材料インフォマティクス加速に期待

$
0
0

概要

1.
NIMS、統計数理研究所、東京工業大学の共同研究グループは、独自の機械学習の解析技術を用いて高熱伝導性高分子を設計・合成し、従来の高分子に比べて約80%の熱伝導率の向上に成功しました。同グループは、少数の物性データから予測モデルを導くために、転移学習[用語1]と呼ばれる解析技術を駆使して問題解決を図りました。今回の成果は、新材料の発見のみならず、高分子インフォマティクスの最大障壁とされる「スモールデータ問題」の克服に向けた大きな一歩と位置付けられます。
2.
一般に高分子の熱伝導率は金属やセラミックスに比べて非常に低いことが知られています。一方で近年の高分子研究により、特異的に高い熱伝導率を持つ高分子が存在することが明らかになってきました。このような背景から、自動運転システムや次世代無線通信規格5G等、放熱性の向上が求められるエレクトロニクスデバイスの開発において、成形性に優れた高分子材料の高熱伝導化の研究に注目が集まっています。
3.
同グループは、世界最大の高分子データベースPoLyInfo[用語2]と独自の機械学習アルゴリズムを組み合わせ、高熱伝導性を持つ新規高分子の設計に取り組みました。PoLyInfoには、ホモポリマーに限定した場合に、室温付近の熱伝導率のデータが28件(種類)しか登録されていません。そこで、ビッグデータの入手が可能な他の物性データ(ガラス転移温度等)で機械学習のモデルを訓練し、モデルが獲得した「記憶」と少数の熱伝導率のデータを組み合わせることで、熱伝導率を高精度に予測できるモデルを導くことに成功しました。これは一般に転移学習と呼ばれる解析技術です。同グループは、このモデルを用いて高い熱伝導率をターゲットに1,000種類の仮想ライブラリ[用語3]を作製しました。その中から三種類の芳香族ポリアミド[用語4]を合成 し、熱伝導率0.41 W/mKに達する高分子を見い出しました。これは、典型的なポリアミド系高分子(無配向)と比較して最大80%の性能向上に相当します。さらに、同グループが開発した材料は、高耐熱性や有機溶媒への溶解性、フィルム加工の容易性等、実用化のステージで求められる複数の要求特性を併せ持つことも実験的に確認されました。
4.
一般に、材料データは取得コストが高く、情報漏洩の観点から研究者にはデータの公開に対するインセンティブが働かないため、材料インフォマティクスのデータ量は、少なくとも短中期的には、大学のラボや一企業で生産可能な水準に留まることが予想されます。同グループが開発した転移学習の解析技術は、材料インフォマティクスのスモールデータ問題の克服に大きく寄与することが期待されます。
5.
本研究は、情報・システム研究機構 統計数理研究所 ものづくりデータ科学研究センター 吉田亮教授(同センター・センター長)とWu Stephen助教、東京工業大学 物質理工学院 森川淳子教授、物質・材料研究機構 統合型材料開発・情報基盤部門 情報統合型物質・材料研究拠点 伝熱制御・熱電材料グループ 徐一斌グループリーダーらによって行われました。また本研究は、科学技術振興機構(JST)のイノベーションハブ構築支援事業「情報統合型物質・材料開発イニシアティブ(MI2I :“Materials research by Information Integration” Initiative)」(法人名:物質・材料研究機構、プロジェクト実施期間:2015-2019年度)の支援の下で推進されました。
6.
本研究成果は、英国時間2019年6月21日午前10時(日本時間21日午後6時)にnpj Computational Materials誌にて発表されました。

研究の背景

一般に材料設計のパラメータ空間は極めて広大です。例えば、有機化合物のケミカルスペースには、1060を超える候補物質が存在すると言われています。さらに、実材料の開発では、プロセス、添加剤・溶媒選択、膜材料の層構成等の制御因子が加わり、パラメータ空間の次元は爆発的に増大します。材料インフォマティクスの多くの問題は、このような広大な探索空間から所望の特性を有する埋蔵物質を発掘することに帰着します。

同グループが開発したiQSPR[用語5]は、所望の特性を持つ化学構造を設計する機械学習アルゴリズムです。高分子データベースPoLyInfoの実験データをiQSPRに入力し、高熱伝導率をターゲットに候補物質の仮想ライブラリを構築しました。さらに、三種類の芳香族ポリアミドを選定・合成し、熱伝導率0.41 W/mKを達成する新しい高分子を発見しました(図1参照)。

三種類の高熱伝導性高分子の発見に至るワークフロー。転移学習を活用した熱伝導率の予測と分子設計の機械学習の技術が問題解決の突破口を切り拓いた。
図1.
三種類の高熱伝導性高分子の発見に至るワークフロー。転移学習を活用した熱伝導率の予測と分子設計の機械学習の技術が問題解決の突破口を切り拓いた。

研究内容と成果

iQSPRのワークフローは、順方向と逆方向の計算から構成されます。機械学習でポリマーの構造から特性の順方向の予測モデルを構築し、その逆写像を求めることで、特性から構造の逆方向の予測モデルを導きます。このモデルを用いて仮想ライブラリを作成し、所望の特性を有する埋蔵物質を発掘します。しかしながら、PoLyInfoに登録されている熱伝導率のデータはたったの28件しかなかったため、従来の機械学習では物性予測のモデルを作成することができませんでした。

そこで同グループは、転移学習という解析技術を導入して問題解決を図りました。まずは、ビッグデータが入手できる他の物性に関するデータ(高分子のガラス転移温度、低分子化合物の比熱容量等)を収集し、機械学習のモデルライブラリを構築しました。データに基づく構造・物性の学習を経ることで、これらのモデルは高分子の構造に関する「汎用的な内部表現」を獲得しました。このように「経験」から獲得した「機械の記憶」を適切に活用することで、たった28件の熱伝導率のデータでも十分な精度を達成する予測モデルを得ることができました。優れた研究者は、過去の経験から大量かつ多様な知識の体系を構築し、データがほとんど存在しないような新しいタスクに対しても合理的に予測や意思決定を行うことができます。同グループが開発した転移学習のアルゴリズムは、まるで熟練の材料研究者の認識・判断の過程を模倣したかのようなパフォーマンスを発揮しました。

同グループは、このような解析技術を用いて、高熱伝導率をターゲットに1,000種類の高分子の仮想ライブラリを設計しました。その中から三種類の芳香族ポリアミドを合成し、最大で熱伝導率0.41 W/mKに達する高分子を発見しました。また、実験結果は機械学習の予測とほぼ一致しました。同グループが達成した熱伝導率は、典型的なポリアミド系高分子(無配向)と比較して約80%の性能向上に相当します。さらに、高耐熱性や有機溶媒への溶解性、フィルム加工の容易性等、今度の実用化フェーズで重要になる諸特性を併せ持つことが実験的に確認されました。また、従来の熱分析技術では高耐熱性高分子のガラス転移温度を測定できなかったため、最新の超高速熱分析技術を新たに開発し、高温域の転移温度の測定に成功しました。

今後の展開

本研究は、機械学習が自律的に設計した高分子が実際に合成・検証された初の事例となります。近年、材料研究とデータ科学の融合が急速に進行し、その有効性や可能性について、実証的見地から様々な検討が行われています。しかしながら、他の領域に比べると、高分子研究のデータ科学との学融合は大幅に遅延しています。その背景には、多くの高分子物性はデータ科学の解析手法を適用できるほどのデータ量に達していないという自明な理由が存在します。今後、高分子インフォマティクスでは、スモールデータの限界をいかに突破するかが勝利の鍵を握ります。同グループの成果は、当該分野が抱える本質的な問題の克服に一石を投じるものです。

また、今回は合成の容易性という観点から三種類の高分子を選定・合成しましたが、仮想ライブラリには他にも有望な候補物質が数多く残されている可能性があります。また、同グループが開発した機械学習の技術は汎用的なものであり、任意の特性をターゲットに同様の解析を行うことができます。これから数年以内に、同じようなアプローチで多くの埋蔵物質が発掘され、その中から、従来の常識を覆すような新しい高分子材料が発掘されることが期待されます。

用語説明

[用語1] 転移学習 : あるタスクの学習モデルを別のタスクに流用することを目的とする方法論の総称。例えば、膨大なデータから訓練された動物の種類を判定する画像認識の多層ニューラルネットワークを改変し、少数の花の画像データを用いて分類器を構築したいと考えます。動物の分類器は、学習過程で画像認識に必要な基本的な特徴量を抽出していることが期待され、その中の一部は花の分類にも流用可能であると考えられます。その場合、花の分類器を一から学習するのではなく、少数のデータを使って動物の分類器を微修正すれば十分かもしれません。このような推論アルゴリズムの総称が転移学習です。転移学習という用語はさらに広い概念を含みますが、とりわけスモールデータ問題に対する有効なアプローチであることが知られています。

[用語2] PoLyInfo : 国立研究開発法人 物質・材料研究機構が保有する高分子物性の世界最大級のデータベースouter。学術文献から収集した約100種類の物性(熱物性、電気的特性、力学的特性等)、化学構造、測定条件、重合方法等を収録しています。

[用語3] 仮想ライブラリ : 特定の用途をターゲットに計算機で作製した仮想物質のプール。機械学習の物性予測モデルと組み合わせ、所望の特性を持つ新規物質の候補を絞り込む際に使用されます(一般に仮想スクリーニングと呼ばれる)。同グループは、機械学習で熱伝導率や耐熱性をターゲットに1,000個の仮想高分子を作製しました。

[用語4] 芳香族ポリアミド : ポリアミドは、主鎖に酸アミド結合(−CO-NH−)を持つ高分子の総称です。主鎖にベンゼン核を有するポリアミドを芳香族ポリアミドといい、中でも、全芳香族ポリアミド(アラミド)はエンジニアリング・プラスチックとして、優れた耐熱性と強度を持つことが知られています。

[用語5] iQSPR : 同グループ吉田らが開発した分子設計の機械学習アルゴリズム(Ikebata, H., Hongo, K., Isomura, T., Maezono, R. and Yoshida, R. (2017). Bayesian molecular design with a chemical language model, Journal of Computer-Aided Molecular Design, 31(4), 379–391)。実験やシミュレーションから得られるデータを用いて、物質の構造から物性の順方向の予測モデルを構築し、物性から構造の逆写像を求めて仮説物質を発生させ、所望の物性を有する埋蔵物質を炙り出すものです。確率的言語モデルに基づく構造生成器や機械学習の様々な解析技術を駆使して開発した確率推論のアルゴリズムです。

論文情報

掲載誌 :
npj Computational Materials
論文タイトル :
Machine-learning-assisted discovery of polymers with high thermal conductivity using a molecular design algorithm
著者 :
Stephen Wu, Yukiko Kondo, Masaaki Kakimoto, Bin Yang, Hironao Yamada, Isao Kuwajima, Guillaume Lambard, Kenta Hongo, Yibin Xu, Junichiro Shiomi, Christoph Schick, Junko Morikawa, Ryo Yoshida
DOI :
<$mt:Include module="#G-07_物質理工学院モジュール" blog_id=69 $>

お問い合わせ先

研究内容に関すること

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 統合型材料開発・情報基盤部門 情報統合型物質・材料研究拠点 物質・材料記述基盤グループ グループリーダー(大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 ものづくりデータ科学研究センター 教授・センター長)

吉田亮

E-mail : yoshidar@ism.ac.jp
Tel : 050-5533-8534

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 統合型材料開発・情報基盤部門 情報統合型物質・材料研究拠点 伝熱制御・熱電材料グループ 特別研究員

