6月20日、タイの首都バンコクにあるウェスティンホテルで開催された第2回人材育成円卓会議(主催:在タイ日本大使館、国際協力機構(JICA)、協力:ネーション・マルチメディア・グループ)に三島良直学長が出席し、パネルディスカッションへの参加及び講演を行いました。3月に第1回会議が開催され(第1回の様子)、第2回となる今回は、日本とタイ両国の政府・公的機関関係者、大学関係者、企業関係者、マスコミ関係者等幅広い分野から、約350名の参加がありました。
本会議は、2015年11月に安倍総理大臣が公表した「産業人材育成協力イニシアティブ」を踏まえ開催されました。産業人材育成協力イニシアティブとは、日本が各国との対話を通じてニーズを把握し、対象国の持続的成長に資する産業人材育成をオールジャパン体制で支援しようとするものです。在タイ日本大使館は、日本とタイの産業人材育成について、これまでの取り組み、今後求められるニーズや解決策を関係者間で共有し、会議の議論を踏まえて日本とタイの間の産業人材育成協力の具体化を進めることを目指しています。
今回の会議では、在タイ日本国大使館の佐渡島特命全権大使による開会挨拶、タイ首相府のコブサック政務官による基調講演の後、パネルディスカッションの第1部「日タイで推進する産業人材育成」、第2部「製造業における若手タイ技術者のキャリア開発」があり、最後に三島学長による「東工大の教育改革とタイでの活動について」の講演が行われました。
三島学長は、パネルディスカッション第1部にパネリストとして参加しました。ここでは、「タイには日本企業が多く進出しており、タイ人のエンジニアが必要とされているが、質・量ともに不十分であり、政策による底上げが必要である」、「単にエンジニアの数を増やすだけではなく、よりクリエイティブで優秀なエンジニアの育成が必要だ」等の意見が出され、今後のタイの発展に必要な高度技術者の育成に関する、日タイ間の人材育成の連携の在り方や課題について、活発な議論が交わされました。
最後の講演では、三島学長が、2007年にタイ国立科学技術開発庁(NSTDA)及びタイの各大学と連携し設立した大学院「TAIST-Tokyo Tech」を始めとした、本学のタイでの研究・教育交流の状況を紹介しました。タイにおいて科学技術分野を担うリーダーとして活躍できる人材の育成を推進し、日本とタイ、ひいてはASEANにおける科学技術リーダーの人材ネットワークの構築を目指していることを説明しました。また、2016年4月からの本学の教育改革の趣旨として、「学生は大学にいる間に自分の将来を描き、そのために必要なことを、自分で努力してどれだけ身につけるか。教員はそれを助け、学生がどれだけ伸びるかに責任を持つのが大学の教育である」、「東工大の学生が溌剌として、世界を舞台に働くという気持ちを持って卒業するように教育したい」と述べました。
今回の教育改革で導入した新たな教育システムについても紹介し、学部・研究科の統合・再編を行い学部から大学院まで一貫したカリキュラムを学生に提供できるようになり、リベラルアーツ研究教育院を設置し幅広い人間性を持つエンジニアの育成を目指していると話しました。また、クォーター制(4学期制)の導入により海外からの留学生の入学や東工大生の海外への留学・インターンシップをしやすくしたり、アクティブラーニングの導入やオンライン学習環境の整備により世界レベルの質の高い授業を行うなどの教育環境の整備について紹介しました。2019年より大学院においてほとんどの専攻科目を英語で行うことなど、学生のサポート体制を強化しつつ推進する本学の積極的な取り組みについて語りました。
本会議の内容は、第1回の円卓会議の内容とともに、今後、在タイ日本大使館により「日タイ産業人材育成協力イニシアティブ」として取りまとめられる予定です。