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リベラルアーツ教養講座 「ワーグナー『ニーベルングの指環』のコスモロジー」第4回開催

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本学リベラルアーツ研究教育院の山崎太郎教授による全5回連続講演会「ワーグナー『ニールンベルグの指環』のコスモロジー」の第4回「『ジークフリート』-森と世界のトポロジー」が、11月16日、大岡山キャンパス西5号館で開催されました。4回連続での来聴者も含め、今回も数多くの方を迎えての講座となりました。

「私が演出家ならば」とアイデアを語る山崎教授

「私が演出家ならば」とアイデアを語る山崎教授

今回の講座では、テーマとなる『ジークフリート』を、『ニーベルングの指環』のシリーズの中で難しいと思われがちな作品でありながらも独自の魅力を持つこと、また、英雄が悪者を倒し美女と結ばれるが決して単純な“メルヘン”ではなく、むしろ主人公の内面的成長を追う教養小説の枠組を兼ね備えていることの2つの視点から、山崎教授が作品をひも解いていきました。

まず、教授は、この作品が「森と世界」「闇と光」「眠りと目覚め」の3つの対立軸から構成されていると述べ、森(Wald)は世界(Welt)の一部ではなく、世界と対立する概念として描かれていると解説しました。また、『ニーベルングの指環』は、4つの独立した作品からなり、それぞれ別の演出家の手によって上演された舞台もあることなども紹介しました。教授による幾重にも層をなして展開される作品の説明に、来聴者はワーグナーの世界の奥へ奥へと引き込まれていき、これまでの3講演と同様、ワーグナーに詳しいファンも、初めてその魅力に触れる聴講生も充分に満足できる内容となりました。

この作品の中で、主人公の少年ジークフリートは太陽のイメージとして位置づけられ、一方、彼の育ての親であるミーメは光を嫌う闇の世界に住む一族として設定されています。

太陽と闇の対立に、いらだち、不満を募らせていくジークフリートは、暗く幽閉されたように感じられる森の世界から外に出たいと思い始めます。「自分はどこから来て、どこへ行くのか、自分は一体何者なのか?」と自ら問いかけるジークフリート。やがて、彼は眠りから目覚め、森から世界へ、闇から光へ、地底から天上の高みへと向かいます。

ミーメは、決して善意の存在でなければ、教養小説にしばしば登場する主人公を教え導く年長の賢者でもありません。 森の中で言葉を教えることなくジークフリートを育てたミーメにむけてジークフリートが放った「言葉を使うことだって、悪党のお前に無理強いして、掠め取るようにして、覚えたんだ!」という言葉は、来聴者に強烈な印象を残しました。山崎教授は、言葉を教えないことは一種の虐待であり、それによって、ジークフリートは暴力的にふるまうことでしか自己表現できなくなっていったと説明しました。

そのミーメは、ジークフリートに殺害されることになります。ジークフリートが指環を守る大蛇を殺すことではなく、育ての親であるミーメを殺してしまうこと、さらに、そこから生まれる彼の複雑な感情こそが本作品の大きな山場なのだと山崎教授は強調しました。さらに、嘘を重ね、矛盾に満ちたミーメを表現するには、アクの強い個性的なテノールの声が必要であり、演じる者には究極の演技力が求められると述べ、舞台上のミーメの圧巻な演技を称賛しました。

森を出て世界に出たジークフリートは、炎の岩山の頂の眠れる美女、ブリュンヒルデを接吻によって目覚めさせます。目覚めからハッピーエンドとなる作品の最後に向かって、彼女の錯綜する感情が表現されていき、愛の喜びを歌い上げるふたりの長い二重唱で、今回の講座は締めくくられました。

講座終了後、聴講者のひとりは、「最後の目覚めのシーンは圧巻でした。歓喜の表現は“極上”という言葉がぴったりでした」と話し、また別の聴講者は「この作品が20世紀音楽を思わせる先進性を持っているという点も興味深かったです」とコメントしました。

講座終了後に笑顔で語り合う来聴者と山崎教授

講座終了後に笑顔で語り合う来聴者と山崎教授

次回、第5回テーマは「『神々の黄昏』-末世の諸相〜救済のパラドクス」、いよいよグランドフィナーレを迎えます。全5回を締めくくる最終章の山崎教授の演出にぜひご期待ください。

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お問い合わせ先

リベラルアーツ教養講座事務局

E-mail : ila2016@ila.titech.ac.jp


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