東京工業大学 物質理工学院 材料系

森川淳子 教授

E-mail : morikawa.j.aa@m.titech.ac.jp

取材申し込み先

国立研究開発法人 物質・材料研究機構 経営企画部門 広報室

Email : pressrelease@ml.nims.go.jp
Tel : 029-859-2026 / Fax : 029-859-2017

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 統計数理研究所 運営企画本部企画室 URAステーション

Email : ask-ura@ism.ac.jp
Tel : 050-5533-8580 / Fax : 041-526-4348

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

Email : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

技術力の融合と強化を目指し「AGCマテリアル協働研究拠点」を設置 マテリアルソリューションを創出

$
0
0

東京工業大学とAGC(エー・ジー・シー)株式会社(以下、AGC)は、「AGCマテリアル協働研究拠点」を2019年7月1日(月)に設置します。東工大すずかけ台キャンパスに約66㎡の専用スペースを確保すると共に、AGCから共同研究員を受け入れ、組織対組織の連携を進めていきます。

東工大とAGCは、これまでガラス・セラミックス・有機材料など多くの領域で共同研究を進め、優れた成果を創出してきました。

企業と東工大がこれまでの個別研究という枠組みを超え、組織同士で大型の連携を実現する新しい制度である「協働研究拠点」として、本拠点は第3号目となります。今回設置するAGCマテリアル協働研究拠点では、東工大が物質・材料を含む幅広い領域で保有する学術的知見と、AGCが培ってきた技術力を連携させ、これまでの個別研究では難しかった組織対組織の総合的な研究開発を行います。また、新研究テーマや新事業分野の創出を行うべく、東工大とAGC双方の人材から構成される新研究テーマ企画チームを設置し、研究の企画機能を担います。

本拠点設置に伴い、まずは「マルチマテリアル領域」として5つの研究室(物質理工学院 材料系の扇澤敏明研究室、工学院 機械系の轟章研究室、科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の佐藤千明研究室、工学院機械系の山本貴富喜研究室、工学院 電気電子系の廣川二郎研究室)と共同研究を開始するとともに、次の領域設置も見据えた「NEXT(ネクスト)テーマ候補」として2つの研究室(科学技術創成研究院 全固体電池研究ユニットの菅野了次研究室、物質理工学院 応用化学系の一杉太郎研究室)と共同研究を開始します。

「マルチマテリアル領域」では、AGCの保有するガラスやフッ素系材料など様々な材料を複合化・最適化することで、次世代モビリティや高速通信、エレクトロニクスなどの領域で必要となる高機能材料や革新技術・プロセスの開発を深化させ、ソリューションを創出します。一方、「NEXTテーマ候補」では、革新的・挑戦的な研究テーマについて、課題の抽出、解決、および実現に向けたコンセプト検証を行います。

東工大とAGCは、協働研究拠点の設置により研究者の密接な交流と研究開発ネットワークを構築し、新テーマ創出・開発・検証・社会実装のプロセスを効果的に進めるとともに、人材育成およびイノベーション創出に寄与することを目指します。

AGCマテリアル協働研究拠点の概要

名称 :
国立大学法人東京工業大学 オープンイノベーション機構協働研究拠点AGCマテリアル協働研究拠点
場所 :
神奈川県横浜市緑区長津田町4259
東京工業大学 すずかけ台キャンパス J3棟514号室
設置期間 :
2019年7月1日(土)~2022年6月30日(木)
研究題目 :
東京工業大学とAGCの技術力融合・強化によるマテリアルソリューションの創出
拠点長 :
中島章 物質理工学院 副学院長・教授
副拠点長 :
神谷浩樹 AGC株式会社 技術本部企画部長
代表共同研究員 :
伊勢村次秀 AGC株式会社 技術本部企画部

協働研究拠点を設置するすずかけ台キャンパスJ3棟

協働研究拠点を設置するすずかけ台キャンパスJ3棟

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

7月の学内イベント情報

$
0
0

7月に本学が開催する、一般の方が参加可能な公開講座、シンポジウムなどをご案内いたします。

CERI寄附公開講座「ゴム・プラスチックの安全、安心―身の回りか最新の話題まで―」(2019年度 前期)

CERI寄附公開講座「ゴム・プラスチックの安全、安心―身の回りか最新の話題まで―」(2019年度 前期)

近年モノやシステムの安全・安心が社会の重要なテーマであり、様々な製品とそのもととなる材料においても安全・安心が求められる時代です。

そこで本講座では、広く社会に浸透し私たちの身の回りにある化学品を含むプラスチックやゴムとその関連製品の安全・安心を取上げ、それらに関する情報とやさしい科学を紹介し、正しい知識を広く一般の方に持ってもらうとともに、学生を含む専門家に対しては、最先端の安全性評価技術、劣化と寿命予測技術、耐性向上技術、さらには高性能・高強度化技術・材料に関する科学を紹介し、将来の安心・安全な材料の設計の基礎を学べるようにします。

日時
2019年6月8日(土)、6月15日(土)、6月22日(土)、6月29日(土)、7月6日(土)、7月20日(土)、7月27日(土)全7回・14講座/各日13:20 - 14:50、15:05 - 16:35
会場
参加費
無料
申込
必要(各回定員30名)

第74回 固体イオニクス研究会 ~固体イオニクスの進展と蓄電池応用~

第74回 固体イオニクス研究会 ~固体イオニクスの進展と蓄電池応用~

現在、世界中で自動車の電動化が急速に進んでいます。そのキーデバイスがリチウムイオン蓄電池であり、その需要は拡大の一途を続けています。リチウムイオン蓄電池のさらなる高性能化の実現へと向けて革新的な技術開発が求められており、世界中で激しい開発競争が行われています。日本が同分野において今後も高い国際競争力を維持するためにも、固体イオニクス学会が果たすべき役割は非常に大きいと言えます。本研究会では、蓄電池材料開発の研究の最前線で活躍されている研究者6名からなる研究会を企画します。

日時
2019年7月12日(金)10:00 - 17:50(親睦会 18:30 - 20:00)
会場
参加費
無料(資料代:本会会員 1,500円、⼀般 3,000円、学⽣ 500円)
懇親会費(暫定):⼀般 5,000円、学⽣ 3,000円(精養軒 ⼤岡⼭店)
申込
必要(定員100名)

夏のワークショップ2019「声に出してシェイクスピアvol.4-ロマンス劇編その1『テンペスト』-」(全5回)

夏のワークショップ2019「声に出してシェイクスピアvol.4-ロマンス劇編その1『テンペスト』-」(全5回)

2017年度より始まった東京工業大学のシェイクスピア・ワークショップも、早くも4回目を迎えました。一方的に講師の話を聴くだけではなく、日本語訳であっても台詞を暗記して人前で演じてみることで、受講者のみなさんにシェイクスピア戯曲の演劇としての魅力を身体で感じていただけているように思います。

今回は、シェイクスピアの最晩年の戯曲「テンペスト」を取り上げます。魔法を自在に操るプロスペローが支配する孤島を舞台に、仇敵への復讐と若い男女の恋愛が互いに交錯しながら進行します。妖精や怪物も登場する楽しく華やかな作品ですが、そこには西洋人による先住民支配という影も差しているようです。

この作品を俳優の下総源太朗さんの指導のもと、本学の小泉勇人准教授の解説つきで声に出して読み、演じてみましょう。最終回に小さな発表会を開く予定です。

日時
2019年7月18日、7月25日、8月1日、8月22日、8月29日(いずれも木曜、全5回)/各回 18:00 - 20:00
会場
参加費
一般 全5回 4,000円(本学学生、教職員は無料)
対象
本学の学生・教職員、一般
申込
必要(定員30名、先着順)

社会活動継続技術共創コンソーシアム 第3回公開シンポジウム

社会活動継続技術共創コンソーシアム 第3回公開シンポジウム

社会活動継続技術共創コンソーシアム(SOFTech)は東京工業大学を幹事機関とし4大学、33の企業が集まり、極大地震をはじめとした大きな自然災害が起きても安心して社会活動が維持できる技術の創出を目指して活動しています。

本シンポジウムでは、各研究課題の進捗を報告するほか、オリンピック開催一年前となり関心が高まっている新国立競技場の構造設計について、大成建設株式会社の細澤治様よりご講演いただきます。

日時
2019年7月23日(火) 14:30 - 17:30
会場
参加費
無料(交流会:500円)
申込
必要

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975

学生による国際交流プログラム「9th ASCENT」開催報告

$
0
0

3月3日から10日にかけて、東京工業大学国際交流学生会SAGE(以下、SAGE)が、第9回アジア理工系学生連携促進プログラム「9th ASCENT」を開催しました。本プログラムは「NewSpace~宇宙開発の現状を知る~」をテーマとして行われ、日本を含むアジア圏8ヵ国から学生12名が参加しました。

9th ASCENTの実施にあたっては、一般社団法人蔵前工業会と東京工業大学基金室が後援し、また、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構(以下、(一財)宇宙システム開発利用推進機構)が企画協力をしました。

ASCENTの概要

アジア理工系学生連携促進プログラムASCENTは、Asian Students Collaboration Encouragement Program in Technologyの略称であり、SAGEが企画・運営を行う1週間の国際交流プログラムです。アジア圏の理工系大学に所属する学生間のネットワーク構築を目的としています。

本プログラムでは、科学技術に関連するテーマを開催年ごとに設定します。参加者はテーマに関連する特別講義を受けることや関連研究、事業を行っている民間企業や研究所、官公庁、学内研究室を訪問することで、テーマに関して理解を深め、ビジネスにおける応用例を学びます。さらに、プログラム中に学んだ内容に基づき、近年アジア各国が抱える問題に対する解決策を少人数のグループで話し合い、最終日に発表会を行います。

各グループはさまざまな国籍のメンバーで構成されるため、文化や習慣の違いに困惑することがあります。しかし、自分たちが見つけた問題に対して議論を交わし、解決策を共に創りあげる経験をすることによって、学生間の強固なネットワークを構築することができます。また、学術的な活動を軸に据えながらも、文化交流会や日本文化研修なども行います。

それらの企画を通して異文化交流や学生間の交流を促進させ、本プログラムが学術的な側面だけではなく総合的な体験の場となることを目指しています。

9th ASCENTの開催

プログラムテーマ:「NewSpace ~宇宙開発の現状を知る~」

NewSpace(ニュースペース)とは従来の政府を中心に据えた宇宙開発と異なり、ベンチャーや異業種参入者により主導される宇宙開発・宇宙利用のことを指します。学術分野を超えて、国境を超えて、身分を超えて、「新」宇宙開発は空前の勢いで発展を遂げています。

9th ASCENTはNewSpaceの中でも特に、衛星データ利用及びリモートセンシング分野に焦点を当て、日本における宇宙データ利用の動向を習得しました。

日本やアジア全体が抱える社会・環境問題を宇宙から収集したデータで解決する糸口を1週間ともに探求し、4つのグループに分かれた参加者たちがビジネスモデルとしてまとめて最終発表会で提案しました。

参加国・人数

インドネシア 1名、フィリピン 2名、タイ 1名、マレーシア 2名、パキスタン 1名、エジプト 1名、中国 1名、日本 3名

スケジュール・プログラム内容

3月3日:キックオフミーティング、ウェルカムパーティー

プログラム初日、キックオフミーティングおよびウェルカムパーティーを開催しました。

SAGEという団体の紹介や、プログラムの予定・狙いを説明した後、アイスブレイク、ミニゲーム、食事会を行いました。各国の参加者たちは初めて顔を合わせましたが、最後まで話が尽きず、大いに盛り上がりました。

SAGEの紹介
SAGEの紹介

参加者同士が歓談
参加者同士が歓談

3月4日:開会式、基調講演・特別講義・事前学習発表

この日は、9th ASCENTの基調講演に、内閣府宇宙開発戦略推進事務局の長宗豊和参事官補佐が登壇しました。「身近になった衛星データを使ってビジネス改善」を題に、衛星データのビジネスにおける可能性を広く示唆しました。講演後、ASCENT参加者が活発に質問する姿が見られ、衛星データビジネスへの関心が感じられました。

午後には、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(以下、JAXA)の布施哲人イノベーションハブ主任研究員をお迎えし、「JAXAの歴史」「イノベーションと宇宙開発」「イノベーションハブの取り組 み」という3つの内容を軸に講演しました。NewSpace時代ではイノベーションを避けては通れないことを強く示しました。

内閣府の長宗参事官補佐による講演
内閣府の長宗参事官補佐による講演

自国の宇宙開発の現状について発表する参加者
自国の宇宙開発の現状について発表する参加者

また、本学研究・産学連携本部のベンチャー育成・地域連携部門の稲川公裕部門員の特別講義も設けられました。「スタートアップとは何か」という紹介から始まり、理工系のASCENT参加者に技術系ビジネスの方向性、東工大発ベンチャーの現況などを紹介しました。

3つの講義を終えた後、参加者たちが自国の宇宙開発・宇宙利用の現状を巡り、それぞれ5分程度で発表しました。日本、フィリピン、インドネシア、タイ、マレーシア、パキスタン、エジプト、中国という8ヵ国の宇宙開発の現状がコンパクトに本セクションに凝縮され、世界の動きを把握するのに最適な場となりました。

JAXAの布施主任研究員を囲んで

JAXAの布施主任研究員を囲んで

3月5日:(一財)宇宙システム開発利用推進機構訪問・特別講義・アイディアソン

講義の様子
講義の様子

この日は(一財)宇宙システム開発利用推進機構を訪問し、リモートセンシングの講義や衛星データの使い方に特化したアイディアソンが行われました。

リモートセンシングに関する講義は、(一財)宇宙システム開発利用推進機構の武田知己主任研究員と中村晋作主任研究員が担当し、衛星に搭載する光学センサーやSAR(合成開口レーダー)センサーの特徴、衛星画像の入手方法、データの応用例を広く紹介しました。

午後のアイディアソンでは、参加者たちがチームになり、リモートセンシングを取り入れた新システムの考案に取り組みました。

  • 地震予測システム
  • 環境変化探知システム
  • 再生可能エネルギー探査システム
  • 農業総合システム

という4つのアイディアが提案され、どれもが専門が異なるからこそできる斬新な発想でした。

ポスター制作
ポスター制作

ポスター発表
ポスター発表

アイディアソン終了後、「メンバーのバラバラだったアイディアを統合するいいチャンスとなった」という声が上がり、とても満足した様子が見られました。

3月6日:JAXA筑波宇宙センター訪問

この日は、「日本で一番宇宙に近い」JAXA筑波宇宙センターを訪問しました。

まず、宇宙飛行士が実際に行っているトレーニングや宇宙食、国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」運用管制室等の見学が行われました。宇宙開発・利用の最先端を目の当たりにし、「やはり宇宙は素晴らしい」と熱くコメントした参加者もいました。

その後、展示館「スペースドーム」を訪問しました。日本の宇宙開発史をたどり、宇宙好きな参加者たちによる熱いコメントや写真撮影が止まりませんでした。「未来をひらく人工衛星」コーナーに展示され、現在大活躍している「はやぶさ2」の1:1模型が特に人気を博しました。

最後に、JAXAショップにも立ち寄り、お気に入りの商品を購入する参加者たちのまぶしい笑顔が見られました。2日間インプットに励んできた参加者にとって、よい気分転換になりました。

ロケット広場で
ロケット広場で

JAXA見学を満喫する参加者
JAXA見学を満喫する参加者

3月7日:特別講義・ディスカッション・中間結果発表

この日は、JAXA第一宇宙技術部門衛星利用運用センター(SAOC)の加来一哉さんから、リモートセンシングを用いた防災技術をテーマに特別講義がありました。

JAXAの加来一哉さんによる講義
JAXAの加来一哉さんによる講義

本学のラウィラットさんによる講義
本学のラウィラットさんによる講義

次に、本学環境・社会理工学院 建築学系のラウィラットさん(博士課程2年)による、ディープラーニングとSAR衛星画像の適性を自らの研究結果を交えながら紹介がありました。

2つの特別講義はともにリモートセンシングの応用に踏み込んだ、専門的な講義となりましたが、情報工学を専攻している参加者たちが多いこともあり、画像解析のメカニズムを始め、情報処理について多くの質問が上がりました。

ディスカッションする参加者
ディスカッションする参加者

午後の部では、最終の発表に備え、チームに分かれてディスカッションの時間を設けました。「いいアイディアにとどまるのではなく、利益を出せるアイディア」という最終発表で課せられたテーマを軸に、熱い話し合いが展開されました。

2時間のディスカッションを経て、中間成果の発表がありました。参加者同士で質疑応答が行われ、内容の不足点、欠点に気付く絶好の機会となりました。

3月8日:文化研修旅行

ASCENT参加者と一緒に浅草・ソラマチエリアを周り、日本文化を満喫しました。

浅草では、参拝、街散策、お好み焼き・もんじゃ焼き、和菓子の食べ歩きなどを体験し、「和」を楽しむことができました。ソラマチでは、スカイツリーに登り、買い物を満喫しました。参加者の中には、自由時間にVR(バーチャル・リアリティー)体験をした人もいました。

浅草雷門で
浅草雷門で

スカイツリー前で記念撮影
スカイツリー前で記念撮影

3月9日:文化交流会・メンターフィードバック

午前中に文化交流会が行われました。各国の文化を紹介し、それらを参加者全員で体験するイベントです。各国で有名なお菓子を食べたり、伝統的なダンスや習字などに挑戦したりするなど、普段の生活では体験しない他国の文化に触れることができました。

午後には、中間結果発表で練り上げたビジネス案を本学ベンチャー育成・地域連携部門の稲川部門員に向けて発表しました。ASCENT参加者が全員理工系だということもあり、ビジネス面において弱みを抱えていました。稲川部門員からビジネス視点での指摘を多く受け、この日は夜9時まで全員で最終発表の修正を行いました。

3月10日:最終発表会・送別会

最終発表会では、参加者たちがこの1週間で学んできた知識・アイディアを総動員して、フレッシュなビジネスアイディアに凝縮し発表しました。

  • チーム1:FRIENDS(フレンズ)
    衛星データで再生エネルギー発電所の有力地を探査するシステム「E-VEST(イーベスト)」を提案。クラウドファンディングも取り入れたハイテクなビジネスモデルが観客を惹きつけました。簡潔なスライドづくりも評判でした。

  • チーム2:G.A.C(ジー・エー・シー)
    衛星データを用いて地熱分布を探索し、地震を予測するシステム「G.A.C」を提案。ゼネコン、自治体、地学研究者・研究機構を販売のターゲットとして絞り、明確なビジネスの方向性を示してくれました。

  • チーム3:SAT-HUB(サットハブ)
    マレーシアの農家・政府に、農業に役立つデータを提供するスマホアプリ「Land Advisor(ランドアドバイザー)」を提案。安価な小型衛星を多く飛ばし、衛星コンステレーションで観測を行うなど、技術面についても詳しく述べてくれました。

  • チーム4:DEEPro(ディープロ)
    エジプトにおける不法投棄問題を衛星データとディープラーニングで検出し、関係者に即時フィードバックできるシステム「A-DCS(エーディーシーエス)」を提案。システムのコア技術を明確に示すとともに対象市場も具体的に提示し、とても説得力のあるピッチとなりました。

審査結果は、審査員と観客の合計点で決まる方式を取り、最優秀賞はチームDEEProになりました。実現性が高く、アイディア自体も面白かったと観客から大絶賛されました。優秀賞はチームSAT-HUB、参加賞にはチームFRIENDSとチームG.A.Cが選ばれました。

賞状を手に記念撮影

賞状を手に記念撮影

また、今回はスペシャルゲストとしてみんソラコミュニケーターの前田亜美氏が、みんソラプロジェクトを紹介しました。宇宙ビジネスの民間普及を広めようと宇宙に関して日々勉強しているとのことで、ASCENT参加者への応援もありました。

最終発表会に続いて行われた送別会ではこの1週間の振り返りを行い、それぞれ別れを告げました。

SAGE代表総括

ロー・ジャン・トンさん(環境・社会理工学院 融合理工学系 学士課程3年)

ロー・ジャン・トンさん

「宇宙産業」を聞くと、ロケットやローバーなど、機器・ハードウェア技術を思い浮かびがちですが、衛星から得られる位置情報や画像情報、いわゆる「衛星データ」の方が、現時点では産業規模が大きいと言われています。画像認識といったデータ解析技術が発達している今、衛星データが秘めているビジネスチャンスは無限とも言えるでしょう。

衛星データの理解、活用、提案を軸に9回目となるASCENTを企画・執行しました。課題や講義の設定に苦労しましたが、(一財)宇宙システム開発利用推進機構の皆さまを始め、多くの方からご協力やアドバイスをいただき、本プログラムを通して衛星データの可能性を参加者たちに実感していただけたように思います。また、参加者の専門・国籍・学年が異なっていることもあり、「環境問題×衛星データ」「遺伝子組換×衛星データ」など、多分野にわたるディスカッションをすることができ、とても有意義な1週間を過ごしました。

今回は運営経験が比較的浅いSAGEメンバーが中心となって9th ASCENTの準備を進めてきました。運営経費調達、参加者のビザ申請、食事の手配、宿泊施設の予約など、大変細かく手間のかかるタスクが多くありましたが、互いに協力しなんとか乗り越えることができました。プログラムを経て、チームとしての結束感が高まったように感じます。

本プログラムにご協力いただいた多くの方や、プログラムの運営に尽力してきたSAGEメンバー、全力でプログラムに取り組んだ参加者たちに感謝しています。

ASCENTはアジア圏の理工系大学に所属する学生間のネットワーク構築を目的とし、今回もプログラムを通じて8カ国からの参加者の間に、深い絆を築き上げることができたように思います。今後もASCENTの開催に向け、SAGE一同努めていきます。

東工大基金

このプログラムは東工大基金によりサポートされています。

東工大への寄附 > 東京工業大学基金

お問い合わせ先

国際交流学生会SAGE

E-mail : sage.tokyo.tech@gmail.com

「一日東工大生2019」開催報告

$
0
0

6月2日、日射しまぶしい日曜日、おもに女子高校生に本学でのキャンパスライフを体験していただくイベント「一日東工大生」が開催されました。

5回目の開催となった今年は益一哉学長も参加し、首都圏各地の女子校および共学校から全17校が参加しました。参加生徒数は168名、引率高校教員も15校から20名が参観し、水本哲弥理事・副学長(教育担当)の熱いウェルカムスピーチに迎えられて、みんなで「一日東工大生」体験をしました。

概要

当日のプログラムと参加校は以下の通りです。

プログラム

 
プログラム
会場
10:00 - 11:30
レクチャー
「からだの中を光で診る ~医療の未来」
近藤科江教授(生命理工学院)
西講義棟1
レクチャーシアター
11:40 - 12:40
先輩と語ろう
学校ごと 先輩トーク。総勢約40名の先輩がおもてなし。
学食体験
お好きなメニューでどうぞ。先輩がエスコートします。
大学食堂棟1階
生協第1食堂
12:45 - 13:40
専門ごと 大質問会
専門分野に分かれて
理学/機械/電気/応用化学/情報/生命/建築/融合/未定
大学食堂棟1階
生協第1食堂
13:40 - 14:00
移動、休憩
14:00 - 15:30
実習
「飛び出せ工学君! 」 ~振動を使って走る移動機械を創る!
岩附信行教授(工学院長)
大岡山西2号館 4階
W241講義室
15:30 - 15:40
アンケート提出、東工大セット配布、解散

参加校

  • 浦和明の星女子中学・高等学校
  • 浦和第一女子高等学校
  • 桜蔭中学校・高等学校
  • 鴎友学園女子中学高等学校
  • 大妻中学高等学校
  • お茶の水女子大学附属高等学校
  • 川越女子高等学校
  • 吉祥女子中学・高等学校
  • 共立女子中学高等学校
  • 栄東中学・高等学校
  • 渋谷教育学園渋谷中学高等学校
  • 頌栄女子学院中学校・高等学校
  • 女子学院中学校・高等学校
  • 洗足学園中学高等学校
  • 東京学芸大学附属高等学校
  • 豊島岡女子学園
  • 雙葉中学・高等学校
五十音順

プログラムの様子

午前・ランチタイム・午後と、それぞれに工夫が凝らされたプログラムが行われました。

からだの中を光で診る~医療の未来~

午前はレクチャーシアターでの講義、生命理工学院 生命理工学系の近藤科江教授の「からだの中を光で診る~医療の未来」です。工藤明特命教授が用意したメダカの透視画像を蛍光顕微鏡で覗き、はじまる前から期待が高まります。

まずは近藤教授の自己紹介です。「女性はダメだ」と研究室入りを断られたり、留学先でも希望の専門分野に出会えなかったり、人生でぶつかった、あまたの「壁」を壊して道を切り開いてきた近藤教授の歩みに、女子高校生たちは、自分の未来を重ねて、真剣に聞き入っていました。「自分の限界を周りの偏見に合わせて決めるな。」女性科学者の先輩からのパワフルなメッセージです。

自己紹介のあとはいよいよ本題、放射線のような有害なものを使わずに体のなかを透視する「光の医療」最前線へ。まずは全員に配布した、コンサートでおなじみの光るブレスレットをポキッと折って光らせてみましょう。「なぜ光るの?」「隣の人と色が違うのはどうして?」真っ暗な会場でキラキラ光る蛍光の神秘に、好奇心が加速します。

光の発生は、エネルギーが生み出されて起きる現象です。いろいろな色に見えるのは、長さが異なる波として光が生み出されているためです。化学反応で生み出された光エネルギー(化学発光)を蛍光物質に与えて、さまざまな波長をもった蛍光物質固有のエネルギー(蛍光)を作り出したため、このブレスレットはいろいろな色に光りました。波長は長くなると体の中を通り抜ける力が強くなるので、たとえば赤い色のように、より長い波長の光を用いれば、より体の深いところまで見ることができます。この光を超高感度で捉えることができれば、光で診断できる未来が期待できます。光診断の特徴は、安全であるとともに、形だけでなく、その組織がどう機能しているかも診断できることにあります。

近藤教授の語る医工連携の未来に真摯に聴き入る参加者
近藤教授の語る医工連携の未来に真摯に聴き入る参加者

工藤特命教授の説明で見る蛍光顕微鏡の画像
工藤特命教授の説明で見る蛍光顕微鏡の画像

原理の説明に続き、実験室にいる大学院生が、枯れ葉やマウスの実験の進行を実況中継しました。臨場感あふれる演出のおかげで、ラボ気分も味わえました。

からだの機能を光で診断する。キラキラブレスレットから広がる未来の医療に触発されて、質問タイムには免疫に関わる深い質問も飛び出し、医療=医学部ではなく、医工連携の未来では、工学こそが新しい医療を担っていくことが発見できた90分間でした。

先輩と語るランチタイム

日曜日の生協食堂を特別にオープンし、母校の先輩としっかり語れる2時間のランチタイムを準備しました。

参加校それぞれの高校の卒業生で本学在学中の学生が、おもてなし先輩部隊としてランチタイムの運営を担いました。各校2~3名ずつ総勢42名の先輩が参加し、高校ごとに分かれて後輩たちとランチ・テーブルを囲みます。懐かしい制服、懐かしい先生、少し成長した自分も見てもらいたいと、ガールズトークに花が咲きます。

先輩たちとの語らい

先輩たちとの語らい

ランチタイム後半は、志望の専門分野ごとに分かれての大質問会にシフトチェンジ。専門がしぼりきれない方には、入学したばかりの1年目の学生が自分の経験をもとに対応していました。先輩1名を4~5名の高校生が囲むバランスの良い配置で、聞きたいことが聞ける体制になるよう配慮しました。

飛び出せ工学君!

工学院長の岩附信行教授の講義は、まずはちょっとしたマジックから始まりました。「あなたの『心の数字』を当ててみましょう。ミュージック・スタート!」みるみるフロアの気分がほぐれてゆきます。

さらに、珍しい「カエル木魚」の音を聴かせつつ、工学分野の幅広さを紹介したあとは、いよいよ実習「振動を使って走る移動機械を創る!」です。

ゼンマイでぶるぶると振動する小さなユニットに4本の針金の脚を付けて、振動を前進する動きに変えるマイホースを作りました。脚の向きや長さを工夫すれば、ガラッと動きが変化します。6名の岩附研究室の先輩たちがフロアを走り回ってサポートしました。

どんな形が一番速く走れるか!答えはどこにも載っていません。理屈よりも、とりあえず手を動かしての試行錯誤が重要です。20分の工作&試行時間を終えると、壇上にしつらえられたグリーンのミニ競馬場で、いざ真剣勝負。白熱のレースを勝ち抜いて優勝したのは共立女子中学高等学校の生徒さん、準優勝は鴎友学園女子中学高等学校の生徒さんでした。

最後に、益学長より、スピーチ「来たれ東工大!」がありました。

生命の光の神秘にうっとり魅了され、同窓の先輩と楽しく盛り上がり、マイホースを勇ましく走らせた充実の一日。今回のイベントが、参加者にとって、進路選択の大切なきっかけにしてもらえることを期待しています。

白熱のホースレース
白熱のホースレース

益学長からのエール
益学長からのエール

アンケート結果

新しいことに出会えた参加者の興奮が、自由記述欄にぎっしり詰まっていました。その中からほんの一部をご紹介します。

からだの中を光で診る

- 生命、医療系に興味がある私にとって、医工連携はとても興味深い内容で、これからの時代より一層求められるべきは医-工間の技術、ニーズとシーズの発展であり、私もその橋渡しの一員になれたらな、と思いました。

- 「ネガティブ」を「ポジティブ」に「ピンチ」を「チャンス」にしていけるよう、日頃もっとがんばりたいと思えました。

- 光で体の中を見るというのはとても興味深かったです。意外なものから意外なことができると思うとわくわくします。

先輩と語るランチタイム

- 親身になって話を聞いて下さったり、高校時代の勉強方法など役に立つ話をしてくださったりなど、とても良い機会になりました。東工大の具体的なイメージがわいて、とても楽しかったです。

- 自分の興味あることを貪欲に追求している姿が素敵でした。この大学に入りたいと改めて思いました。アドバイスをたくさんいただいたので、今日からまた頑張ります。1日ありがとうございました。

- 昨年の一日東工大生で隣の席で講義を受けていた先輩が、今日は東工大生としていろいろなことを教えてくださって、2年後は自分もそんな風にして東工大生側になりたいと思いました!

飛び出せ工学君!

- ゴキブリみたいな形にしたらサーッといきました。先生の元で工学を学びたいと思いました。

- 答えのない問題はモヤモヤしそうなイメージだったけれど、楽しく実験できました。

- もっと速くなるよう家でつくってみます!

お問い合わせ先

学務部 入試課

Email nyu.event@jim.titech.ac.jp


藤枝俊宣講師が日本生体医工学会 臨床応用研究賞・荻野賞を受賞

$
0
0

藤枝俊宣講師
藤枝俊宣講師

生命理工学院 生命理工学系の藤枝俊宣講師が、日本生体医工学会より平成30(2018)年度臨床応用研究賞・荻野賞を受賞しました。東工大としては初めての受賞となります。

臨床応用研究賞・荻野賞は、本学会の対象とする領域において独創性があり、かつ臨床上有用と認められる研究を表彰するために、平成4(1992)年に創設されました。本賞の募集は本年度が第26回目となります。藤枝講師は、「メトロノミック光線力学療法に向けた生体接着性無線式オプトエレクトロニクスの開発」という研究課題で受賞しました。当該研究内容は、英科学誌ネイチャー・バイオメディカル・エンジニアリング(Nat. Biomed. Eng., 3, 27 (2019).)でも報告されています。

藤枝講師のコメント

大変名誉ある賞を頂き、光栄に存じます。本研究では、体内埋め込み型の無線式発光デバイスを開発し、新しい光がん治療システムを世界に先駆けて報告しました。医工連携体制のもと取り組んだ研究内容であり、その苦労を評価頂けたことを大変嬉しく思います。この場を借りて、共同研究者の先生方や研究室の学生の皆様に厚く御礼を申し上げます。本技術をがんと闘う患者様やその御家族、また、医療従事者の方々に届けられるよう研究室一丸となり、引き続き研究開発に尽力して参ります。

<$mt:Include module="#G-11_生命理工学院モジュール" blog_id=69 $>

お問い合わせ先

広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp

Tel : 03-5734-2975

上空100 mのドローンからミリ波を用いた4K非圧縮映像のリアルタイム伝送に成功

$
0
0

セコム株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:中山泰男)と国立大学法人東京工業大学(所在地: 東京都目黒区、学長:益 一哉)の阪口啓研究室(工学院電気電子系)は、長距離通信を可能とするミリ波無線通信装置を共同開発し、上空のドローンからリアルタイムで4K非圧縮映像を伝送することに成功しました。

ミリ波を用いた4K非圧縮映像のリアルタイム伝送に成功

セコムは、無線通信技術を活用して、ドローンで広域施設を警備するサービスの実現に取り組んでいますが、ドローンで広域を監視するには、広範囲の映像を迅速かつ正確に把握・分析するために高精細な映像をリアルタイムに配信する必要があり、それを実現するための無線通信技術が求められています。

一方、東京工業大学は、5G-MiEdgeプロジェクト※1でミリ波無線通信の研究開発に取り組んでおり、その研究成果に基づき映像伝送を対象としたミリ波無線システムの設計およびハードウェアの開発などを行ってきました。

今回着目したミリ波無線通信は、高速通信ができることから、今後5Gなどでの活用が期待されていますが、電波の減衰が大きいため通信距離が制限されるといった課題があります。

セコムと東京工業大学は、この課題を解決するためにSOFTechコンソーシアム※2の枠組みで2018年から共同での研究開発を進め、Intel社の協力の下、Intel社が開発したレンズアンテナを用いた、映像の長距離伝送が可能なミリ波無線通信装置の開発に取り組みました。

レンズアンテナは、電波を発射する角度を絞ることで到達距離を延ばすことができることから、映像の長距離伝送に適した性能を持つ一方、サイズや重量の問題からこれまでドローンへの搭載が進んでいませんでした。今回、セコムと東京工業大学は、Intel社のレンズアンテナの小型・軽量という特徴を活かし、ドローンに搭載可能なミリ波無線通信装置を用いた映像伝送システムの構築に取り組み、4K非圧縮映像のリアルタイム伝送を実現しました。従来の圧縮伝送に比べて遅延を飛躍的に短縮化することができました。

この構築した映像伝送システムの有効性を確認するために、ミリ波無線通信装置を搭載したドローンを用いて実証実験を共同で実施し、上空100 mのドローンに搭載した4Kカメラでの撮影映像を地上のアクセスポイントにリアルタイムで伝送することに成功しました。

本技術を活用することで、ドローンでの高精細映像によるスタジアム警備やインフラのモニタリングの実現など、さまざまな分野での「安全・安心」なサービスの提供が可能になります。本成果の実用に向けて、引き続き、検討を進めてまいります。

※1
5G-MiEdgeプロジェクト:総務省(戦略的情報通信研究開発事業)と欧州連合(Horizon 2020)から助成を受ける日欧連携プロジェクト(東京工業大学が研究代表機関)
※2
SOFTechコンソーシアム:JST・産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)のプロジェクトである社会活動継続技術共創コンソーシアム(東京工業大学が研究代表機関)

各組織の役割

セコム : ドローンでの広域監視を想定した映像伝送アプリケーションの開発、および実証実験による通信品質の検証

東京工業大学 : レンズアンテナを用いたミリ波無線通信装置の設計、およびハードウェアの実装

無線通信システムの概要

100 m上空のドローンに搭載した4Kカメラでの撮影映像を、小型で軽量のレンズアンテナを用いたミリ波無線通信装置を通じ、地上のアクセスポイントにリアルタイムで4K非圧縮映像を伝送する。

<$mt:Include module="#G-05_工学院モジュール" blog_id=69 $>

お問い合わせ先

セコム株式会社 コーポレート広報部

井踏、中川

E-mail : press@secom.co.jp
Tel : 03-5775-8210

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東工大学生ボランティアグループが「福島スタディツアー」実施

$
0
0

東工大学生ボランティアグループ(以下、東工大VG)は東日本大震災をきっかけに発足した学生団体であり、復興支援・防災・地域連携活動の3本柱で活動を展開しています。活動の一環として、1月19日に東日本大震災により甚大な被害を受けた被災地の現状を視察するスタディツアーを企画・実施しました。ツアーには本学の学生・教職員26名が参加し、津波の被害にあった地域の現状視察や震災語り部講話の聴講、原発事故廃炉作業の現状視察等を行いました。

ナショナルトレーニングセンターJヴィレッジにて、福島スタディツアー参加者全員の記念撮影

ナショナルトレーニングセンターJヴィレッジにて、福島スタディツアー参加者全員の記念撮影

東工大VGは、1.東日本大震災から8年目を迎え、東日本大震災に関する報道を目にする機会が日に日に少なくなっていること、2.物理的に距離のある東京では被災地の現状に関する情報が得にくくなり、震災の記憶が風化しつつあること、3.震災直後に高まりを見せていた人々の防災意識も、記憶の風化と共に低下しつつあると感じていることから、

  • 東日本大震災被災地の現状を自分の目で確認する機会の提供
  • 東工大生だからこそ可能な復興支援を考えるきっかけ作り

を目的としたスタディツアーを企画しました。

本スタディツアーの企画および行程作成にあたっては福島県いわき復興支援・観光案内所の協力を得、またツアー当日のガイドは福島県いわき市観光協会に依頼しました。

津波被害の際に、緊急避難所の役割も果たす「いわき市地域防災交流センター久之浜・大久ふれあい館」
津波被害の際に、緊急避難所の役割も果たす
「いわき市地域防災交流センター久之浜・大久ふれあい館」

参加者は早朝に渋谷駅(東京都)近辺に集合し、貸切バスで福島県へ向けて出発しました。いわき市到着までのバス車内では、東工大VGが作成した事前学習資料やいわき復興支援・観光案内所所有の映像資料を元にした事前学習を行いました。福島県到着後はいわき市でガイドおよび震災語り部さんと合流し、被災地を巡りました。最初に、地震・津波・火災・原発事故による全地区住民避難を経験した久之浜地区を巡り、「いわき市地域防災交流センター久之浜・大久ふれあい館」にて、被災状況や原発事故の影響による風評被害等の実際と現在の状況について学びました。震災語り部講話は、語り部さんから震災当日とその前後の生々しい様子を直接お聞きすることで、震災に対する認識を深め、いのちの大切さを実感し、今後起こりうる災害にいかに備えるかを考える貴重な時間となりました。

津波の被害を受けた久之浜地区の現在の様子
津波の被害を受けた久之浜地区の現在の様子

いわき市地域防災交流センター久之浜・大久ふれあい館にて語り部講話に耳を傾ける参加者
いわき市地域防災交流センター久之浜・大久ふれあい館にて
語り部講話に耳を傾ける参加者

その後、東京電力福島原発事故の対応拠点となり4月に営業を全面再開した「ナショナルトレーニングセンターJヴィレッジ」の施設を見学し、施設内のレストランで昼食をとりました。昼食後は、「特定廃棄物埋め立て情報館リプルンふくしま」(2018年8月24日オープン)にて放射性物質に汚染されたごみの埋め立て処分について、「東京電力廃炉資料館」(2018年11月30日オープン)では福島原発事故の事実と廃炉事業の現状等、反省・教訓について学びました。

東京電力廃炉資料館にてスタッフの話を聞く参加者
東京電力廃炉資料館にてスタッフの話を聞く参加者

特定廃棄物埋め立て情報館リプルンふくしまにて放射性廃棄物の埋め立て処分までの流れを学ぶ参加者
特定廃棄物埋め立て情報館リプルンふくしまにて
放射性廃棄物の埋め立て処分までの流れを学ぶ参加者

さらに、福島第一原子力発電所から南西7 kmに位置し、現在も帰還困難区域に指定され立ち入り禁止になっている夜ノ森地区付近をバス内から見学し、地区内で避難指示が解除された一部の区域ではバスから降り、見事な桜並木として有名であった場所や現在は誰も住んでいない住宅地の様子、設置されている放射線量モニタリングポスト等を確認しました。

その後、ガイドと震災語り部さんの下車後、帰路につき、渋谷駅近辺にて解散しました。

放射線量モニタリングポストを確認する参加者
放射線量モニタリングポストを確認する参加者

帰還困難区域と立ち入り制限が解除された区域の境界
帰還困難区域と立ち入り制限が解除された区域の境界

国道6号線沿いの帰宅困難地域にある建物の現状
国道6号線沿いの帰宅困難地域にある建物の現状

参加した学生からは以下の感想が得られ、震災復興に対して東工大生として貢献できることを考えるきっかけを提供しました。

「東京にいては知り得ない震災復興の状況を学べた」

「語り部さんのお話を聞きながら、復興過程の情景を眺めていたら涙が浮かんだ」

「自分の専門を活かせることはないかと考える契機となった」

東工大学生ボランティアグループ(東工大VG)とは

東工大VGは、学生支援センター自律支援部門の支援を受け、学内外でのボランティア活動の企画・運営を行っています。2011年3月11日の東日本大震災の復興支援のために被災地に赴いて活動していた学生有志を中心に、同じ志を持つ者同士が声を掛け合い、東工大VGの種が芽生えました。その後、同年9月から始まった「東京工業大学写真洗浄プロジェクト」への参加を通じてキャンパス内におけるボランティアの機運が高まり、様々な活動を企画・実施する今日の姿へと結実しました。現在は、2018年8月より新たに始めた「こども食堂」の活動に力を入れています。「誰かのために、社会のために東工大生としてできることはないか?」、「新しいことに挑戦したい」などの思いを抱く学生が活動しています。

お問い合わせ先

学生支援センター自律支援部門

E-mail : siengp@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-7629

Uplift Modelingによる介入効果の最適化を実現

$
0
0

概要

ソネット・メディア・ネットワークス株式会社(以下、SMN)の研究開発組織「a.i lab.」(アイラボ)は、東京工業大学工学院 経営工学系の中田和秀准教授の研究室との共同研究により、ユーザーへの介入効果を最適化するUplift Modeling手法を開発しました。

Uplift Modelingは、広告配信や投薬などのユーザーへの介入と、購買行動や予後といった結果との「因果関係」を明らかにするための研究分野です。介入による純Lift効果を予測することができれば、事前にユーザーごとに介入の純効果を見積もった上で、効率の良い介入戦略を立てることが可能となります。SMNが事業として展開する広告配信プラットフォームにおいては、広告によって購入しやすさが向上する度合いの高いユーザーのみにターゲティング配信することでROI(投資利益率)を最大化できると期待されています。

Uplift Modeling概念図

Uplift Modeling概念図

研究の背景

従来のUplift Modelingでは、広告配信を実施する集団と、広告配信を実施しない集団に、ユーザーをランダム分けた上で、それぞれの広告効果を比較するA/Bテストを行う必要がありました。従来の広告クリエイティブ(画像)などの効果比較を行うA/Bテストとは異なり、ランダムな広告配信によるA/Bテストでは、対象ユーザーへ興味のない広告配信を行うなどの必要が発生します。

この従来手法では、無駄な広告配信によるユーザー体験の悪化や、興味のある広告に触れられない機会損失が生じるため、現実的に適用は困難でした。そこで、A/Bテストを行うことなく高い精度でLift効果を予測する本手法の研究に取り組みました。

研究の内容

A/Bテストが不要なUplift Modelingの手法としては、Transformed Outcomeが知られていますが、現実的な仮定の下ではこの手法が正しいLift効果を推定できないことを示し、その欠点を解消する新たな手法であるSDRM(Switch Doubly Robust Method)とSDR-MSE(Switch Doubly Robust - Mean Squared Error)(以下、SDR-UM)を提案しました。この手法を心臓カテーテルによる生存率への影響を調査した公開データに適用したところ、治療によって生存率が高くなる患者集団を特定することに成功しました。

※ 公開データ

Right Heart Catheterization Dataouter

掲載誌 :
JAMA (J American Medical Association) 276:889-897
データ提供論文 :
The effectiveness of right heart catheterization in the initial care of critically ill patients.
著者 :
Connors AF Jr (Department of Medicine, Case Western Reserve University at MetroHealth Medical Center, Cleveland, Ohio, USA.)

Real-World Experiment

重症と診断された右心房へのカテーテル治療を行った患者の予後の生存有無が記録されている公開データセットを用いて、今回提案した手法(SDR-UM)を既存の手法と比較しました。このデータセットには、集中治療室で診断後1日以内に右心房カテーテルの治療を受けた5,735人の患者が含まれています。元々のデータセットにおいては右心房カテーテル治療を施すことによって、患者全体における平均的な生存率が減少することが知られていました。しかし、私たちが提案したUplift modelingの手法を用いることで、右心房カテーテル治療を施すことにより生存率を向上させることができる一部(20%)の患者を特定することに成功しました。これにより、右心房カテーテルの実施を個別化することができれば、全体の患者の生存率の向上に繋がると考えられます。

今後の展開

Lift効果の高いユーザーに対して、広告配信を行うことでROIを最適化するだけでなく、当該ユーザーをSMNが提供するマーケティングAIプラットフォーム「VALIS-Cockpit」(ヴァリス-コックピット)によって可視化しInsightを抽出することで、より幅広いマーケティング施策への利用を想定しております。また、本論文で医療データに対する有効性を示したように、さまざまな分野で幅広く活用できると考えております。

本共著論文(Uplift Modelingによる介入効果の最適化)は、カナダ・カルガリーで開催された「SIAM International Conference on Data Mining」(SDM19:開催期間5月2日~4日)にて発表(現地時間5月3日)を行いました。

論文情報

学会名 :
SIAM International Conference on Data Mining(SDM19)
論文タイトル :
Doubly Robust Prediction and Evaluation Methods Improve Uplift Modeling for Observational Data
著者 :
Yuto Saito,Hayato Sakata,Kazuhide Nakata
DOI :

参考情報【「a.i lab.」(アイラボ)概要】

「a.i lab.」(Ambitious Innovation Laboratory)は、独自に開発したAI「VALIS-Engine」(ヴァリス-エンジン)をはじめ、マーケティングテクノロジーに関する先進的な研究開発を行っています。「VALIS-Engine」のテクノロジーを商品やサービスに導入することで、「貰って嬉しい広告」「機会損失の最小化」の実現を目指す研究開発組織です。

ソネット・メディア・ネットワークス 会社概要

2000年3月に設立。ソニーグループで培った技術力をベースに、マーケティングテクノロジー事業を展開しています。「技術力による、顧客のマーケティング課題の解決」を実現するため、ビッグデータ処理と人工知能のテクノロジーを連携し進化を続けています。 現在、DSP「Logicad」、マーケティングAIプラットフォーム「VALIS-Cockpit」などを提供することで、マーケティングに関する様々な課題解決を実現しています。

ソネット・メディア・ネットワークス株式会社outer

記載されている会社名および商品名、サービス名は各社の商標または登録商標です。
<$mt:Include module="#G-05_工学院モジュール" blog_id=69 $>

お問い合わせ先

ソネット・メディア・ネットワークス株式会社

経営企画管理部 経営企画課

E-mail : pr@so-netmedia.jp
Tel : 03-5435-7944 / Fax : 03-5435-7944

東京工業大学 工学院 経営工学系

准教授 中田和秀

E-mail : nakata.k.ac@m.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3321 / Fax : 03-5734-3321

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

東工大コンサートシリーズ2019年春 「クラシックとジャズにおける即興の精神~北村英治&平塚太一」開催報告

$
0
0

5月9日、東京工業大学大岡山キャンパス西9号館ディジタル多目的ホールで、東工大コンサートシリーズ2019年春「クラシックとジャズにおける即興の精神~北村英治&平塚太一」を開催しました。約450人の聴衆が素晴らしい演奏に聴き入っていました。このコンサートシリーズは、2015年に当時の大学院理工学研究科(工学系)(現在は工学院 物質理工学院 環境・社会理工学院が主催)が開始した芸術系イヴェントの1つであり、一般にも開放されています。

左から栗原壱成さん(ヴァイオリン)、高浜和英さん(ピアノ)、北村英治さん(クラリネット)、平塚太一さん(ピアノ、企画)

左から栗原壱成さん(ヴァイオリン)、高浜和英さん(ピアノ)、北村英治さん(クラリネット)、平塚太一さん(ピアノ、企画)

このシリーズは、科学者を触発し続けてきた芸術を愉しむ会であり、実際に研究開発を行っている理工系の教員が企画・運営を行っているところに特徴があります。通常は、若いアーティストを紹介する場ですが、今回は、ジャズのレジェンド北村英治さん(クラリネット)にお越しいただきました。

前半は、クラシックにおける即興の精神。クラシック音楽は楽譜どおりに演奏しないといけない厳格なものと思われがちですが、モーツァルトが活躍した時代には、センスのよい即興が行われていました。栗原壱成さん(ヴァイオリン)と平塚太一さん(ピアノ)の2人の若い音楽家が、トークを交えながらバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ドビュッシー、ラヴェル、クライスラー、パガニーニの作品を即興の要素を入れながら演奏しました。

後半はジャズの名曲集(「メモリーズ・オブ・ユー」「ムーンライトセレナーデ」「世界は日の出を待っている」など)。北村さんと高浜和英さん(ピアノ)の名コンビによる演奏に会場が沸きました。最後は、若い2人と北村さんによるクライスラーの「愛の喜び」でした。

次回はウィーンフィル首席フルート奏者を迎えて

次回は、9月12日(木)に、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団の首席フルート奏者ワルター・アウアーさんをお迎えして、東工大生と卒業生への公開レッスン(マスタークラス)とコンサートを行います。音楽大学でもないのになぜ?と思われるかもしれません。しかし、ワルツ王のヨハン(2世)&ヨゼフ・シュトラウス兄弟や音楽の帝王と呼ばれたカラヤンがウィーン工科大で学んでいたことを考えれば、ウィーンフィルのメンバーにとって、東工大で教えるのはごく自然なことなのです。

<$mt:Include module="#G-05_工学院モジュール" blog_id=69 $> <$mt:Include module="#G-07_物質理工学院モジュール" blog_id=69 $> <$mt:Include module="#G-13_環境・社会理工学院モジュール" blog_id=69 $>

問い合わせ先

物質理工学院応用化学系 准教授 小西玄一

E-mail : gkonishi@polymer.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2321

リーダーシップ教育院登録式 第2期(6月登録)生18名を迎えて開催

$
0
0

6月6日、東工大大岡山キャンパス本館にて東京工業大学リーダーシップ教育院(ToTAL)の第2期(6月登録)生 登録式、オリエンテーションおよびキックオフを兼ねたワークショップを行いました。

集合写真

集合写真

益一哉学長祝辞
益一哉学長祝辞

昨年4月に設立されたリーダーシップ教育院は、卓越した専門性に加え、学術分野の枠を超えた多様な人々を巻き込んで将来の国際社会を牽引することができるリーダーシップを備えた人材の育成をミッションとする、大学院修士課程・博士後期課程一貫(5年間)の教育プログラムです。リーダーシップ教育院では、約7年にわたり培ってきた博士課程教育リーディングプログラムのリーダーシップ教育と、本学 リベラルアーツ研究教育院の知見を組み合わせることで、社会・経済の持続可能な発展を担う理工系人材を育成する、全く新しい教育プログラムを実現しています。

登録式は、本プログラムの第2期(6月登録)生、全18名(うち7名が外国人留学生)を迎えて行われました。益学長は祝辞の中で、「3つのコミットメント(多様性と寛容、協調と挑戦、決断と実行)を心に留めて、本プログラムに積極的に、そして楽しみながら参加し、学修に励んでほしい」と話しました。

その他、佐藤勲理事・副学長(企画担当)、水本哲弥理事・副学長(教育担当)から挨拶があり、井村順一リーダーシップ教育院長から挨拶とリーダーシップ教育院教員の紹介の後、益学長から登録学生1人ひとりに対して登録許可書が授与されました。

登録式後に行われたオリエンテーションでは、登録学生が自身の学院の系・コースにおける専門教育に加えて受講することとなる、「社会課題の認知」「グローバルコミュニケーション」「リーダーシップ・フォロワーシップ養成、合意形成」「オフキャンパスプロジェクト(3ヵ月程度)」「幅広い教養」といった、リーダーシップ教育院が提供するカリキュラムの説明がありました。

オリエンテーションの様子

オリエンテーションの様子

リーダーシップ教育院のカリキュラム

リーダーシップ教育院のカリキュラム

グループワークショップの様子

その後のキックオフを兼ねたグループワークショップでは、登録学生と教員が4つのグループに分かれ、「えんたくん」(丸型段ボール)を囲み、お互いに自己紹介をして、最後に大きなひとつの輪の形で着席し、グループワークで知ったメンバーについて他己紹介を行って親睦を深めました。

異なる専門分野、文化的背景をもつ仲間と切磋琢磨する中で、志を立て成長してゆく学生達の今後の活躍にご期待下さい。

グループワークショップの様子

グループワークショップの様子

グループワークショップの様子

 

お問い合わせ先

リーダーシップ教育院(ToTAL)

E-mail : total.jim@total.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3755

東工大アネックス アーヘン 「持続可能エネルギー」に関するワークショップを開催

$
0
0

東京工業大学がドイツのアーヘン工科大学に開設した海外拠点、東工大アネックス アーヘン(Tokyo Tech ANNEX Aachen)は5月22日から23日にかけて、「持続可能エネルギー」をテーマとするジョイントワークショップをアーヘン工科大学との共催で開きました。両大学からエネルギーをキーワードとした幅広い分野を代表する研究者が集い、発表を行いました。

東工大からは15名、アーヘン工科大学からは14名の研究者が参加したこのワークショップは、アーヘン工科大学のシュテファン・ピッシンガー教授および本学の渡辺治理事・副学長(研究担当)による挨拶から始まりました。続いて、本学 科学技術創成研究院 グローバル水素エネルギー研究ユニットの岡崎健特命教授、アーヘン工科大学 E.ONエネルギー研究センターのリック・W・デ・ドンカー教授、及び本学 物質理工学院 応用化学系の伊原学教授が基調講演を行いました。

あいさつするピッシンガー教授
あいさつするピッシンガー教授

あいさつする渡辺理事・副学長
あいさつする渡辺理事・副学長

持続可能エネルギーというキーワードのもと、水素エネルギー、燃料電池、蓄電池等から風力発電、燃焼機関、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留まで発表は多岐にわたりました。また、ワークショップの後にはアーヘン工科大学内のエネルギー関連施設のツアーも組まれ、参加者にとって大きな刺激を受けた2日間になりました。大学関係者及び企業等研究者による参加は、約80名にのぼりました。

持続可能エネルギーを議論したワークショップ

持続可能エネルギーを議論したワークショップ

本ワークショップは、2019年3月に本学初の欧州拠点として開設した東工大アネックス アーヘンの活動の一環です。最先端分野を議論するためのジョイントワークショップを毎年開催して研究者の交流を深め、ドイツだけでなくアーヘンの立地を生かして近隣の諸国(ベルギー、オランダ、フランス等)との連携も視野に入れた活動を行っていきます。

お問い合わせ先

国際部 国際事業課 国際事業グループ

E-mail : annex.aachen@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-3827


「未来年表」を生み出す「未来のシナリオを考えるワークショップ」を初開催

$
0
0

東工大未来社会DESIGN機構(以下、DLab)は、2018年9月に発足した新しい組織です。大学が設置した組織としては珍しく社会への貢献を第1の目的として掲げ、「豊かな未来社会像を学内外の多様な人材と共にデザインし、描いた未来へ至る道筋を提示、共有することで、広く社会に貢献すること」を活動目標としています。

まだ誰も見たことのない未来を、その実現に向けた道筋を示しつつわかりやすく提示するという課題は、予想よりはるかに困難なものでしたが、2018年度の活動により、東工大ならではの「東工大未来年表(仮称)」を作成し、そこから未来社会像を創出するという計画を立て、2019年度の取組を開始しました。

DLab最新動向

DLabは5月18日、東工大大岡山キャンパス百年記念館にて第1回目の「未来のシナリオを考えるワークショップ」を開催しました。今回のワークショップは、未来洞察というアプローチを活用して、「東工大未来年表(仮称)」を構成する数十の未来シナリオの作成を目的としています。

ワークショップの詳細については、以下の記事をご覧ください。

DLab構成員に聞く「DLabってどんなところ?」

人々が望む未来社会像を多様な視点で議論していくため、DLabには学内外から様々な経歴を持つ構成員が集まっています。なぜDLabの活動に参加することになったのか、今後の活動にどのような期待を持っているのかインタビューしました。構成員の紹介とともに、それぞれが思い描くDLabの姿をご紹介します。(肩書はインタビュー当時のもの)

未来デザインとは、枠を飛び越えること

DLab Team Imagine(チームイマジン)所属 蟹江憲史さん
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 教授

1994年慶應義塾大学 総合政策学部卒業、2000年慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科 後期博士課程単位取得退学、2001年慶應義塾大学 博士学位取得。2003年東京工業大学 大学院社会理工学研究科 助教授、2007年同准教授を経て、2015年より現職。

DLab Team Imagine所属 蟹江憲史さん
DLab Team Imagine所属 蟹江憲史さん

私は2003年から2015年までの12年間、東工大の大学院で国際関係論を教えていました。東工大には、理工系の大学でありながら、リベラルアーツを重視する伝統があり、理工系教員と文系教員が垣根なく自由に意見を交わす校風があります。

その東工大から、大学の外から様々な専門家を招き、「ちがう未来」を作っていこうというプロジェクトが立ち上がり、参加してほしいとお声がけいただきました。DLabの掲げる「30年から50年先の未来像の創出」という目標は、私の専門領域であるSDGs(2015年国連サミットで採択された持続可能な開発目標)とも重なり合います。東工大OBとして、SDGsの専門家として、私はこのプロジェクトに参加することにしました。

私が専門としているSDGsの観点からすると、「持続可能性」を突き詰める、ということが重要です。つまり、新しいもの、新しい産業をただ作り出すだけではなく、どう使うか、どうリサイクルするか、どう無駄を省くか、どう環境に負荷を与えないか、ということを考えねばなりません。

例えば、現在、微小なマイクロプラスチックによる海洋汚染が深刻化しています。となれば、この問題における未来のデザインにおいては、従来のプラスチックに変わる生分解性の素材開発、あるいはプラスチックそのものの使用を減らす仕組みの開発などが問われるようになる。当然、その開発においては科学技術が要となります。ますます東工大のような理工系の知の拠点の存在が重要になるわけです。DLabでも、ぜひ科学技術をテコにした未来を示してほしい、と思います。

人口が増大し続ければ、当然資源は枯渇します。環境汚染も広がる恐れがあり、生物多様性など自然も脅かされます。だからこそ、持続可能な未来を私たちは模索しなければなりません。ただし、一方では、決して窮屈にならない、誰もが幸せだなと感じられるような未来を志向しなければなりません。両方実現するのはとてもハードルが高い。そこで必要となるのが若い人たちの自由な、枠にとらわれない発想です。DLabにも、若い人たちの自由奔放なアイデアと未来の絵図を組み込んでほしいですね。そして、他の大学では絶対にできない、東工大ならではの「科学」と「技術」に立脚した未来像を提示してほしいと考えています。

未来年表は、ベータ版を作り続けよう

DLab Team Imagine所属 根本かおりさん
株式会社博報堂 ブランド・イノベーションデザイン局 ストラテジックプランニングディレクター

一橋大学 社会学部卒業。株式会社博報堂に入社し、広告の現場で自動車、化粧品、家庭用品などの広告マーケティングやブランディングに携わる。ブランド・イノベーションデザイン局では、生活者発想・未来発想に軸足を置いた事業・商品・サービスデザインに従事。

DLab Team Imagine所属 根本かおりさん
DLab Team Imagine所属 根本かおりさん

DLabは、メンバーの雰囲気がとってもいいですね。何より、東工大の先生方が情熱的で生き生きとしていて、次から次へとアイデアを出してくれる。しかも、理工系の先生とリベラルアーツの先生がいらっしゃるので、私のような根っからの文系人間も、うまく混ざることができました。

個人的に感動したのはプレワークショップで出会った「えんたくん」ですね。ダンボール製の円卓を4人の膝の上に乗せて、あれこれおしゃべりしながらブレインストーミングをやる。ものすごくクリエイティブです。生身の人間がくっついて話して考えるからいいアイデアが出る。「下部構造の設計」が「上部構造=思想や思考」の質をあげることを実感しました。

大学や行政のイベントはやっておしまい、という側面がしばしばあるのですが、2018年10月に開催されたキックオフイベントはそうではありませんでした。理工系の先生方がそれぞれの立場の刺激的な未来像を発表し、参加者たちは4人組のグループに分かれて「えんたくん」を使いながら、自分の考える「未来」を文字やイラストに落とし込んでいく。入念な準備をされたんだろうなと思いました。

さらに良かったのは、このグループのメンバーが多種多様だったこと。東工大OB・OGの企業経営者層や、バリバリの学者や、現役の大学生や高校生が、上下関係なしのフラットな状態で意見交換をする。高校生や大学生が、全く物怖じせずに自分の意見を披露する。彼らの能力もさることながら、そうさせる「場づくり」の妙がこのイベントにはありました。

DLabに参加して感じたのは、もっともっと産官学のプレーヤーがそれぞれの立場から自由に議論をして、アイデアを社会実装するチャンスを作るべきだな、ということです。私としては、ぜひこのメンバーでオリジナルの未来年表を作りたい。ただし、ひとつ作ったらおしまい、ではなくて、その年表をベータ版として、どんどんバージョンアップしていく。現実も科学技術も日々バージョンアップするのに、未来年表が一旦作り上げたらそこでおしまいであっていいわけがない。それでは、あっという間に未来どころか過去の遺物になってしまいます。そこで、私はキックオフイベントの時のように、若い人たちのアイデアも取り入れた生きた未来をDLabで描きたいと思っています。

リアルな経験を積み重ねて欲しい

DLab Team Imagine所属 角南篤さん
公益財団法人笹川平和財団 常務理事、政策研究大学院大学 学長特別補佐/客員教授

1988年ジョージタウン大学(米国) 外交政策・国際関係大学院卒業、1993年コロンビア大学(米国) 国際関係学修士を取得、2001年コロンビア大学 政治学博士号取得、2014年政策研究大学院 大学教授、学長補佐、2016年より現職。

DLab Team Imagine所属 角南篤さん
DLab Team Imagine所属 角南篤さん

東工大は日本最先端の科学技術を広く扱っているユニークな大学です。DLabにお誘いいただいたとき、東工大から未来社会のビジョンを発信することは、日本社会がビジョンを持つことと同じだと思いました。つまりこれは日本が今後あるべき姿を検討し描いていくという重要なプロセスであり、それに関われるのは非常に光栄なことでした。そして、このプロジェクトに参画してみて、最初に東工大の学生さんたちのエネルギーを感じました。ただ、おとなしいとも思いました。理工系の分野に秀でて東工大に入っているわけですから、いろんなことができると思うのですが、自分の持っている力が社会を変えられるということに対して、謙虚な感じがしたのです。社会的なビジョンを持って、アグレッシブにという雰囲気ではなかったですね。だからこそ、DLabは、未来の社会を自分で考え、その未来社会に向けて自分たち自身で今をつなげていくという、主体的な考えを個々に持てるいい機会になるのではないでしょうか。

また、DLabは、ジャンルを超えた人たちが集まった組織であるという点も魅力的です。東工大および外部の有識者、現役の企業の方々、卒業生も加わっています。大学教育は、教員と研究と学生というラインでしかつながっていない。そこに全く別の世界の人が入って学生と関わっていくと、異なる視点や発想が生まれます。教える側にとっても刺激的です。いままで自分が一生懸命蓄えてきた知見なり経験を学生に伝えるだけではなく、外とも連携しながら、より幅広い形の教育を作れる機会になります。そして教員自身の見方も広がって、その研究にも反映されるとしたら非常にいいことですね。

ビッグデータの時代の中で、どうやって私たちは新しい挑戦、経済で言えば競争に勝って生き残るかということが焦点になっていますが、私はリアルなデータが大切だと考えています。1億人のデータから「あなたの傾向はこうだ」と言われても、あくまでも傾向に過ぎなく、リアルにいる人が語る経験とは重みが全く違います。数の問題ではないのです。実際に体験をする。ものを作ってみる。ものを壊してみる。東工大の学生さんたちには、リアルな経験を積み重ね、その経験を活かして未来を志向してほしいと願っています。

お問い合わせ先

総務部企画・評価課総合企画グループ

Tel : 03-5734-2011

E-mail : kik.sog@jim.titech.ac.jp

学外の方も利用できる機器利用制度がスタート

$
0
0

東京工業大学に設置している先端機器を、企業等や学術研究機関所属の研究者の方も利用できる制度がスタートしました。本学では研究基盤の一つとして研究設備の共用化に取り組み、豊かな研究環境を整えることに力を入れています。

「ライフサイエンス推進機器共同利用室」(以下、共同利用室)は、2017年に全学のライフサイエンス関係の先端機器などの共用化推進を目的として、生命理工学院に設置されました。バイオ関連の全学の共同利用施設として活用されているバイオ研究基盤支援総合センター(以下、バイオセンター)と連携しつつ、様々なライフサイエンス関連の先端機器を広く共用化し、本学の教育研究活動に貢献できるよう事業を推進しています。

今回、新たに共同利用室の先端研究設備を学外の研究者にもご利用いただけるよう制度を整備したことで、ライフサイエンス分野の更なる発展と産学連携体制の強化につながることを期待しています。

レンタル可能な実験室とオフィス

レンタル可能な実験室とオフィス

整った環境ですぐに実験開始可能

研究をすぐに始められるよう、実験台や汎用機器を揃えた実験室を実験台1区画から、整備されたオフィスを事務机1台から、それぞれ月単位でお貸しします。

多数の共用機器を完備

多数の共用機器を完備

ご利用の流れ

学外からの機器利用については、まず、本学で以下のいずれかの身分等を取得していただく必要があります。 但し、委託解析の場合には身分の取得は不要です。

1.
東京工業大学特別研究員(大学又は公的な学術研究機関に所属している場合)
2.
民間等共同研究員(共同研究取扱規則に定める共同研究に該当する場合)
3.
受託研究員(1・2に該当せず、企業等に所属している場合)

島津製作所 精密機器分析室

2016年の大学改革による生命理工学院創設を機に、株式会社 島津製作所から寄贈された液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)などのライフサイエンス関連先端精密機器を中心に、先端的な機器を備えた施設です。先端研究の推進をはじめ、若手研究者や学生などの研究支援、国際共同研究や種々の企業との産学連携の推進に活用されています。

島津製作所 精密機器分析室

島津製作所 精密機器分析室

島津製作所 精密機器分析室

バイオセンターとの連携

バイオセンターの先端機器もご利用可能です。超高解像度光学顕微鏡システム、電子顕微鏡、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF MS)等ハイスペックな装置を多数所有しています。また、すでに学内で高い評価を得ているDNAシーケンス解析サービスをはじめとする委託分析も受け付けています。

  • バイオセンターの先端機器
  • バイオセンターの先端機器
  • バイオセンターの先端機器

バイオセンターの先端機器

<$mt:Include module="#G-11_生命理工学院モジュール" blog_id=69 $>

お問い合わせ先

生命理工学院 ライフサイエンス推進機器共同利用室

E-mail : kyoyo.office@bio.titech.ac.jp

Tel : 045-924-5731

植物の酸化還元状態をリアルタイムで検知 チオレドキシンの酸化還元状態変化のセンサーを開発

$
0
0

要点

  • タンパク質の酸化還元によって起こる構造変化を利用
  • 蛍光が変化する新たな酸化還元タンパク質プローブの開発に成功
  • 植物機能制御の鍵タンパク質であるチオレドキシンの状態変化検出が可能に

概要

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の杉浦一徳研究員(研究当時。現職 大阪大学 産業科学研究所 生体分子機能科学研究分野 特任研究員)と久堀徹教授らは緑色植物葉緑体内の酸化還元制御機構[用語1]の鍵タンパク質であるチオレドキシン[用語2]の酸化還元状態をリアルタイムにモニターできる蛍光タンパク質センサーCROST(Change in redox state of thioredoxin)[用語3]を開発し、明暗条件の変化により植物体内でチオレドキシンの酸化還元が変化する様子を捉えることに成功した。

チオレドキシンが光合成の電子伝達系から還元力を受け取ると、分子表面の2個のシステインのチオール基[用語4]が還元状態になる。還元型チオレドキシンが葉緑体内の様々な酵素分子を標的として働き、酵素分子が持っているジスルフィド結合[用語5]を還元する。還元された酵素分子は構造変化を起こし、通常活性型になる。こうしてチオレドキシンは光合成が始まるのに対応して、葉緑体内の様々な酵素分子の活性を制御する因子として働く。このため、チオレドキシンがいつどのくらい還元されるかを調べることは、葉緑体の機能制御のメカニズムを探る大切な情報となる。

これまでチオレドキシンの状態を調べるには、葉を瞬間凍結して組織の中のタンパク質分子の状態を化学的に調べる方法が一般的だった。しかし、電子移動は瞬時に起こるため、タンパク質の細胞内の動態を探るにはリアルタイムに酸化や還元状態を探る方法が不可欠だった。

研究成果は6月20日付け、アメリカ分子生物学生化学会誌「Journal of Biological Chemistry(バイオロジカル・ケミストリー)」に掲載された。

研究の背景

チオレドキシンは生体内の酸化還元状態を利用して様々な生体分子を調節する非常に重要なタンパク質で、動植物、細菌などほとんど全ての生物が持っている。中でも、植物の光合成の場である葉緑体に局在しているチオレドキシンは、光合成反応の調節を行う重要な役割を担っていることが知られている。

光合成では、光エネルギーを化学エネルギーに変換する重要なエネルギー変換プロセス(光エネルギー変換過程)と、二酸化炭素を有機物に変換する化学合成プロセスとを協調的に働かせるために、酵素の活性をうまくコントロールすることが不可欠となる。そのために植物が獲得した方法が、光エネルギー変換過程で水の分解によって生じる還元力そのものを利用して、タンパク質を還元して活性調節するという方法である。この時に生じる多くの還元力は二酸化炭素の還元に用いられ、糖が合成されるが、チオレドキシンは一部の還元力をこの糖の合成を触媒している酵素分子そのものの還元に利用し、その活性を調節する。

したがって、植物体内ではチオレドキシンの酸化還元状態が、植物の機能制御を理解するうえで欠かせない重要な情報といえる。これまで、チオレドキシンの酸化還元状態を調べる方法は化学修飾によるものが一般的で、リアルタイムにタンパク質の状態を観察する方法はなかった。

研究成果

葉緑体内には、チオレドキシンによって還元されることで大きく構造が変化するCP12というタンパク質がある。CP12は還元状態では伸びた構造と考えられているが、分子内に二組のジスルフィド結合を形成することができるため、酸化されるとこのジスルフィド結合によって分子の形が大きく変わると予想される。杉浦研究員らはこの性質に着目し、チオレドキシンの酸化還元状態の変化を検出できないかと考えた。

今回開発した蛍光タンパク質センサーCROSTは、このCP12の一部を切り取って二つの蛍光タンパク質の間に挟み込んだものである。まずCP12の半分を利用して酸化還元で構造が変化するタンパク質部品を作り、この部品の両側に長波長側に蛍光を発するYFP[用語6]と短波長側に蛍光を発するCFPをそれぞれ結合する。この融合分子では、CP12断片の酸化還元状態が変化するとYFPとCFPの分子間距離が変わり、酸化還元状態の変化を蛍光のエネルギー共鳴移動効率の変化として検出することができる(図1、図2)。CP12部分の酸化還元は、チオレドキシンの酸化還元状態の変化に呼応して速やかに起こるので、CROSTを用いることでチオレドキシンの酸化還元状態を蛍光測定によってモニターすることが可能になった。

図1. 開発したチオレドキシン酸化還元センサーの酸化還元による構造変化

図1. 開発したチオレドキシン酸化還元センサーの酸化還元による構造変化

このCROST分子を実際に緑色植物シロイヌナズナの葉の葉緑体内に発現して明暗条件を変えると、光のオンオフによってCROST分子に由来する蛍光の変化を捉えることに成功した(図3)。この変化は、光が当たると葉緑体内でチオレドキシンが還元され、暗所に戻すと酸化されることに対応している。

このセンサーの開発によって、植物の葉緑体内がどのような環境の時にチオレドキシンが還元され、酵素分子の活性化が起こるのかを経時的に調べることが可能になった。今後は、光だけでなく様々な環境の変化に対して、葉緑体の代謝系酵素の活性制御を行うチオレドキシンがどのようにスイッチのオンオフを行うのかを解析できるようになると期待される。

図2. f型チオレドキシンによるCROSTの還元と蛍光強度変化
図2. f型チオレドキシンによるCROSTの還元と蛍光強度変化

図3. シロイヌナズナ緑葉中のCROSTの明暗条件による蛍光変化
図3. シロイヌナズナ緑葉中のCROSTの明暗条件による蛍光変化

今後の展開

近年の研究により、植物の葉緑体内では様々な代謝系の酵素分子が明暗条件の変化に応答して、還元されたり酸化されたりすることで、その活性を変化させていることがわかってきた。明暗によるタンパク質の状態変化の研究は、単純に光をオンオフすることで達成される明条件と暗条件の比較によって行われているが、自然界での光環境の変動はそれほど単純ではない。

夜明けと日暮れ時には、次第に明るくなる、暗くなるということが起こるし、日中でも木陰では光強度が常に揺らいでいる。このように時々刻々と変化する光条件下で、葉緑体内のタンパク質の酸化還元状態がどのように変化するのかを知ることは、酵素の調節がどのように行われるかを調べるための極めて重要な情報になる。

今後、この新たな蛍光センサーを利用して光環境の変動とタンパク質の酸化還元状態の変動、さらに光合成活性の変動の関連を調べれば、将来、植物を利用した高効率の物質生産の研究などにもつながる知見が得られるものと期待される。

本研究は、科学研究費補助金・新学術領域研究「新光合成」(計画班代表:久堀徹教授)の支援を受けて行われた。

用語説明

[用語1] 酸化還元制御機構 : 生体内の酸化還元状態に応じて、タンパク質分子の持っているジスルフィド結合の形成・開裂などを制御することにより、そのタンパク質の酵素活性を調節する分子機構。タンパク質の翻訳後修飾のひとつ。

[用語2] チオレドキシン(Trx) : ほとんどすべての生物が普遍的に持っている、酸化還元制御に中心的な役割を果たす酸化還元タンパク質。-WCGPC-(-Trp-Cys-Gly-Pro-Cys-)というよく保存された活性部位モチーフを持ち、この2つのCys(システイン)のチオール基の酸化還元によって還元力伝達を行う。

[用語3] 蛍光タンパク質センサーCROST(Change in redox state of thioredoxin) : 本研究で新たに作成したチオレドキシンの酸化還元状態の変化を蛍光変化としてモニターできるようにしたセンサータンパク質。

[用語4] システインのチオール基 : システインというアミノ酸の側鎖。SH基とも呼ばれ、反応性が高くタンパク質の機能に重要な役割を果たすことが多い。

[用語5] ジスルフィド結合 : システインのチオール基同士が酸化条件で形成する共有結合のこと。硫黄原子同士の結合であるため、SS結合とも呼ばれる。

[用語6] YFP/CFP : GFP(緑色蛍光タンパク質)の変異体。YFPは黄色の、CFPはシアン色の蛍光を発する。

論文情報

掲載誌 :
Journal of Biological Chemistry
論文タイトル :
The thioredoxin (Trx) redox-state sensor protein can visualize Trx activities in the light-dark response in chloroplasts
著者 :
Sugiura K, Yokochi Y, Fu N, Fukaya Y, Yoshida K, Mihara S, Hisabori T
DOI :

お問い合わせ先

東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所

教授 久堀徹

E-mail : thisabor@res.titech.ac.jp
Tel : 045-924-5234 / Fax : 045-924-5268

取材申し込み先

東京工業大学 広報・社会連携本部 広報・地域連携部門

E-mail : media@jim.titech.ac.jp
Tel : 03-5734-2975 / Fax : 03-5734-3661

「東工大アクションプラン2018-2023」(リーフレット版)を発行

$
0
0

「東工大アクションプラン2018-2023」を策定し、リーフレットにして発行しました。

東工大アクションプラン2018-2023」(リーフレット版)を発行

「東工大アクションプラン2018-2023」とは

本学は、2004年国立大学法人化の際に「世界最高の理工系総合大学の実現」を長期目標に掲げ、2030年には「世界トップ10のリサーチユニバーシティ」となることを目指しています。

この目標に向け、2017年には東工大に集う我々は一体何者なのかを、学生、教職員によるワークショップを通じて議論し、「ちがう未来を、見つめていく」に始まる「東京工業大学のステートメント2030」を発表しました。

2018年4月に就任した益一哉学長は、これから世界の大学に伍していくために本学構成員ひとりひとりが如何に取り組むかを「東工大コミットメント2018」として発表しました。

そして、長期目標である「世界最高の理工系総合大学の実現」に向けてより具体的に取り組むべき課題を示したのが「東工大アクションプラン2018-2023」です。

ステートメントは「我々は何者であるか(Who we are)」を、コミットメントは「我々はどうやるか(How we do)」を、アクションプランは「我々は何をやるか(What we do)」を示しています。

これらはいずれも本学構成員の対話の中から生まれました。

これから「Team 東工大」一丸となってこのアクションプランを実行し、″挑み続け、未来を創る東工大″として社会の中での立ち位置を確固たるものとします。

そして、世界のイノベーションの中心に立ち、科学技術の力によって人々の幸せの実現に貢献していきます。

<$mt:Include module="#G-28_TokyoTech2030モジュール" blog_id=69 $>

デジタル創作同好会traPが中高生のためのプログラミング教室を開催(2019年 春)

$
0
0

東京工業大学のデジタル創作同好会traPは3月16日、中学生と高校生のためのプログラミング教室を大岡山キャンパスで開催しました。

traPが定期的に主催し、プログラミング未経験の中高生に対し、グループワーク形式でプログラミングを教える教室です。JavaScript(ジャバスクリプト)というプログラミング言語を用いて、参加者全員が簡単なインベーダーゲームを制作しました。今回は大岡山キャンパス南4号館の講義室を借りて開催しました。また、株式会社サポーターズにもご協力いただきました。

当日は中高生合わせて30名程度が参加し、参加者4名と講師となる東工大生2名程度がグループを作りました。アイスブレイクで緊張をほぐした後、開発環境を導入したところで、東工大生の説明を聞きながら中高生が実際にプログラミングをしていきます。どのグループでも賑やかに、着実に進んでいました。

ほとんどの参加者がゲームの完成にこぎ着けることができました。中には追加の要素を実装したグループもあり、教室は盛況のうちに幕を閉じました。

グループに分かれて取り組むプログラミング教室
グループに分かれて取り組むプログラミング教室

東工大生の説明を聞く参加者
東工大生の説明を聞く参加者

プログラミングを解説する講師の学生
プログラミングを解説する講師の学生

ゲーム作成中の画面
ゲーム作成中の画面

プログラミング教室副責任者の松本裕介さん(工学院 経営工学系 学士課程2年)のコメント

私は最適化問題に興味があり、現在は経営工学系の授業などでプログラミングを勉強しています。

プログラミングは専門知識が必要で難しく、手を出しにくいと感じている人も多いと思います。しかし、実際にはそのようなことはなく、誰でも気軽に始めることができます。

今回の教室では参加者の皆さんに実際にゲームを作ってもらいました。プログラミングは難しいというイメージを払拭してもらい、少しでもプログラミングを身近に感じてもらえたら幸いです。

デジタル創作同好会traPとは

ゲーム制作を中心に、プログラミング、DTM(音楽制作)、2Dイラスト、3Dモデル、ドット絵、競技プログラミング、CTF(コンピュータセキュリティ技術を競う競技)など幅広く取り組んでいます。

デジタルコンテンツのチーム制作や技術共有を目的として、2015年4月に設立したサークルです。

また、ゲーム制作者交流イベントや中高生向けのプログラミング教室を主催するなど外部との交流も積極的に行っています。

お問い合わせ先

東京工業大学 デジタル創作同好会traP

E-mail : info@trap.jp

Viewing all 4086 articles
Browse latest View live


<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>